第34話 突発、焰華村の事件
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「後書き」では世界観について少し雑談もしています。
いつも読んでくださって、本当にありがとうございます!
「それと玉秀、気功と魔力が何か、覚えているか?」
「太清君先生、気功は物質の外を流れる気のことです。
そして魔力は、その気が生物の体内に入り、変換され蓄積されたものです。
気功はどこにでもあるわけではありません。
法陣を使える人はできるだけそれを活用します。
個人の魔力には限りがありますから、魔力の使用は最後の手段にするべきです!」
私はそれをもう口訣のように覚えているから、すらすらと口にできた。
「よく言えた!多義にも、環境ごとに気功の流れの規則を観察することを学ばせるべきだな。
触手の蔓が生えている場所は、気功の底力が最も豊かな場所だ。
あの植物は全身に魔力を満たす必要があるからな。」
太清君はゆっくりと私へ視線を向ける。私は頷いた。
……なんだかこの話、少し変だ。
私がいた隊伍が解散する前の任務って、触手の蔓の掃討じゃなかった?
どうして先生がそれを知っているみたいな言い方をするの?
偶然よね?
「これで次は多義も、外部の気功を借りて自分の魔力量不足を補える。
そうすれば、自分を守る術をいくつか発動できるだろう。
最初から最後まで自分の魔力だけを使うのは危険だ。途中で尽きれば、命取りになるからな。」
そこまで聞いて、私は突然ひとつのことに気づいた。
額から冷や汗がすっと流れ落ちる。
秘道に入って狼人王を攻略したとき、効率を優先して、
最初から最後まで自分の魔力だけを使っていた。
移動中に感じた、あの先生の「見守るような視線」。
……あれ、本当に気のせいじゃなかったの?
「玉秀。為師は客間を用意してある。忙しくないなら、数日ゆっくりしていかぬか?」
太清君は、まるで何気ない挨拶のような穏やかな顔でそう言った。
「はい、それではお世話になります!」
太清君は軽く頷き、そのまま自室へ向かっていった。
……どうやら、さっき道中で考えていた“訪ねない理由”は、
口に出さなくて済みそうだ。
太清君の客間は居心地がいい。
柔らかいベッドに、ふわふわの枕。
それなのに、私はなかなか眠れなかった。
横向きになり、そばの木製テーブルに置かれた紫色の勾玉を見つめる。
長松はまた子守歌を歌ってほしいと言い出すのだろうか。
泰勇はまた浴槽に水を入れ忘れていないだろうか。
水がなければ翌日には脱水で体調を崩すかもしれないのに……。
……あれ?
私、どうしてこんなことを考えているの?
ただの「同居人」なのに。
面倒だと思っていたはずなのに。
いつか二人が自分に合った場所を見つけてくれたら、
私は王岳と二人で「静かな」生活を送れる。
そう思いながら、深い灰色の天井をしばらく見つめ、目を閉じた。
「やあ、玉秀。太清君は何か言っていたかい?」
ヘフィスの声が聞こえた瞬間、私はぱっと目を開ける。
見慣れた鵝黄色のソファの上に、私は横たわっていた。
「いろいろ言われたわ。しばらくあそこに泊まることにしたの。」
私は、いつも通り穏やかに微笑むヘフィスを見た。
彼女は水色の髪を指先でそっと撫でている。
「それは良かった。今回戻れば、きっともっと成長できる。」
「分かってるわよ。『夢幻泡影』の攻略、でしょ?」
その横にいるプリーモスに目を向けた瞬間、私は思わず眉をひそめた。
彼は全身が煤だらけで、火紅の粗布の腰布はひどく破れている。
刃物で裂かれたように細い裂片となり、六尺輝だけが比較的無事だ。
いつも無駄に清潔感に満ちている彼とは大違いだ。
私の視線に気づいたのか、彼は手をひらひら振った。
「俺は焰華村に行った。なぜか央国の人型魔獣の刺客、“グルト”が現れてな。
あそこは俺の大事なハイ……信徒の拠点だ。知らせを受けてすぐ飛んだ。
幸い、バツ国の元公主もいた。
だが俺が焦りすぎてな、グルトを黒幕森林まで吹き飛ばしたら、そのまま逃げられた。」
……今、絶対「ハイズ」と言いかけたわよね?
でも、現場が相当激しかったのは伝わる。
人型魔獣の刺客“古魯圖”。神に傷を与えられるなんて、相当な実力だ。
私は連続で質問を浴びせたい衝動をぐっと堪え、順番を整理する。
「それで?その“恋人”たちとはデートしたの?
みんな、自分にも愛の結晶がいるって気づいた?
……修羅場とか、起きなかった?」
言い終えた瞬間、プリーモスは口を大きく開けて固まった。
ヘフィスは口元を押さえて、面白そうに彼を見る。
「心配するな。プリーモスは何を司る神だ?」
「みんな老子の大事な信徒だ!修羅場などあるか!皆、団……結している。」
最後の言葉は急に小さくなった。
彼は自分の粗布の腰布を見下ろす。
「ただな、女たちが激怒して取り囲んできて、
鋭利な道具を持って“生育の神をやめさせる”と言い出した。
老子は少し落ち着かせようと思ってな……後で改めて話すつもりだ。」
やっぱり。
身体に傷はない。
でも衣服だけが壊滅状態。
……これは、語られない“事故”が確実にあったわね。
でも、私はもう妙な話を聞いてしまった。
央国は、すでに名ばかりで実質は崩れかけている、国力の衰えた国のはず。
その央国の人型魔獣の刺客、“グルト”。
……その響き、まるで禁忌そのものみたいじゃない?
修羅場の件は、ちょうどいい機会だから後日談も少し整理しておくわ。
第14話で“創造”した村のその後も、ここで回収できそうね。
それにしても……プリーモスって、本当にすごいわよね。




