最低下僕の失態
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これは書こうか書くまいかと迷ったのだが、面白くて楽しいエピソードだけ書いていても如何なものか? と、思うところもあったし、自分自身の戒めの為にあえて書くことにしよう。
実は、私、鮎川は酷い癇癪持ちである。最近は歳のせいかだいぶ穏やかになったと思っているのだが。ついでに云うと鬱病気質でもある。
その癇癪のせいで家人とトラブルとなり、ここ数日むしゃくしゃしていた。因みに、トラブルの相手の第三下僕・ぬらりひょんは状況の判断が出来ないとか人の感情を感じ取れないというアスペルガー特有の気質を持っているのできっとアスペルガーなのだろう。たんに絶望的にKYなだけのハゲかもしれないが、私は精神科医ではないのでアスペルガーの人と絶望的にハゲな人の線引きが出来ない。
もとい、絶望的にKYなだけのハゲ。だ。
そんなこんなでメンヘラ同士で喧嘩して、ああ、こんなメンヘラと一緒にいられない。私だってメンヘラなのに。てか、世の中にメンヘラじゃない人なんて居るんだろうか? 人は皆、多かれ少なかれ何かのメンタル系疾患を患っているものではないのか? なんだか最近メンタル系の病気を検索してみるとそうとしか思えない。
メンヘラメンヘラと連呼しているが、これはネットで発生した差別用語のようなものなので、よいこは使わないように。
さて、前置きが長くなってしまったが、そんなこんなで私はイライラしていたのだ。
イライラしながら買い物などへ行き、イライラしながら帰宅して、イライラしながら買ってきたものなどを整理していると、Q太郎がやって来た。
「下僕よ、どこへ行ってたのだ? 何か獲物を捕ってきたのか?」
などと、私の足元でウロチョロするQ太郎。
考えてみればいつもの事なのだ。
Q太郎は私が何処かから帰って来るといつもこうだ。
なのに。
その時私は人を殺しそうな勢いでイライラしていた。もしQ太郎が猫ではなく人だったら殺してしまったかもしれない。
事もあろうに私はQ太郎を蹴飛ばしてしまったのである。
猫の下僕にあるまじき行為である。
もう、猫の下僕失格である。
生まれて一年と十一ヶ月、父親には引っ掻かれたりかじられた事はあるが、人間にはたぶん暴力を振るわれた事のないQ太郎はかなりショックを受けたようだった。
「うわあー! 下僕が蹴飛ばした! 下僕のバカー!」
そのまま外へ行き、暫くこちらの様子を伺っていたが、私が落ち着きを取り戻してから再び見ると、居なくなっていた。
現在、私は酷い自己嫌悪におちいっている。
このままQ太郎が帰ってこなかったらどうしよう?
あてもなくさまよって車にでも轢かれてしまったらどうしよう?
だいたい、ぬらりひよんと喧嘩していたのだから、ぬらりひよんを蹴飛ばせばいいのである。
自分より小さいものに暴力をふるって八つ当たりするなど、私の一番嫌いな人種だ。その一番嫌いな、一番最低の人間に私は成り下がってしまったのだ。
もし、Q太郎が帰ってきたら誠心誠意謝って、秘蔵の冷凍鶏レバーを献上する所存だ。
そしてこの最低の私を戒める為に、感想欄に罵詈雑言を書いてくれる愛猫家の皆様を心待ちにしている次第である。




