人食板の恐怖
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余の下僕はたまに板の様な物を取り出して、それを擦ったり叩いたりしている。
しかもその板はたまに変な声で鳴く。光ったりもする。生き物であるらしい。
余が気持ちよく昼寝している時にイキナリ鳴き出したりするので迷惑千万である。
しかも、鳴き出すと下僕が板を取り、長々と喋りだし、笑ったり、何故か謝り出したりする。実に滑稽である。
この板は、ウチに居る三人の下僕一人一人が持っていた。それぞれ形や大きさが微妙に違ったり、色が違ったりしたが、同じ物だ。
余は、この板を好まぬ。下僕達がこの板を持っている時は余の世話をしないからだ。
きっとこの板は余から下僕を全部取り上げようとしているのだ。
そんな事になったら余は、マグロも食せなくなるし、毛の手入れも出来ず、“猫じゃらし”で狩りの訓練も出来なくなる。由々しき事態である。
そんなある日、余の不安は現実のものとなった。
基本的に下僕達は朝狩りへ出かけ、夕方になると戻ってくる。
その日もそんな風に狩りへ出かけて行った。
しかし、夕方になっても第一下僕と第三下僕は戻ってきたが、余のお気に入りの第二下僕が戻って来ない。
心無しか第一と第三の下僕も何やら寂しそうにしていて覇気が無い。
もしかして、余が出掛けてるうちにコッソリ帰って来て、二階の自室で寝てるのかもしれない。
そう思って行ってみると、第二下僕の部屋はがらーんとして何も無くなっていた。
余は第二下僕が帰ってきたらすぐ解るように、寝るときはその何もない部屋で寝る事にした。
でも、何日待っても第二下僕は帰って来ない。
ある日、第一下僕が笑いながら、例の板を余に向けて来た。
何だろう? と思っていたら、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「Q~。キュッキュ~、Q太~」
第二下僕の声だ!
しかし何で板から聞こえて来るんだろう。
驚きで何も出来ずに固まってしまった余を見て第一下僕と第三下僕が笑う。君主を笑い者にするとは何とも無礼な下僕共であるが、今はそんな事を云っている場合ではない。
余は気付いてしまったのだ。
第二下僕は板に食われてしまったのだ。だから、板の中から声がしたのだ。
恐ろしい。やはりあの板は恐ろしいものだったのだ。
次は誰が食われるのだろう?
※実際に有った事をQ太郎目線で書いたらホラータッチになってしまいました。
第二下僕は遠くの土地で元気に暮らしております。




