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◆01 人魚と美男子の苦悩

※オールト視点

 どくりと跳ねた心音に、オールトは目を覚ました。


 その日、オールトは気分良く朝を迎えた。まだ日が昇ったばかりなのか、部屋は薄暗い。長椅子を見やれば、白い布の固まりが膨らんでは縮むを繰り返していた。

 オールトは静かにベッドから降りると、長いすに眠る彼女の顔を覗き込む。

 透き通る水色の目は瞼に隠され、強い意志を秘めていたそれが無い今、オールトには彼女が幼気(いたいけ)な少女にしか見えなかった。なぜ男と間違えていたのか信じられない。


 よほど眠りが深いのか、オールトがルージュの薄茶色の頭を撫でても、起きることはなかった。お世辞にも手触りが良いとは言えない髪に、指を滑らせる。

 徐々に明るくなっていく外を見て、ルージュを起こさないようにオールトは船長室を出て行った。




 外に出れば、オールトは朝の清々しい冷たい空気に包まれた。朝靄が出ているらしく、視界は良好とは言えないものの朝日が反射して明るく感じる。

 久々に体調が良いオールトは、その気持ちよさに深呼吸をした。


「あ、にいさん! おはようございます。体調良さそうですね」

「お早いですね……昨日はそんなに盛り上がらなかったんですかい?」

「……」


 すでに仕事を始めていたのか、三人組の船乗り達がオールトに声をかけてきた。うち一人が両手でハート型を作って割ったが、見なかったことにする。

 乙女のせいで、この船の船員達は皆オールトの事をにいさんと呼ぶようになった。オールトは訂正するのも疲れたので黙認している。

 三人組に続いて、船内から続々と他の乗組員達が現れ、見張り台からも人が降りてくる。


 船乗り達は、オールトが現れたのことが珍しいらしく、一様にして驚いた顔をされるが、これまた一様にして親しげにあいさつをされた。

ずっと船長室に籠もりきりだったオールトだが、こうも友好的に接せられると受け入れられたようで、悪い気はしなかった。

 ただ、ご愛人やら思い人やら言われると思わず口が歪みそうになる。オールト自身が自衛のために蒔いた種とは言え、真実が大きく異なっていることを思えば複雑な気持ちになるのだ。


 徹夜で見張りをしていたらしき船員は、目に隈を作って船内へと消えていく。他の者達は各々持ち場へと向かっていった。

 久しぶりに調子が良かったので体を動かしたい気分のオールトは、近くの船乗りに声をかけた。


「何か俺に手伝えることはないか?」

「えっ? 良いですよ。にいさんはゆっくりしていてください」


 オールトとは違い、がっちりした体型の船乗りは木箱を抱えて行ってしまう。オールトでは持ち上げるのがやっとだろう大きさの箱だ。


「危ないですから、にいさんは離れていてください。触れないように気をつけて」


 縄を調整していた船乗りにそう言われて、オールトはその場を立ち去るしかない。砲台を手入れしていた乗組員にも同じことを言われた。


 仕方なく別の船乗り達に手伝いが無いか聞くが、やんわりと断られた。どの船乗り達も、オールトに頬を染めながら言ってくるために、食い下がることはできなかった。もじもじしてくる男達に、問う気も失せる。


 そうしてすることを見つけられないまま、日が昇りきった頃。オールトは肩を掴まれ、用意された日陰へと拉致された。


「にいさん、太陽に当たっていると倒れちゃいますよ。日陰に椅子を用意したんでどうぞ」

「そうですよ。にいさんの柔肌に傷でもついたら大変です。大人しくしていてください。レモン水もよければどうぞ。調理当番からにいさんへの差し入れです」


オールトを拉致した船乗り達は、子供に言い聞かせるように言ってから、持ち場へ戻っていった。


「……」


 船乗り達は鍛え抜かれた体で、太陽の下力強く働いていた。光る汗が眩しい。

対してオールトはと言うと、涼しい日傘の下でそんな彼らを眺めながら飲み物をすするしかなかった。通りがかる乗組員は、オールトに飴や焼き菓子などおやつをくれて、忙しそうに去っていく。

 餌付けか、それとも供え物か。

 甘いものが特に苦手というわけでもないオールトは、気づけば腹が満たされていた。その間も、船乗り達は黙々と動いている。


 オールトは役に立たないようだ。

 体型の差を見ればわかることだったが、具合が良いと調子に乗った自分が情けない。力仕事は無理でも、他にやることがあればと思っていたが、彼らから見たオールトは、動けばすぐに倒れてしまう、か弱き船長の愛人らしい。

太陽の光がなんだというのか、オールトは吸血鬼ではない。子供ではあるまいし、かすり傷くらいなら何ともない。

 不機嫌になったオールトが椅子から立ち上がって動こうとすれば、休んでいてくれと座らされる。


 日陰にある椅子の上にしか、オールトの居場所は無かった。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました<(_ _)>


この章は閑話みたいなもので、短いです。何が来てもばっちこいな気持ちで遠くから眺めてくださいませ。今の内に謝っておきます。ホント、すみません……。

深夜のテンションが全ての原因です。こんな後書きまで目を通してくださる方には要らぬ忠告かもしれませんが;


どうしてこうなった……

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