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猫様の下僕日記  作者: 鮎川 了
Q太郎様の下僕日記
19/65

ホコリ高き猫様



 猫の下僕の愉しみと云えば、“モフモフ”である。

 仔猫の綿のような柔らかい毛並みをモフモフするのも魅力だが、いかんせん体が小さいので“モフモフ”と云うよりは“モフ”だ。いや、“モ”にもならないかもしれない。

 そこへいくと、成猫のなんとモフモフし甲斐のあることか、特にウチの猫様、Q太郎は縦にも横にもデカイ猫なので、さしずめ“モフモフモフモフモフッ”と、云ったところか。

 仰向けになって寛いでいる猫様の、柔らかい肉と毛で構成された腹に、やおら顔を埋めるのもこれと無い至高のひとときである。

 しかし、最近、その下僕の愉しみである“モフモフ”をためらってしまう事がある。


 オス猫というのは、メス猫より身なりを気にしないものなのか、あまり毛繕いをしない。

 その為、体が汚れまくっているのだ。

 以前書いた“ストーブ焼けの黄ばみ”に加え、何処かからくっ付けて来た煤の汚れで部分的に灰色になり、遠目から見ると“三毛猫”になっているQ太郎だ。

 三毛猫のオスは滅多に居ないのでちょっと鼻が高い……などと云ってられない。

 こんな小汚ない三毛猫は厭だ。


 しかし、厭だと云っても私のご主人様である。

「ちょっと模様が薄いけど、珍しい三毛猫のオスですよ、へっへっへ」などと三味線屋に売る。なんてことは出来ない。

 三毛猫のオスと三味線の因果関係が解らない方は後でお祖父様やお祖母様に訊くかネットで調べる事をお奨めする。

 私はとても云えない。


 体の色が変わるだけならまだしも、全体的にホコリっぽい。

 私も叩けばホコリが出る人間だが、Q太郎も叩けばホコリが出る。しかも前者は比喩だが後者は物理的にだ。

 叩かなくても撫でただけで私の手はホコリまみれになる。

 モフモフする度に手が、顔が、ホコリまみれになってしまうのだ。もう苦行というより他は無い。

 なら、「モフモフしなきゃいいじゃないか」と思うだろうが、モフモフ出来ない下僕生活など、例えて云うなら“メイドさんが全員マッチョメンのメイド喫茶”みたいなものだ。また訳の解らない例えを出してしまったが、そういう訳で私はQ太郎をキレイにするべく近所のホームセンターで“水の要らない猫用シャンプー”なるものを購入した。

 容器からムースタイプの泡が出てきて、それを猫様の御毛になすりつけて馴染ませた後、タオルで拭き取ればよい。と説明書きに書いてあった。

 Q太郎は幸いブラッシングやタオルで体を拭かれるのを嫌がらない。と、いうよりむしろ好きだ。

 これなら楽勝だ。と、早速使ってみた。

 足や尻尾は嫌がるので、胴体と頭のてっぺんにしか使用出来なかったが、拭き取りもその後のブラッシングも出来た。しかし、濡れたままだとイマイチきれいになったのかどうかが解らない。

 心なしか余計汚くなったような気さえする。

「きっと、乾くと真っ白になるのだ、きっとそうだ」私は自分に呪文の様にそう言い聞かせた。

 ……が。


 ブラッシングされて気分が良くなったのかQ太郎は、外に出て玄関先でゴロゴロし始めたではないか!

「Q太郎! やめてくれ、折角キレイになった……かもしれないのに!」

「んー?」

 私が焦っていると、余計ゴロゴロして玄関先のホコリや砂を体になすりつける。

 そんな訳で“水の要らない猫用シャンプー”の効果の程は解らないままだ。





 

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