第6話 転生理由があまりにも意味不明なんだけど
「こんにちは!玉秀!最近はどうだい?」
私が目を覚ますと、淡い黄色のソファに座っていた。
目の前には、整った顔立ちと水色の瞳を持つ男が、優しく私を見つめている。
白く引き締まった右手で、水色の長い団子ヘアを整え、前に垂れた二房の前髪をすっと直した。
半透明で水の流れのような宝青色のズボンに、上半身はノースリーブのタンクトップ。
少しだけ割れた下腹がのぞいていて、ラフなのにどこか上品な雰囲気で、
私の向かいの灰色のソファに座っている。
私はすぐに分かった。
彼はヘフィス。
導きと加護の神で、私がこの異世界に来たあと、案内役をしてくれた二柱の男神の一人だ。
本来なら、自由と幸福を司る一品女神のタイジーラが私を担当するはずだった。
けれど彼女は事情で来られず、その代わりに二品の男神である彼らが、私をサポートしてくれたのだ。
「狂女、久しぶりだな!お前が指定した戦闘服はちゃんと着てるぞ!
もう文句を言うな!うるさいんだよ!」
低くしゃがれた、重い鐘のように落ち着いた声が、
私の向かいのソファのもう一方から聞こえてきた。
そこには、すでに座って右足を組み、血管の浮いた足先を揺らしながら、
太い左手で足首を押さえる、どこか不良っぽい座り方の男がいた。
棕黒色の肌は温かく、がっしりとしている。
裸の上半身には、引き締まっているが過度ではない力強い筋肉の線がはっきり浮かんでいた。
下半身は前に深いスリットの入った火紅色の粗布の腰布をまとい、
股間の中央には炎の紋様が刺繍された六尺褌を着けている。
神聖で原始的な力を象徴しているかのようだった。
その顔立ちはまるでギリシャの彫像のように整っていて、
私から見れば、完全にワイルド系イケメンだ。
特にあの樺色の鋭い両眼は、まるで私の内側まで見透かすようだった。
彼は左手を上げて、燃えるような赤い短髪をがしがしとかき、ついでに顎の無精髭を撫でる。
まるで、私が先に口を開くのを待っているみたいだ。
私はまだ、この世界に来る前の光景を忘れていない。
横断歩道に落としたぬいぐるみを拾おうとして、小さな女の子が急に歩道から飛び出した。
あの時の私はもうヘトヘトで、早く家に帰ることしか考えていなかった。
でも、右折してくる車が猛スピードで迫ってくるのが見えた瞬間、
反射的にその子の腕をつかんでいた。
そして一緒に前へと飛び出し、激痛が襲ってくるその瞬間――私は、なぜかこんなことを考えていた。
あの空と白の兄妹のアニメ、続きってあるのかな。
死んだら家族が霊媒師でも呼んで、私に教えてくれるのかなって。
目を覚ますと、見知らぬ空間に座っていた。
目の前には、端正な顔立ちと水色の瞳を持つ男。
当時の私は衝撃で言葉も出ず、ただ呆然と、彼の着ているスーツを眺めていた。
水のように流れる質感の青いスーツ。
裾は静かな水面みたいに揺れ、ズボンは初春の雪のように白かった。
「こんにちは、私はヘフィス。
代理女神タイジーラに代わって、君が玄離大陸で暮らすのをサポートする神だよ!」
ヘフィスはふわりと微笑み、私をそっと立たせると、鵝黄色のソファへと座らせてくれた。
私ははっきり覚えている。
彼こそがプリーモス、創造と孕育の神であり、
私が異世界に来てからの、もう一柱の案内役の男神だ。
「今、君は現実世界では昏睡状態にある。原則として奇跡を起こして目覚めさせるには、いくつかの条件を満たす必要がある。」
彼は垂れた水色の前髪を整えながら、続けた。
「現在、玄離大陸はかつてない危機に直面している。『夢幻泡影』という迷宮が拡張を続け、このままでは大陸全土が呑み込まれてしまう。
君が協力し、迷宮に入り、そのエネルギー源を破壊してくれるなら――報酬として、異世界の景色や新しい生活支援を用意しよう。
そして任務完了後は、後遺症なしで現実世界に目覚めさせることを約束する。」
私は理解不能という顔で首を横に振った。
頭がまったく追いつかない。展開が神すぎる。
ヘフィスは顎に手を当てて少し考え、それから妙に誠実な顔で私を見つめた。
「調べさせてもらったよ。君はそれなりの傷害保険に入っているね。
目覚めた後も、"少なくとも五年間は保険金で生活できる"。
しばらく働かなくても問題はないはずだ。」
そうだ!進捗報告!
私は突然、仕事を思い出した。
明日は朝会。案件の進捗を報告しないといけない。
あの中年ハゲで、目だけはやたら鋭い上司が、私の事前連絡を待っている!
反射的にスマホを探して下を向く。
でも今の服にはポケットがない。バッグもない。
きっと今の私は、相当パニックで、しかも絶望顔だ。
その時、ヘフィスがすっと目の前に現れ、スマホを探している私の右手を温かく包んだ。
安心させる声で言う。
「玉秀。君は交通事故で昏睡中だ。ちょうどその時、
私たちは別世界の問題を解決できる人材を探していた。
理由は――君が倒れる直前の“執着”だ。そのエネルギーは召喚できるほど強かった。
そういう体質は玄離大陸に向いている。あそこはエネルギーの流れが基盤の世界だからね。」
近い。顔が近い。
正直、ヘフィスの整った顔にちょっとやられそうになった。
こんな至近距離でイケメンに触れられるのは初めてだ。
私はとりあえず冷静なふりをして、こくりと頷く。
……でも、すぐに首を横に振った。
あの世界の高圧な職場環境と人間関係の泥沼。
長期入院で退職扱いになったらどうするの?
空白期間なんて履歴書に書けない。想像しただけで胃が痛い。
もう戻りたくない。
心も体も削られるあの地獄みたいな場所に。
たとえ時間ができても、以前は憧れていた「イケメンたちと曖昧な距離感でときめく恋愛ドラマ」すら、もう再生する気力がない。
再生ボタンに指が触れたまま、押せなかったあの瞬間。
何かが、ゆっくり遠ざかっていく気がした……。
やっぱりさ……
会社なんて行きたくないんだよおおお!!(頭を抱えて号泣中)




