5話 「暇だからしりとりでもしよう」
暇すぎた
見渡す限りの緑の平原。
僕らはその平原をただのんびり歩いていた。何て言うか本当に何もない平原過ぎて逆に突っ込みどころがある。
それにしてもただ東に向かって歩くだけとか何て暇な冒険。
「しりとりしよう」
「脈絡ないわね…」
キョウに呆れた声で言われる。だが僕はしりとりのルールの説明に移ろうとしていた。
「今から話す言葉は全てしりとりにしなくてはいけないというルールでしりとりをしよう」
「どんだけ暇なのよっ!」
「いや恐らく歴代勇者たちも旅の道中はこんな話をしていたに違いない。無言で歩ける勇者なんて存在しない」
「歴代勇者の尊厳を無くすなっ!」
「しっかし私も暇だったところだ。暇つぶしには丁度いいじゃないか」
「私も賛成ですー。みなさんと遊びたいですー」
「うちも眠くなってきたし」
中々好評じゃないか。
「ついでに罰ゲームを付けよう」
「へぇーどんな?」
割と乗ってくるキョウに多少引きながら僕は罰ゲームの説明を始める。
「負けた人は勝った人をオブること」
「案外具体的!?」
「いやぁーちょっと歩くの疲れちゃって」
「まぁいいわ。ルミリアも参加するわよね」
「えっ?あっ!はい」
完全に空気になってたルミリア。話を突然振られて意表を突かれたという表情だ。そんなルミリアを見てて癒される僕。
「それじゃあ僕から始めるよ」
「早くしなさいよ」
「しりとり開始!」
「しっかし暇だよな」
「なんでうちらは魔族の領地に向かってるのかしらね」
「ねぇーどうしてでしょうかーねぇー」
撫子さんをぎこちなく感じてしまうのは話し方が強く影響しているに違いない。だから僕は突っ込まないぞ。
「煙突」
「突っ込みたい!!」
「いかんぞこのしりとり…」
ルミリアはもう普通のしりとり気分だ。ちなみにクレアは何も言わないで僕らを見ている。
クレアも参加したいなら言えばいいのに。
輪に溶け込めないでいるようにも見える。それとも参加したくないのか?
まぁ多分前者だろうな。クレアの尻尾ぴくぴくしてるし。ていうか尻尾!?
まじで獣っこだなおい!凄く可愛いじゃないか。だが僕のSな心意気がその参加を阻む。このままクレアを見ている方が面白そうだな。
「リスだ」
ローズが木を指さす。そこには二匹のリスが肩を並べていた。
「ダックスフンドの方が可愛いわ」
絶対思ってないだろ。
「わぁーリスさん可愛いですー」
「巣」
「巣!?」
「すげぇーなこのしりとり」
何でもありか。
だが口には出さない。負けたくないし。
クレアが並んでいるリスを見て尻尾を揺らしている。可愛いとこありまくりだなぁ。ああいう真面目っぽい子ほど意外な仕草をすると凄く可愛いんだよな。
これは世の言うギャップ萌え。ゲームなどで嫌いなキャラのシナリオを見るとその嫌いなキャラが好きになるという理由だ。
何故この子はこの子に対して冷たいんだ。最低だな。だがそれには過去の因縁が関係していた。そのシナリオによりプレイヤーは泣きながら頷いて。そういうわけだったのか、と納得しそのキャラを好きになる。
これがギャップ萌えの例だ。
そしてこれが倒置法だ。
「りす可愛かったな」
「なんでよ!ダックスフンドでしょ!?」
お前は何故そこまでダックスフンドにこだわるんだ。僕にはその理由がわからない。
「よいことですよー動物を好きになることはー」
「埴輪」
「わからない!私にはルミリアが何を考えているかわからないっ!」
「突っ込みばっかだなお前」
ルミリアが凄く冷静にしりとりをしている。うん。しりとりになってるからいいけどさ。埴輪ってどこから出てくるんだろう?
「ええっとそろそろ町だぞ」
「ぞうの方が確かに可愛いけど…」
「ドーナツがたくさんある町ですよー」
奇跡的に話がつながっている!?終わりと言いたいが仮に終わりと言ってしまえば僕の負けになるじゃないか。
どうすれば終われるんだこのしりとり。落ちをまるで考えていなかった僕のミスだ。面白さだけを追求した結果がこれかよっ!
「黄泉」
「みんなー早く町に行きましょう」
「うぐ…」
僕は下唇をもどかしくて噛んでしまう。だが奇跡的に繋がってしまう。これが見えない友情ってやつか!?
だけど今の場面では発動しなくてよかった。
「ぐっぱぁーと一杯やりたいねぇー」
「えっとでもキリンも中々よね」
「ねぇーねぇーですよこの町は本当にドーナツが生産されているんですかー?」
「蟹」
「もういいわっ!!」
キョウが叫んでくれる。どうやら耐えきれなかったようだ。うん僕もだ。
「町についたからしりとりは終わりね」
「およ?途中から忘れていた」
「わたしもですーリスさん辺りからー」
やはりか。
「宿は指定してある」
クレアが単調的にさりげなく素気なく言う。やはり参加できなくて悲しいのか?尻尾が少し下がっているぞ。素直になればいいのに。
まぁこれだから反応がわかりやすい女の子は弄りがいがあるんだよな。
僕の中のSな悪魔はそっと悪魔のように笑った。
さてとこの宿ではどんなハーレム展開が待ってるのかな~
僕は期待しながら最後尾になりながらも女子メンバーの後についていきながら宿に入った。