表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/65

7話 「勢いだけで抱きしめてはいけません」

レストランの中での視線が痛いのはなぜだろう?まるで気が許せないんだけど。


奇異な視線が向けられてるというか。撫子にもそれは向けられているけど撫子はまるで気にしていないようだ。


そこはさすが撫子と言いておこう。


まぁ僕は男だからな。珍しくて仕方ないのかもしれない。


「和人さんは何を食べるんですかー?」


「僕はステーキでも食べようかな」


「私も同じものをお願いしますー」


「すいませーんステーキ2つ」


僕は通りかかった茶髪掛かった犬耳の女性を呼び止める。その人は純粋な笑顔を僕に向けてくれる。


僕のいた世界では営業スマイルがメジャーだがさすがは女しかいない世界だ。凄く純粋に育ってる汚れてない。


綺麗な笑顔だ。


「かしこまりましたっ」


僕と撫子は向かい合っている。撫子はじっと僕を見ている。そして僕はその撫子から目を逸らしている。


いやなんすかこれ。


空気は無言。撫子は僕を見ている。


「なんなの!?」


僕は空気に耐えられなくなり言葉を発してしまった。


「やっぱり男性の人だなーと思いまして」


撫子は少し辛そうな表情を見せた。だけどすぐに笑った。いつも撫子になった。


いや僕のような出会ったばかりの人間がいつもというのも変な話だ。


「お待たせしました」


さっきの茶髪の犬耳少女がステーキを乗せたお皿を二つ持ってくる。そして僕と撫子の手前においてくれる。


少し気まずい空気だったからちょっと助けられる。


その後僕と撫子はつまらない談話をしながらステーキを食べてレストランを出た。


最初に気にしていた奇異な視線は全く気にならなかった。


ただ撫子が見せた不穏な表情が気になって仕方がなかった。レストランを出ると辺りは暗くなっていた。


「あんたら今から風呂入るの?」


おっさんか!と言いたくなるそのキョウの姿。だが旅館の着物は相当似合っている。外人が着物を着ると美しく見えるというのは本当らしい。


「だがもう時間がないぜ?」


僕と撫子は相当話していたようだ。改めて辺りを見ると凄く暗くなってたし。ていうかローズのおっぱい揺れ取る。


最高やん。眼福やん。


「一緒に入りましょうかー」


「えっ?」


その場にいた全員がぽかーんという状態になった。ちなみに僕も。


「行きましょう和人さん」


「えっ?あっ…。うん」


「本気なの撫子?」


何故こいつは僕をごみのような目線で見てゴキブリを指すような指で僕を指すんだ。


「和人さんはいい人ですよー」


「いやそういう意味じゃあ」


「それじゃあ行きましょうか和人さん」


「……えっ?えぇ…」


僕はそのまま撫子に連れられてお風呂場へ入った。


時刻はわからないがとりあえず暗い。風呂場には僕と撫子しかいなかった。


この世界の時間はようわからんぜよ。とりあえず日本の夜明けは近いぜよ。


そして風呂場へ。もちろん前は隠している。


「撫子はまだか」


僕は体をゆっくり風呂場につけた。温度は少し熱かったが適温と呼べば適温だった。


体の芯からリラックスして入る。そういえばこの世界に来て初めてリラックスしたかもしれない。


流れるように出来事が起きてたからな。セーブしたっけな。まぁ人生にそんなものはないか。


本当に改めて思うと意味不明だな。この世界には女しかいないのか。


だけど男性は元々存在していてだけど17年前に神すら予想できない歴史の歪みにより消えた。


「全てを狂わせた元凶…本当に魔族の領地にそれは存在しているのか?もしかするともっと身近に存在しているような…」


「お待たせしました」


僕は声の方向を見る。撫子がいた。


前すらも隠していない露わな姿で。


「うぉおおおおお!!!」


全力で顔を逆方向に向ける。


「どうしました?」


「前を隠せぇえええ!!!」


撫子結構胸あるじゃないか。いやそんなことよりもだ!


「隣失礼します」


撫子が僕の隣に座る。撫子の肩が僕の肩に触れる。


撫子の体温が直接伝わってくる。その暖かさはこの風呂場の熱よりも暖かいそして優しい暖かさだ。


「お兄ちゃん…」


「えっ?」


撫子がふと言葉を漏らした。


「あっ…」


撫子はすぐに口を自分の手で覆う。


だがしっかりと僕の耳には聞こえた。


今にも泣きそうな声で兄を呼ぶようなそんな悲しい声が。それは撫子の心の叫びなのかもしれない。


そうだみんな17年前から存在している可能性だってるんだ。


恐らく撫子は17年前よりも前に生まれていた。


「兄がいたんです」


撫子は覆っていた手を自らの太ももの上に置いた。


「だけど17年前死んでしまいました」


そしていつもの優しい笑顔で。僕を見た。


どうして笑える?泣けばいいのに?


「私は泣きません」


まるで僕の心を読んだように話をつづけた。


「泣けば誰かが不安になります。だから不安を皆さんにはかけられません」


この子は…。


みんなのことを考えてずっと涙を心の底に溜めていたんだ。


「いいよもう」


そうだこういう時僕の大好きなギャルゲーの英雄たちは何をする?そんなことは僕がわかりきっている。


「僕が傍にいるから泣けばいいよ」


そう不意に優しい言葉をかけて撫子を抱きしめる。あれ?僕なにしてるんだ?


やばい勢いで抱きしめてしまった。


言葉だけのつもりが。


こんな急展開なギャルゲーはさすがに存在していないぞ!?


「それじゃあ少しだけ…」


「あぁ…」


「お兄ちゃぁん…」


撫子は僕の胸の中で涙を溢れさせた。その涙が収まるまで僕はずっと抱きしめた。


いやまじ何この急展開。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ