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第35話 信仰を壊す双神

「つまり、(セイ)国の人型魔獣の刺客……“グルト”って、どういうこと?」


緊張で顔色がどんどん暗くなるプリーモスを見つめた。


ヘフィスが近づいて肩を軽く叩くと、彼ははっとして叫ぶ。


「俺はみんなを怒らせたいわけじゃない。

俺はみんなのこと好きなのに、

なんで全員こんなに怒るんだ……。」


「プリーモスは少し落ち着こう。

手短に話すけど、グルトがまた出た。

たぶん君たちみたいな『神の祝福を受けた者』に頼むことになる。


精霊を操れる代償として、私たち神の代わりに“異常”を見張ってほしい。

前に障害のある赤子を作ったのが人間だったこと、覚えてるよね?」


私はすぐにうなずいた。あの時知った衝撃は、今でも忘れられない。


「それが(セイ)国だ。彼らはセイ国と、“正統な『人類』国家”を争うためにそんなことをした。

結果、種族間戦争に発展して央国は滅んだ。

多くの本に、(セイ)国の皇室は戦争の責任で滅びたと記されているけど……一人だけ、

王族が生き残った。」


「その障害のある赤子って……王子なの?」


ヘフィスが重くうなずくのを見て、私はその身の上があまりに不条理だと感じた。


「骨人族の英雄、儀太・古龍を知ってる?」


私はうなずいた。迷宮の深部で、その印を見つけることがある。


嫌いじゃない。薬草が多いし、珍しい魔物も出る。


「骨人族の歴史にはこうある。



医術研究で、魔獣の再生細胞を人間の国王に応用してしまった。



その“国王”が、名のない障害児だった王子だ。彼には多くの名前がある。


実験は成功したが、再生の果てに魔獣へと変じる。私たちはその個体を追い切れない。

儀太・古龍は『神の祝福を受けた者』でありながら、

裏でやりすぎた……まあ、骨人族らしい性質だけどね。」


ヘフィスは髪を撫で、まだ呆然としているプリーモスに目を向ける。


「それでも彼は大戦で多くを救った。

だから私たち神は“罰”として、彼の功績を抹消した。

誰にも覚えられなくなれば、神になる資格は失う。



もし『不可能を成し遂げる』執着から降りられていたら……



あんな末路にはならなかったのに。」


ヘフィスがため息をつく。

私は聞き終えても、まだ引っかかりが残った。


「じゃあ、罪滅ぼしで各地の強い魔獣を封印して回ってるんですか?」


ヘフィスは首を振り、ふっと笑った。


「彼の封印陣に遭遇したことは? あの空間……

たぶん“封印”じゃない。観察と実験の場だよ。」


私はごくりと唾を飲み込んだ。ヘフィスは、慌てた私の顔を見ている。


「人型魔獣は文字通りの意味だよ。

人間の細胞と魔獣の細胞を混ぜて作った産物。

人間をベースにしたのか、魔獣をベースにしたのかは、


儀太・古龍は記録を残していない。


彼は完成品を、どこか封じた空間に入れて反応を観察するんだ。」


「……あるよ。それで私……私、狼人王を処理しちゃった。ふふ。」


あの狼人王は本当に異常な個体だった。

毛色も肌の色もどこか違っていたし。


魔獣には野性があるものだけど、あの数秒……狼人王は考えてたのかな?

私の見識が足りないだけかも。

次は、高位の魔獣が立ち止まって思考するのか観察してみよう。

私はヘフィスの優しい笑顔を見ながら、こっそり視線を床へ落とした。


「ヘフィス、玉秀を脅かすなよ。

俺、最近ほかにも人型魔獣がいる気がしてる。

お前、魔人族に注意するよう知らせたほうがいい。

だってお前は、あいつらの英雄で神なんだから。」


私は驚いて顔を上げ、ヘフィスを見た。


額のあたりを覆う分厚い水色の髪のせいで、ずっと猿人族だと思っていた。


「皇城の教団に頼むよ。あいつらが処理する。」


ヘフィスの顔が、急に冷えた気がした。さっきまでの柔らかさが一切ない。

それでも彼はすぐに、ふっと笑って私を見る。


「ヘフィス? あなた……魔人族なの?」


「さっきどこまで話したっけ。

そうだ、とにかく人型魔獣には気をつけて。玉秀、君には長松がいるだろ?

城内で長松が魔獣の痕跡を感じたら、必ず私たちに知らせて。」


「ヘフィス。

お前もあいつらも魔人族だろ。お前の教団は『角存派』に知らせない。

角を外した件で、教団はまた衝突する。

少なくともお前は神だから、あいつらも不敬は働かないが。」


「プリーモス……お前、今のは本当にいいこと言った。」


ヘフィスの声が少し詰まる。プリーモスは眉をひそめた。


「どうせ衝突するなら、無事に済ませるために……教団には知らせない!」


……え?


私は、冷えた声で言い切ったヘフィスが、笑って去ろうとするのを見ていた。プリーモスが目を見開く。


「ヘフィス!」


「何?」


「前功を棄てる気か? 昔、お前は俺と同じだっただろ。

族人を生き残らせるために、額の二本角を外させた。


人間が強欲で狩るからだ。


俺は鳥人族に、六尺褌の中へ爆薬を仕込ませた。

わざと“爆発しそうな形”にして、規則を破る闇市の狩人どもへの警告にした。

策は成功した。俺たちの族は、しばらく平穏に暮らせたんだ。」


「それで?」


「……え?」


「だから、私たちは“信仰を壊す神”なんだよ。私たちを邪教扱いする連中だっている。


だって私は、魔人族が創世と平穏の神から授かった“角”を踏みにじって、

あいつらにその誉れを捨てさせた。


君は鳥人族の神聖の象徴だった六尺褌を壊しただろ。

変な模様を付けて、鉄の枠まで組んでさ。信徒が三分の一減ったの、気づいてない?


私は別にどうでもいいけど。君は先に、

自分の信徒数をちゃんと立て直しな。減りすぎたら二品神になれないよ。」


ヘフィスは冷たく笑い、私に手を振った。私は気まずく手を振り返す。


「じゃあね、玉秀。先に用事を片付けてくる!

……危うく言い忘れるところだった。





危機ってのは、人を前へ進ませる燃料だ。




一回一回の機会、ちゃんと掴めよ。

……そうだろ?」


冷たい霧が部屋をなでるように流れ、

空間には私と、黙って唇を噛むプリーモスだけが残った。

伝統と新しいもの、そのバランスって難しいなって思う時があります。みなさんはどう思いますか?

それと、もしこの物語を気に入ってくれたら、感想で教えてもらえると嬉しいです

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