3話 「この世界の歴史や力を学んでみました」
僕はこの世界にある程度の探りを入れてみることにする。
不便なことにこの世界には説明書はない。そのために知識は本から取り入れなければならない。
「なるほどね」
そして僕はこの世界の歴史という物をその書物から学んだ。
この世界には不思議な力がある。
それは魔法なんかよりももっと現実味を帯びている何か。この世界の住人は誰しも一つの能力を持っているらしい。
その不思議な力をこの世界の住人は『聖なる力』と呼んだ。聖なる力は誰もが必ず生まれた時に持っているらしい。
その効力や形質そして技の範囲などは全て決められている。一国では神が定めた能力と言っているらしい。
だけどあのおっさんが決めているとは思えなかった。やはりそれこそ運命的な何かと思っておこう。
兎にも角にもその聖なる力は僕にも芽生えているのかが少し気になった。
だけど無くてもあまり困らないから僕はそのことを置いておくことにする。
そしてこの世界の交流や種族についてである。
この世界には7種の人種が存在しているらしい。
特徴的な体の作りをしていない普通人。
耳が少し長い作りをしている森民人。
犬歯が少し尖っている獣のような能力を備えた獣人。
普通人よりも少し体つきが男勝りな筋肉が多めな強靭人。
逆に体つきが大人になっても幼いと言われている幼人。
そして何物にも属さない黒を掲げる人種魔族。
そして魔族以外のどれか二つを合成させた合人。
これがこの世界に存在する人種と言う物らしい。僕の存在していた世界よりはわかりやすそうだ。
白人がロシア人だった時は本当に裏切られた気分になるからね。日本人だと思って話しかけたのに!みたいな?
そして歴史だ。
過去に三度の戦いを繰り広げている魔族と森民人。どれも決着はつかない冷戦のような物らしい。
均衡は続き今に至るってわけか。だが異変は17年前起きた。
これが歴史の歪みと言われている原因。
男性消失事態。
突如として男性が苦しみだし息絶えた。しかも世界同時に。そして男性は苦しみその日のうちに死んだ。
この日男性は消失したのだ。
この世界の歴史から。
悪いことばかりではなかった。5年に一度は繰り広げられた戦争は男性が消えてからは行われていない。
命の重さを教えるための神の悪戯とまで一部では言われているが。それは違う。
誰かの意思により好意的に行われたものだ。それは神すらも想定しなかった歴史を歪ませるほどの何か。
その何かを僕は掴むために転生したのか。
わかり得ることはこれは魔族の原因などではない。だけど魔族ならば何かを知っているかもしれない。
なぜなら魔族だけがこの世界の住人と交流をしていないからだ。
情報の共有などすべて。言わば鎖国のようなものか?
この世界の女王と言ったがもしかするとこの世界というのは国のことなのではないか?
この世界は7つあってそのうち一つの国の女王がさっきのエルフなのではないか?と思い本を読むことにした。
だが結果は想定内と言えば想定内という結果だった。
男性が消える前。戦争により国々の人口が少なくなってきたと感じていた各国の王は地位を捨てて国を合併することにしたそうだ。
そこで地位を仕切るものを森民人の民にしたそうだ。その頃もっとも冷静で統制をおこなっていた森民人。
文句を言うものは少数いたがそれは無視しトップは森民人になったそうだ。
ちなみに元国を治めていたトップたちは町を治める人になったらしい。中々落ちぶれたものだ。
まぁ国が町単位なんだけど。
地図を見る限りでは。
話しを戻すがその合併の際に魔族だけは反対したそうだ。
まぁ確かに元々6ヵ国と戦争したんだからいきなり合併なんて。
「はぁ?煽りですか?」
だろうな。だからこそ魔族だけは合併をしていないのだろう。そして未だに敵対し情報の供給をしない。
だからこそ何かあると僕は踏んでいた。
「この世界の歴史を歪ませた神すらも予想外な『何か』か」
全くもって予想がつかない。いやだからこそ予想外な歴史を歪ませる原因なのか。
「きゃぁ!」
「おっと!」
本の棚の渡り廊下で下半身に小さな衝撃を感じた。誰かにぶつかった?考え事をしていて全く前をみていなかった。
「すいません!」
「もう気を付けてよね」
声は聞こえるが視界には誰もいない。あれ?妖精さん?
「下よ!!しぃいいいたっ!」
腹部にまたも小さな衝撃が。僕は視界を下に向ける。そこには水色の青空のような髪をしていた少女がいた。
身長は完全に小学生だ。大人っぽく見せるためなのか髪はサイドテールになっている。
が!かえって大人に見せようとしていることが仇になって子供に見える。ていうか子供だろ。
「言いたいことがあるならはっきり言ってよね」
「幼人?」
「そうよっ!悪い!?私だって大きくなりたいわよ!」
「ま…まぁ種族の問題は仕方ないよね」
あれか。黒人の中に生まれてきた白人もこんな気持ちなんだろうな。味わったことないけど。
「うちは本当はいやせめてだけど…」
ブルーになって俯いて独り言を言っているようだ。そっとしておいておこう。
僕は静かにその場から去って行った。
「まちなさいよっ!」
これはイベントかよ。僕は悪いけど幼女に興味はないんだよね。
「うちの目線で謝りなさいよ」
「土下座しろと!?」
「あんたさりげなく失礼よね」
「悪かったよ」
僕はとりあえず中腰になって頭を深く下げる。
「わかればいいわ。じゃあね」
やっと解放された。何てめんどくさい女の子なんだ。
「ちょっと!」
またかよっ!
「なんだよ」
「あの上にある本取ってくれない?」
「しゃーなしな」
さっき謝らせた人に取らせるとかどういう神経してるんだ?そんなことを口に出すと神経を逆撫ですることになるのでしない。
大人しく指示に従い指定された本棚の前に立って本を取って渡してあげる。
「ありがとっ!あんたいいやつね」
これはやはりイベントだったか。
「じゃあまたね」
「自己紹介せんかいっ!」
「えっ?なんで?」
そういうノリだったろうがぁああああ!!!
「もういいよ!じゃあな」
「待ちなさいよ!私はリタよ!」
「僕は和人だ。じゃあな」
そして僕は幼女の前から姿を消した。今度はさすがに呼び止められなかった。