第3話 私の心のヤバイやつ
甘い物を食べ終わったあと、私は急いで治療院へ向かった。
院内では、王岳が自分の二八分けの灰色の短髪をかき上げていた。
黒い両目がきらりと光り、顔色もかなり戻っている。
でも、すぐに視線を落としてベッドの前を見つめ、自分の胸をさすりながらため息をついた。
「ごめんね、王岳。私たち、なんとか狼王は倒せたけど、
その先にいた宝を守る茶色い毛の狼王までは、攻略できなかったの。」
「え? まだ宝を守る茶毛の狼王がいたの? でも僕たち、
最初の狼を倒したあと全滅したんじゃ……?」
「公会のメンバーが、あの洞窟には秘道があるって言ってたのを聞いたの。」
改めて見ると、彼の卵型の顔立ちは本当に整っている。
高く通った鼻筋に、少し尖った顎。あの陽だまりみたいな笑顔は、
パーティーの中でもひときわ目立つ存在だ。
性格はちょっと抜けていて分かりやすいし、
体つきも引き締まっていて、筋肉の線もはっきりしているけどやりすぎじゃない。
……正直、私の心がちょっとざわつく。
でも、あの前髪ぱっつんの憎たらしい魔法使い。
あの幼い顔のほうが、どうやら彼の目を引いているみたい。
今の私のパーティーでは、隊長の武僧が治療術みたいな小さな法術も覚えているから、
あの法師とよく一緒に行動している。
それで気づいたの。王岳はよく隊長の武僧と話していて、うちの法師のことを気にしている。
武僧と法師が付与道具を買いに行ったり、魔力を回復する補品を買いに行くときも、
王岳はわざわざ顔を出す。
私はこの目で見た。あの法師が、こっそり王岳を観察しているところを。
節約のために、武僧と王岳は酒楼で同じ部屋に泊まっているけど……私は疑っている。
武僧が隠れ蓑になって、夜に王岳がこっそり法師に会いに行っているんじゃないかって。
だって、王岳が武僧の隣にいる前髪ぱっつんの法師を盗み見るのを見たし、
その法師も俯いて、恥ずかしそうな顔をしていた。
……最初にパーティーに入ったのは、私なのに。
武僧と私は、結成時からの古参メンバーなのに。
私は邪魔な石をどかすのも得意。
でも、どれくらい時間をかければ事故に見せかけられるかな?
それとも――「分解精霊」を使って、直接消してしまうほうが早い?
「ねえ、玉秀。大丈夫? ごめん、僕が弱かったせいで、みんな最後まで探索できなかった。」
私は何も言わずに首を横に振って、そのまま王岳のほうへ身を寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
王岳の優しい声で、私ははっと我に返る。
……さっき、私、すごく怖いことを考えてなかった?
彼の体温は安心できる。ほのかな甘い香りがして、まるで私の大好きないちごケーキみたい。
王岳は少し照れたように唇を結び、俯いた。
私はすぐに体を離し、背中のバッグから彼の大好物のりんごパンを取り出して、笑顔で差し出す。
「玉秀、ありがとう。でも、お腹すいてないの?」
さっき一人でデザート食べ放題を平らげたばかり。でも、私は優雅なイメージを守りたい。
目を覚ました彼に一番に会いたくて急いで来たせいで、
その場で作ってくれる手作りプリンを食べ損ねたのが心残りだけど。
「王岳、私はあまり食べるほうじゃないの。
夜はそんなに入らないし。
それに、あなたと組めて本当に嬉しい。どの冒険任務も、私はちゃんと楽しんでるよ。」
聖職者らしい、穏やかな微笑みを浮かべて、彼を安心させようとする。
王岳は真っ直ぐな目で私を一度見て、何も言わずに、静かにパンを開けて食べ始めた。
王岳と出会って、もう二年になる。それは私にとって幸運なことだ。
私は普通、同じパーティーと三か月以上一緒にいることはない。
多くの隊伍はその場しのぎで動くから、私はいつも短期契約を結ぶ。
ここでは団体任務を受けるとき、冒険者団を組んで正式な仕事契約を交わす。
途中で逃げたり、裏で別の依頼を受けて手を抜いたりしないようにするためだ。
場合によっては、公会が冒険者を一方的に凍結したり、
理由もなく追い出して宝を独占したりするのを防ぐためでもある。
ひとたび衝突が起きれば、すべては契約通り。
解約にも違約金が必要になる。
前の世界の会社みたいな仕組み。
でも、私はあの頃よりずっと自由だ。
しつけが必要な出来の悪い隊友に当たったときは、誘導の法術を使えばいい。
任務中の魔物をうまく引き寄せて襲わせれば、自分の実力を思い知る。
無知や慢心は、現実を見れば消える。
治癒法術を覚えてからは、戦闘で魔獣に巻き込まれても大怪我をする心配がない。
高額な治療費に悩まされることもない。
だからこそ、負担なく計画を実行できる。
「厄介者が隊の枠を占拠する構造の解体」
そして最後は、相手が解約するときに支払う違約金を、きちんと受け取るだけ。
私はそう信じていた。
「聖職者」として、こんなふうに悠々自適な生活を送れると。
でも今でも分からない。
あの途中で、いったい何が起きたのか。
玉秀が王岳を好きなのは、もうかなり分かりやすいと思います。
次話では、玉秀がなぜ冒険者公会のメンバーに褒められたのか、その出来事を少し補足します。




