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◆07 海賊の人魚と記憶喪失の美男子

「はああぁ!? そんな脅しの仕方ってあるか!?」

「ばらされたら困るんだろ? 共有者がいれば何かと便利だと思うがな」


 オールトの言うとおり、女であることを隠すには骨が折れた。誰かに助けを求めたくなることが何度もあった。それでも今まで何とかなってきたし、これからも何とか出来るはずだ。

 ばらされたら困るが、ルージュはきっぱり言った。


「……駄目だ。連れてはいけない。あなたは目立ちすぎるし、か弱すぎる。わたしはまた何処かの海賊船に乗るが、オールトでは乗せてもらえたとしても海賊達の慰み者になるだけだ。前にも言ったが、わたしは足手まといは要らない」

「……慰み者は遠慮したいな」

「乗せてもらうからには、船長が望めばわたしにはあなたを守る事は不可能だ」

「まあ望まれなければ良いだけだ。それにあんただって、女とばれれば船には乗れなくなるし、暴行されるかもしれないぞ」

「覚悟の上だよ。あなたは連れて行かない。好きに言いふらせばいい。わかったなら、わたしに関わろうとするな」

「強情だな」


 強情はどっちだとルージュは思った。何故オールトが連れて行けと言うのか、やっぱり意味が分からない。財宝が欲しいわけでもないだろうに、わざわざ危険に足を踏み入れようとしているみたいだ。


 睨んでくる頭上の赤い瞳に、ルージュも負けじとにらみ返すと、オールトは握りしめた拳をルージュにつきだした。


「あんたが船長になれば全部解決だよな? 船長命令なら船員が俺に下手なことは出来ないし、個室を使えればあんたが女だって隠しやすいだろ。俺を連れて行けば言いふらされる危険も無いし、何かと楽だ」

「……今度は何を言い出すかと思えば。確かにその通りだな。けど船も船員もいない、金だって無いのに、そんなの夢物語だ」


 船を持つと言うことは、莫大な資金が居る。人件費だって馬鹿にならないし、必要な船員が集まるとも限らない。

ルージュの目的は特定の財宝だったため、情報を集めやすいという理由で海賊船を渡り歩いてきた。おこぼれとして貰ってきた金では足りるはずもない。

 呆れるルージュに、オールトは不敵に笑うと握り込んでいた拳を開いた。


「なあ、これでも俺は足手まといか?」




 赤い薔薇を象った宝石は、口ひげ海賊の秘宝――アスターシの所有物として有名だった。海の薔薇と呼ばれ、その値打ちはいかほどかと海賊達を賑わせていた。

 ルージュもそれこそが探している“赤い薔薇”かと思い、アスターシの船に乗ったのだ。盗み出したそれはルージュの求めていた物ではなかったが。


 それが今はオールトの手にある。死にかけながらもずっと握っていたらしい。その宝石をオールトが離さなかったからこそ、ルージュも彼を見つけることが出来た。


 ルージュにとっては価値のない石だったが、石は思わぬ力を発揮した。


 はじめに、ならず者達の町に戻ったら運良くそのまま中古の船を手に入れた。


 ルージュはオールトの事をひとまず置いておいて、新しく服を調達するために町に戻ったのだった。すると、着替えていたその短い時間で、オールトは海賊達に絡まれていた。

 目を離す暇もないと駆け寄れば、海賊達は何故かオールトから離れてルージュに飛びついてきた。


「おれたちの船を譲るから、あんたの宝石をくれないか!? 本物の海の薔薇だろ! 船を探しているって言うじゃないか。先月作らせたばかりだから、耐久性は問題ない。他にほしいものがあるなら用意する。ああ、まずは船を見てくれ」


 ルージュが返事をする前に海賊達とオールトは行ってしまうのだから、追いかけるしかなかった。

 崩れかけた港にあった船は、誰が見ても申し分のない海賊船だった。汚れも少なく、戦闘にあった後もない。中型に分類される大きさは機動性に富むだろう。

乗るならばこのような船が良いとついルージュは一瞬思ったが、操作する船員が居ない。ルージュが断ろうとした時、オールトは海賊達に宝石を渡して、すでに舵の鍵を手に入れていた。

 海賊達はルージュが止める間もなく、後で必要な物は届けさせると言い残し、るんるんと何処かへ行ってしまった。


 次に、アスターシの手下達が集まった。幸運にも船を操作するのに十分な人数だった。


 負傷した船長のアスターシは丘に置いてきたと、元手下達は言った。

元々船員達を平気で手にかけていた男だ。人望が無かったアスターシを手下達は見捨ててきた。

 町に戻ると、手下達はルージュが町に居るとすぐに気づいたという。見目麗しいオールトと共に居たのだから、無理もない話だ。

そして、宝石を交換してきたと豪語して酒を飲む海賊達と会い、ルージュ達が船を持ったと知ったらしい。

 ルージュの強さを目の当たりにした手下達は、ルージュが船長ならと集ったというのだ。


 こんなにも早く話が進むとは思わなかった。しかもルージュの意を全く介さず。


アスターシは頻繁に己のことをラッキーマンと自負していたが、あの宝石のお陰だったに違いない。

※登場人物紹介(ネタバレ有り、キャラ崩壊、読み飛ばし推薦、以降追記有り)


*薔薇の形をした赤い宝石(=通称:海の薔薇)

アスターシの所持品として有名。持つ者に幸運をもたらす曰く付き。船の2、3隻は余裕で買える値打ちがある。


ボス戦では使われないタイプのアイテム。

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