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第15話 玉秀の誕生日おめでとう

玉秀が異世界に来てから、もう十九年が経った。

時間が過ぎるのは、本当に早い。

私は今、ソファに座りながら、

どうして二柱の男神と今日会う約束をしていたのか必死に思い出していた。


「玉秀! 二十歳の誕生日おめでとう!」


ヘフィスは菓子店で買ってきたケーキを取り出した。

均一で艶やかな黄色のナパージュ、ほのかに広がるチーズの香り。

表面には細かく砕いたコーヒークッキーで「誕生日おめでとう」と文字が描かれている。

あまりに突然で、私は思わず息を呑んだ。


「え、待って? チーズケーキ?」


プリーモスの大げさな驚き声を聞いて、私は顔をそらした。

すると彼は、まるでトイレで大便が出そうで出ない時のような表情をしていた。

私の腰に結ばれた香袋を見つめ、言葉を途切れさせる。


「お前……まだ俺の六尺……『神の物』を持ってるのか?」


「プリーモス、玉秀に新しい誕生日プレゼントでも渡すつもりか?」


ヘフィスは彼の肩を軽く叩き、落ち着けと促しながら全身を眺める。

プリーモスは一瞬固まり、深く息を吸って気持ちを整えた。


「玉秀! 俺からも二十歳の誕生日おめでとうだ。悪いな、俺は何も用意してねえ。

プレゼントは……来年、俺に言え。」


私はそこでやっと思い出した。

今日は、私がこの世界に転生してからちょうど二十年目の日だった。


まさか、こんなサプライズがあるなんて。


私は嬉しそうにケーキを受け取り、ごくりと唾を飲み込んだ。

……でも、今って夢の中じゃなかったっけ?


「これ、すぐ食べちゃっていいのかな?」


「玉秀! 心配すんな。俺はあとでメイ好村に降りて用事を片付ける。

午後五時にはついでに持ってってやる!

それより、お前……忘れてることあるだろ?」


きょとんとした私の顔を見て、プリーモスの樺色の瞳にわずかな苛立ちが浮かぶ。

私が口を開く前に、彼は言い放った。


「『夢幻泡影』の迷宮攻略だよ! 『夢幻泡影』の、迷宮!


お前、自分で俺に頼んだよな?

『ステータス画面の数値を改変できるようにしてほしい』って。

敵を混乱させて、実力を誤認させるためにってよ。

その結果、もうLV93だぞ。


中の上クラスの冒険者だ。

そろそろ仲間を集めて攻略に行け。俺がまとめた、おすすめのパーティーメンバー候補もある!」


「忘れてないよ! でも、まだ冒険経験を積んでる途中なの。

それに、被害が出てるって話も聞かないし……あの迷宮、本当に拡張してるの?」


私の声に滲む気乗りしない様子を聞き取ったのか、ヘフィスは穏やかに微笑んで言った。


「私の知る限りでは、迷宮はむしろ縮小している。

おそらく、どこかの冒険者が攻略を進めているのだろうね。

だから少しずつ消えているんだ。」


「じゃあ、私が処理する必要あるの?」


「これは私の出番じゃない」と言いたげな顔を見て、ヘフィスは静かに私の隣へ歩み寄る。

そして、断りにくいほど優しい声で囁いた。


「私たちの年末ボーナスは、君の戦績にかかっているんだ。頼むよ!

でないと……今後はもう、こんな格好はしないことになる。」


ヘフィスのノースリーブの服は、筋肉の浮かぶ腕と引き締まった下腹部をはっきりと露出している。

私は向かいのプリーモスをちらりと見た。

彼はあくびをしながら、炎のように赤い胸毛に覆われたたくましい胸筋を無造作に掻いている。


そこでようやく気づいた。

この素晴らしい光景が、もう見られなくなるかもしれないのだと。


でも、やっぱり面倒くさい気持ちは消えない。


それに、神にも年末ボーナス制度があるなんて。

その事実にはさすがに目を見開いた。

色んな感情が入り混じって、私の心の中はすっかりぐちゃぐちゃだった。


「頼むよ! 君なら分かるだろう? 

年末ボーナスって、必死に働いている者にとって本当に大事なんだ!

迷宮のごく一部だけでいい、手伝ってほしい!」


あまりにも真剣なヘフィスの口調に、私は思わず考え込んでしまう。

あの評価制度に縛られて、逃げられないと分かっている感覚はよく知っている。

数年前までは、評価が極端に低い査定を受ける悪夢を見て、気分が沈むこともあったくらいだ。


どうせ最近は特に大事な用事もない。

迷宮に少し顔を出すくらいなら、と口を開きかけたその時――


「年末? 俺たちにそんなのあったか? 


あっ! あっ! 


あっ! お前、何してんだよ!」


次の瞬間、ヘフィスが百メートル走のような勢いでプリーモスに突進した。

彼は完全に驚いて固まり、私は目の前のあまりに唐突な光景に呆然とする。


その時、ヘフィスが唇だけで何かを伝えているのが見えた。


写……真? 証……拠?


精霊に頼めば色々なことができる。

だがここは神域。神の許可がなければ成立しない場所だ。

ヘフィスの許可がない限り、風の精霊も彼らの会話を私に聞かせることはできない。


それでも、唇の動きから何となく理解してしまった。


「年末ボーナスのためだ。頼む、いいだろ?」


私は少しだけ投げやりに頷き、微妙な笑みを浮かべる。

するとヘフィスが突然ぐっと距離を詰めてきて、

その誠実で整った顔が、ほとんど目の前まで近づいた。

そして彼は、私の耳元で小さく感謝の言葉を囁いた。

神にまで人事評価と年末ボーナスがあるなんて……本当に驚かされた。

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