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第17話 楽天的な蛟人と惨烈な歴史

私はギルドに入ると、受付窓口の横に視線を向けた。

そこには、本人の等身大で再現された二メートルの極彩色の彫像が立っている。


簡素な藤甲をまとい、赤褐色の肌をした屈強な男。

黒髪はやや乱れ、墨のように深い瞳が鋭く光っている。


胸元には星形の銀色の花飾り。

この村の代表花「玫好好」だ。


彫像は両手で剣の柄を握り、巨大な剣を石柱に突き立てている。

腕の筋肉はあまりにも精巧で、今にも剣を引き抜きそうだった。


あれはギルド創設者、初代ギルド長「バツ狩犁」。


この彫像は「気功」が流れる顔料を黄金の表面に塗って作られている。

だから本物の人間のように生々しい。

初めて見た時、私も本気で驚いた。

夜になると、この像がギルド内を巡回するという噂まである。


彼はもともとバツ国の名将で、多くの貴族子弟に武芸を教えていたという。

反乱後は、ちゅうじびょうの一族に従った。

新政府は猿人種への功績を評価し、定年の年に職を解いた。


その後、彼は家族と共に故郷へ戻り、「龍根」ギルドを創設した。


これは玄離大陸で猿人族が設立した、第二の大規模ギルドである。


拠点は山紫水明の地に築かれ、大都市へ続く街道も行き交いが多い。

そのおかげで腕利きの冒険者が観光や長期滞在に訪れ、

このギルドはメイハオ村の安定と安全を大きく高めている……。


「ドン!」


紹介を思い出していたその時、正面扉から大きな物音がした。


見ると、巨大なもふもふの超大型羊のような魔獣が、門枠に挟まって暴れている。


「きゃあ! わ、私の魔獣が毛を逆立てて挟まっちゃった! さっき入口にいたおじさんが……

えっ、うそ、弾き飛ばされたの!?」


魔獣使いらしい少女が、真っ赤な目を見開き、肩までの桃色の短髪を振り乱している。

可愛い顔を引きつらせて悲鳴を上げ、他の職員たちも慌てて飛び出してきた。


前任ギルド長は亡くなった後、村の近くに埋葬された。

その功績を称え、村人たちが資金を出し合ってこの彫像を建てたのだ。


そして受付窓口に立つのは、いつも柔らかな青い三つ編みを結んだ、

穏やかで整った顔立ちの蛟人族の青年、泰耘だ。


メイハオ村は少し変わった場所だ。

近くにあるのは、長径二キロほどの楕円形の湖、聖寧湖だけ。

それなのに、住民の半数は蛟人族だ。


私の知る限り、蛟人族は本来、海辺に住み、他種族の集落を避ける傾向がある。


理由は単純だと聞いた。


蛟人の肉は、美味しいらしい。


「なんでタイユウを連れてくるんだ? 迷宮の魔獣は凶暴だぞ。

遠距離向きだ。盾役はあまり役に立たない!」


「中で十日以上過ごすんだよ? 彼、蛟人族なんだぞ?」


当時、私はタイユウの冗談の意味がわからなかった。

だからギルドの図書室で資料を借りて調べて……背筋が冷えた。


蛟人族の歴史は、読むだけで地獄に落ちた気分になる。


歴史書には、彼らがどのように「利用」されてきたかが、淡々と書かれていた。


生きている蛟人族は、力が強く水に強いという理由で労働力にされる。

容姿が整っていれば、観賞用として幽閉される。


そして死後も、身体は余すことなく使われた。


心臓や肝臓は薬に。

腸内の共生菌は有害菌を抑えるとされ、腸壁は破れにくいため保存容器として利用された。

肺は鰓の構造を持ち、水中の不純物を濾過するのに優れている。


目尻付近の鱗は食性によって色が変わり、美しい装飾品になる。

脱皮した鱗は磨かれ、飾りへと加工された。

青や青緑の髪は編み込まれ、あるいはそのまま装飾に。


全身を覆う灰色の硬い鱗は頑丈で放熱性も高く、皮膚と共に防火用の内張りに最適とされた。

脂は発火点が高く、煙が出にくい。

骨の粉末は独特の海水の香りを持つ。


さらには「蛟人肉」の味や調理法を研究する料理書まで存在していた。


私は本棚の側面にある展示棚を見上げた。

そこには『精選20種美味料理 蛟人篇』という本が置かれている。

人気書籍だけが並ぶ場所だ。


表紙には、正装の料理服を着た人間の料理長。

肌はざらつき、緑がかっていて、犬歯をのぞかせている。

鍋を掲げて笑っている。


その隣には、裸の蛟人族の青年。

大きな樺色の瞳は少し怯え、左眉の間には傷跡。

左手で青い短髪をつかみ、右手はなぜか「いいね」のポーズ。


あの絵は、強烈で、そしてどこか気持ちが悪かった。


今は平和な時代だ。

それでも、ああした資料はきれいに保存され続けている。

後世に苦難を忘れさせないため……なのかもしれない。


聖寧湖は景色が美しく、周辺は湿っていて涼しい。

蛟人族は湖の近くに暮らしている。


泰耘はここ数日、休暇らしく姿がない。

蛟人族は体の大部分が灰色の硬い鱗に覆われていて、放熱のためほとんど服を着ない。


鋼鉄の受付台の向こうで胸元だけが見える彼と話すたび、私はつい考えてしまう。



下半身も、放熱のために……何も着ていないのでは?



私は彼の面板を見たことがある。

まだ十六歳で正式職員。若すぎる。


まずい。

私はよく彼に話しかけている。




周囲から変に思われない? 年上が未成年に、なんて言われない?




顔に妙な表情が出そうになり、私は慌ててその危険な想像を打ち切った。

新たな種族が登場します。

彼らの設定にご期待ください。


きっと、さらに「驚き?」をお届けできるはずです。

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