表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

◆04 薄命男の残酷な記憶

※残酷な描写有り

 やられた。


 苦々しく思いながら、暴れるサメ達をよそに、ルージュは肩に負った傷に、海藻をきつく巻き付ける。

 海に落ちた後、浅いものの出血したそこを察知して、どう猛なサメ達が襲ってきた。人魚の爪と牙で一匹を仕留めて放れば、集まってきたサメ達は同胞に群がってルージュには見向きもしなくなった。

 肉を食いちぎり、海に血をまき散らす猛獣を眺めながら、ルージュは先程まで乗っていた船を底から見やった。


 密航者の正体は、口ひげ海賊のアスターシだった。

ルージュによって右手を負傷したが、戦意を失わず、復讐に来たようだ。船を乗っ取るつもりだろう。


 レオポルトの存在に安心していたのか、背後を取られるとは不覚だ。一発目は避け損ねて肩に食らったが、二発目は海に逃げて当たらずに済んだ。

一安心もつかの間、人食いサメが群がってきたのだから、そこまで計算されていたのかと思うと腹が立ってくる。


 人魚は肉食だ。己よりも大きな獲物を仕留めるのは造作もない。鋭い爪を引っ込めて、ルージュは口についた血をなめ取った。


 腹を満たしたサメ達が散らばった頃、船は進路を変えて進み始めた。行き先は、泊まる予定の無かった町だ。


彼らは大丈夫だろうか。


 町まではそんなにかからないと、レオポルトは言っていた。ルージュは肩に巻いた若布をたなびかせながら追いかけ、海上に出ては船の様子を見ることにした。


 発砲音は無く、時折アスターシの下品な笑い声と、幸運という単語が聞こえてくる。どうやら、船を乗っ取ったらしい。船員達も特に逆らうこともしていないようだ。

それもそのはず、彼らは元々同じ船に乗り、アスターシを船長として海賊行為をしてきたのだから、それが戻っただけだ。

 戦いを好まないルージュに、船員達は面白く無さそうだった。やはり、彼らはアスターシの元にいることを望むのかと考えていたとき、船は町に着こうとしていた。


 ルージュはそこで、船を追いかけるのをやめる。船はルージュをおいていく。

 止めるべきか、けれど、人魚一人の身で海賊船一隻止めることなど出来ないし、すでに気づかれているに違いない。何が幸運だ。


 町には海軍の船が泊まっていた。




 海水が流れ込む岩穴で、ルージュは海に尾を浸しながら岩の上に座っていた。

 岩穴は外よりも早く闇が降りてきている。


 船は案の定海軍に見つかり、逃げることもできずに海賊達は捕まっていった。

ただ、アスターシ以外全員反抗していなかったのが不思議だ。観念するにしても、早すぎるし素直すぎる。他に不祥事でも起こったのだろうか。


 船の連行は明日になるのか、船員達は船に縛られて放置されるらしかった。

アスターシと、何故かオールトが船から降ろされ、別々の建物へと連れて行かれるのをルージュは海から傍観した。

 アスターシは首謀として船員の意思をくじくためと考えられるが、何故オールトが船から降ろされるのだろう。


 この後、自分はどうするべきなのか、ルージュは悩んでいた。このまま彼らを放って、一人、以前のように他の海賊船に乗りつつ財宝を探す手もある。

 その方が気楽だと思うのに、踏み切れない。

 

 床に伏せっていたオールトは今、どうしているだろう。看病されているのか、アスターシと同じ扱いをされて、冷たい牢獄に閉じ込められていないだろうか。病状が悪化していないだろうか。


 悪い想像を消そうと尾を揺らし、水を跳ね上げたとき、ルージュはオールトを心配している自分に気が付いた。

 知らぬ間に彼の事を考えていた。

 それに、船長としてこのまま船員達を見捨てることに、罪悪感を覚えている。様々な海賊達と会っては別れ、時には裏切ってもきたルージュにとって、初めての感情だった。


 岩穴は完全に闇に覆われた。水底が、夕日を反射して下から僅かに岩穴を照らしたとき、ルージュは底に眠る多くの樽を見つけて、意を決した。

※登場人物紹介(ネタバレ有り、キャラ崩壊、読み飛ばし推薦、以降追記有り)


*人食いサメ

小さな港町周辺に生息している大型のサメ。血の臭いにピラニアのように集まってくる。


サメなのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ