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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
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絶対中に人が入ってる件



 それはQ太郎が生まれて初めて迎える夏の事だった。


 しきりに体を掻きむしるので、ノミでもいるのかもしれない。と、入浴させる決意をした。

 “決意”とはまた大袈裟な。と思うが、私にとってはまさに“決意”なのだ。何故ならばこの鮎川は、


 今までの人生の中でなん十匹の猫と暮らして来たというのに猫を洗うのがとても下手だ。


 あの、“水が好きな猫”“泳ぐ猫”として有名なターキッシュバンを飼った時などは、泳ぐ様が見たくて水を張ったバスタブに「ほーら、ルーちゃん、お水だよ」と投げ込み、一瞬にして水ギライにさせてしまった武勇伝を持っている。てか、いくら水好きでも投げ込まれた猫の気持ちにもなってみろ。鮎川。


 更に、猫では無いが、ゴールデンレトリバーを飼った時、やはり流石に水難救助犬として活躍する犬種だけあって、湖や海でガンガン泳ぐ様を見、「これは、洗うの楽勝」と思ったのだが、一度洗っただけで

風呂に連れていこうとすると尻尾を股に挟みブルブル震え、「ひーんひーん」と泣く(※“鳴く”の変換ミスではない)ようになってしまった。


 幼少の頃より、猫や犬の飼い方の本を何十冊も読み、洗い方も理解していたつもりだったが、自分がこれ程までに下手とは知らなかった。なので、命に関わる汚れでも無ければ猫は洗わなくても良い。と、自分ルールを決めてしまったのである。


 しかし、Q太郎のノミは心配だ。命に関わらずとも掻きすぎて炎症を起こし、そこからバイ菌でも入ったら……と思うと気が気では無い。


「Q太、お風呂入ろう。痒いの無くなるよ」

「んー?」


 当時、Q太郎にとって風呂場は未知の場所であった。その未知の場所に入って興味津々に洗面器やシャンプーボトルの匂いをかぐQ太郎。


 体を濡らす為に洗面器でお湯をかけてやると、思った通り鳴き出した。

「うあーん。うあーん」

 しかし、大声で鳴いている割りには暴れる訳でもなく、体をまんべんなくシャンプーする事が出来た。


 だが、悲劇(?)は“すすぎ”の時に起こった。


 すすぎも、洗面器にお湯を汲んでやれば良かったのだが、せっかちな私はQ太郎をこの苦行から早く解放してやりたくてシャワーを使う事にした。

 シャワーの栓をひねり、そのお湯をQ太郎の腰の辺りにそっとかけたつもりだったが、びっくりしたQ太郎はなんと


 背筋をピンと伸ばし、二足歩行で後ずさったのである。


 その様はまるで猫の着ぐるみを着た小さなオッサンがムーンウォークを披露しているよう。


 私はびっくりするやら可笑しいやらで笑い転げ、呼吸困難であわや死ぬ所であった。


 今でも思う。あの時のQ太郎を動画に撮って動画投稿サイトに投稿すれば、一日二万アクセスはイケたのではないかと。




 


 

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