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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
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猫様イン・ニューヨーク

 



 私が猫を洗うのが下手くそなのは以前書いたが、やはり“小汚ない三毛猫”感が半端ないQ太郎を洗いたくてたまらない衝動に駆られ実行に移す事にした。


 思えば“二足歩行ムーンウォーク事件”も敗因はシャワーを使った事にある。シャワーさえつかわなければ大丈夫なのではないか? と思ったのだ。


 しかも、無茶苦茶暴れた訳ではない。“ムーンウォーク”しただけだ。何の実害もない。あるとしたら私が笑いすぎて呼吸困難で死ぬかもしれないと云う事だけである。


 ……大丈夫だ。出来る。


 何の根拠が有るのか解らないが私の潜在意識がそう語りかけてくる。

 

 さて、そんな訳でQ太郎を風呂場に連れて行った。意外に落ち着いているので洗面器で湯をかけてやっても厭がってはいたが、さほど騒がない。


 猫用シャンプーは用意してなかったので、第三下僕が知り合いの美容師から大量に貰った怪しげなシャンプーを使う事にした。てか、あいつは洗う髪などないのに、こんなにシャンプーを貰ってどうするんだ? まあいいや、人間用のシャンプーは猫用と比べて汚れが落ち過ぎるので皮膚や毛に負担をかける。だからあまり使ってはいけないんだそうだが、はっきり云って、今のQ太郎より汚れている人間など、少なくとも日本にはいない。

 

 私はその怪しげなシャンプーでQ太郎をわしわしと洗った。

 さすがに顔は洗えなかったが、雄猫特有の分泌物と埃が渾然一体となって変な色になっている尻尾もわしわしと洗った。

 そして、すすぎは洗面器に湯を汲み、念入りに。

 なんだ、Q太郎、体洗うの大丈夫じゃないか。今まで私は何を躊躇していたのだろう?

 不機嫌そうではあるが「仕方ない」と云う感じでされるがままになっている。


 気をよくした私は更に念入りにすすぎをし、Q太郎の入浴は無事終わった。


 ……ハズだったのだが……


「こ、腰が痛えー!」

 長時間しゃがんだり、中腰になって居たため、私の腰に大きな負担がかかってしまったのだ。


 その腰の痛みにも耐え、何枚もタオルを使い、Q太郎を拭いて、ドライヤーはイヤ~(笑)なQ太郎の為に暖房をガンガンかけて暫くすると、Q太郎は生れ変わったように白くなった。

 Q太郎のこんな姿を見るのは何ヵ月ぶりだろう?

 感動すら覚える。


 その日はシャンプーの香りのする、まるで極上のミンクの毛皮のようなQ太郎の毛をモフモフしながら眠る事が出来た。


 が、次の日。


 仕事から帰って来た私は頭に金ダライが落ちてきたような衝撃を受けた。

 Q太郎が、洗う以前より更に汚くなっていたのだ。

 たった一日の外出で、なんでこんなに汚せるのか? ワンパクな小学生(男子)でさえここまでは汚さないぞ。と云う位汚れていた。


「あのシャンプーの香りのするミンクのモフモフはマボロシだったのだな」


 私は痛い腰をさすりながらそう思った。



 

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