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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
21/65

猫様の夜遊び

 ◇



 やっと岩手も気温が緩み、春の陽気になってきた。園芸が趣味の一つである私は(そこ、驚くんじゃない!)今年は何を植えようかわくわくしている。

 全ての生き物がわくわくそわそわする季節。それが春である。


 Q太郎も同じらしく外遊びに頻繁に行くようになった。家に居るより外へ出掛けている時間の方が長いんじゃないか? と思える程だ。

 下僕としては、外は危ないのでなるべく家にいて欲しいが、例えば、“百年生きられるけど家から一歩も出られない人生”と“十年しか生きられないが何処へでも自由に行ける人生”の二通りしかないとしたら自分はどちらを選ぶだろうか? と、考えると自分なら断然後者を選ぶ。なので私の歴代の猫様達は外へ自由に行けるようにしている。


 心配なら去勢手術をすれば、行動範囲が狭まるし、喧嘩もしないし、上手く行けば家にずっと居るのもいとわない猫になる。と云われているが、昔、ターキッシュバンのルーが去勢手術をして三ヶ月も経たぬうちに外で車に轢かれて死んだので、去勢手術をすれば全て丸く収まる的な考えはその時捨てた。

 ついでに、ルーは私の下僕人生の中で唯一血統書付きの猫であった。「きっと猫様を金で買ったのでバチが当たったのだ」と、それ以来血統書付きの純血種は私とは縁が無いものと思うようにしている。


 湿っぽい話になってしまったが、そんな訳でQ太郎が外遊びばかりして手持ちぶたさな私である。


 我が家では、仕事に行く時以外は猫様が外に出ている間は何時でも帰って来れるように勝手口を開けとくのが常だ。

 なので、夜、Q太郎がなかなか帰って来ないと勝手口から勝手にナナ嬢やシロスケなどの他所の猫が入り込んでしまう。これが“勝手口”が“勝手口”と呼ばれている由縁である。嘘である。

 防犯上の危惧もあるが、我が家には空き巣が盗っていきたくなるような物が全くない。もし私が空き巣で、この家に忍び込んだとしたら、あまりにも不憫に思い一万円札の一枚でも置いて行くかもしれない。なのでそちらの心配は皆無だ。てか、是非置いて行って欲しい。一万円。


 Q太郎が夜帰って来ないと、私は一人で寝なければならない。猫様のゴロゴロを聞きながら眠りにつくのは下僕にとって至福のひとときであるが、それが無くなるのである。

 実際猫は夜行性であるし、昼間より夜の方が車や人の通行が無いし安全と云えば安全である。


 しかし、朝起きた時、Q太郎はともかく他所の猫が家の中で寛いでいるのを見ると何ともやるせない思いがする。

 今はナナ嬢とシロスケしか来ないが、そのウチ他の猫までやって来て猫のたまり場になったらどうしよう?

 そして私は、どうしよう? と云いつつ顔がにやけるのは何故だろう。




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