表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/65

1話 「神の事情を知りました」

僕って死んだよね?


無駄に速いトラックに轢かれて死んだ気がするけど。僕は何故か意識を保つことができていた。


しかも至極平常に。


「ていうかどこっ!?」


僕は飛び跳ねるように体を起こした。そこは太陽の日差しすら通さない深い森だった。


……あれ?富士の樹海ですか?


辺り一面を見ても木々が奥の方まで生い茂りまるで光が見えなかった。そもそもどうして僕は何の痛みも感じずこの場に立っているのだろう?


トラックだぞ?しかもある程度の速さを付けた。そんなトラックにノーブレーキで轢かれたんだぞ?


死ぬだろ普通。起きても痛み感じるだろ。


「マジで僕どうなってんだろ?」


体の至る処を触っても穴ひとつ見つからないし傷もない。無傷なんてありえないよな。


そもそもここはどこだよ。


それだよ。僕はそれに突っ込むことを忘れていたよ。


ここってどこだよ!


「誰もいないなら全裸になって歩き回りますよ」


…返事は来ない。悪戯ではないようだ。まぁ悪戯ならあのトラックを…。


それは置いておこう。僕は素肌を無駄に晒し生まれたままの体で富士の樹海のような森を歩くことにした。


小一時間歩いていると水の音が聞こえた。僕は無性に喉が渇いていたためにその音の方へ歩いていた。


音は次第に大きくなり。そして巨大な湖が姿を現した。その湖はとんでもないくらい綺麗に透き通っていた。僕が鏡越しに映りこんでいる。


そして湖に一人の女の子が立っていた。


生まれたままの姿で。


「……」


湖がいい仕事をしてやがる。


「……」


くっきりと見た。その胸のラインとうなじからのライン。いや全てを確認した。


「……」


僕は無言でその女の子を見ていた。


金髪だった。それも見たことないくらい綺麗な金髪だ。水が太陽の光で輝いてその金髪を際立たせている。


何よりも目を奪うのはその綺麗な背中に掛かっている髪よりも強調的な胸だ。Dと僕は見た。


「誰っ!」


気づかれた。女の子瞳はとても気強そうな黄金色の眼をしていた。僕は大人しく出ていくことにした。こういう場合の抵抗は無駄とギャルゲーから教わったからな。


でも僕はなんとなくわかっていた。ここは恐らく異世界なんだろうと。だって僕って死んだもん。多分だけど。


何らかの理由で魂だけがこちらにやってきたのだろう。その理由と手順は説明されていないけど。


僕は姿を現していた。


叫ばれるんだろうな。僕はそんなことを深く覚悟していた。


殴られて気絶とかするんだろうな。そんなことも思っていた。だけど女の子の質問はとんでもないものだった。


「あら?あなたも水浴び?」


……。


えっ?


女の子は前を隠すことなく僕をマジマジと見た。ちょっと隠してよ!僕だって思春期真っ只中なんだから。


「奇遇ね」


だから隠してよ。どうして僕が目を隠さないといけないんだよ。この子バカなの!?


痴女なの!?うわぁ!なんか言ってはいけないことを言った気がする。


「それにしてもあなたのこれ何?」


女の子は男に誰でも生えている聖なる剣を指さしてマジマジと見た。この子は羞恥心がないのか!?


押し倒していいかな!?


「見ない体つきね。そもそも全体的に体つきが…」


女の子は僕の体を見て何かを研究し始めた。考察と言った方が適語かもしれない。


でも女の子に凝視されるのも悪くない。


これは僕のMとして素質というやつなのだろうか。やべぇなんだか興奮してきた。


「……」


さっきまで考察をしていた女の子が黙った。


「ねぇあなたって男?」


「えっ?うん」


みるみるうちに女の子の瞳が見開かれて顔が真っ赤になる。可愛くて林檎みたいだ。


「きゃぁああああああああああ!!!」


僕はこれでもか!というくらいに叫ばれた。そして殴られた。


トラックに轢かれる痛みに比べればマシだけど意識は失われた。



  ◆◆◇◆◇◆◆



「ここは?」


「どーもあなたを転生させたこの世界の神でーす」


六畳一間の部屋にちゃぶ台が置いてあって僕は正座して座っていた。目の前には完全なるやばい人の風格を持ったおっさんが一人。


ていうかなんて?神?


「うん神」


心が読まれた。


「いやぁ手違いで説明が遅れたよ。君に課せるべき使命を」


「僕の使命?」


「そうだよ」


こいつ顎鬚も蓄えて白髪生やしてるくせになんで口調はこんな子供なんだ。


「まぁ生まれたて」


「生まれたてなんだそれで」


神は年取るの早いんだなうん。


「まぁ頼みだよ」


「僕ですか?」


「君が丁度凄い後悔を持ったまま死んでくれたから都合がいいと思ってこの世界に強制異世界転移をしちゃった」


「ふーん」


僕はどうやらやはりと言うべきか死んだようだ。


「気を落とさないで!だからこそ第二の人生をあげたんだよ!」


「第二の人生?」


「本来死んだ人間は全てをリセットされて輪廻転生することが決まっているけど君だけは記憶を引き継いだまま異世界転移させたんだ」


「どうして?」


「それは君が死んだ世界でとんでもない後悔をしていたからね」


「まじで?」


いや。大好きな異世界転移のギャルゲーの裏ヒロインの裏ルート越して完全に優越感に浸っていた僕にどんな後悔があると言うのだろう?


「えっと短パン?」


僕は遥か高い高度で後悔を思い出した。


最後にスカートを覗いたんだ。だけどその子は短パンを履いていた。一体あの子はどんなパンツを履いていたんだ?


「うぉおおおお!!!!」


「思い出したようだね。だからこそ君をこの間違った歴史を歩み始めた世界に転生させたんだ」


「歴史を間違えた?」


「ああ」


「それはどんな風にだ?」


「君が転生した世界は自然は豊かで人間と魔族の喧嘩は絶えない世界だけどそれは間違ってない歴史なんだ。だけど17年前ついに間違った歴史を歩み始めた」


「それは?」


僕は大きく息をのんだ。


「男性と呼ばれる君のような性別を持った男の人が消失したんだ」


「は?」


「つまりあの世界に男性は君しかいないんだ」


「はい?」


「だから君にその原因を探ってほしいんだ」


「はぃいいいいいい!?」


「これが転生させた条件だ。拒否権はまるでないけどね」


「ちょっと待てよ!?つまりそれって…」


意識が黒に染まっていく。


「神は世界へ干渉することを許されないんだ。だから君に頼んだ。本当に頼むよ。君が間違った歴史を歩み始めたこの世界の崩壊を救ってくれ」


それってハーレムだよなっ!?


そして意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ