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前世は総理でしたが、今世は王家の犬(フェンリル)として働いております。  作者: タツダノキイチ


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総理、夜遊びをする01

北部視察から戻って以来、城の中がばたついている。

どうやら想像以上に大ごとだったらしい。

しかし、私はあまり出しゃばりすぎてはいけないと思い、

「情報連携協定の枠の外だ」

という理由を付けて、軍議への参加は辞退させてもらった。

王はなんとも言えない顔をしていたが、ローズ嬢はある程度納得した様子で、

「国家の問題はまず国家が解決すべきです」

と王を説得していたので、私はなんとなく安心して今日ものんびり昼寝をさせてもらっている。

「しかし、遊び相手がいないとなると退屈なもんだな」

とうっかりつぶやいたのを側にいたベルゴールに聞かれてしまった。

「町にお出かけになられますか?」

と言ってくるベルゴールに、

「ひとりで町に出ては騒ぎになるだろう」

と苦笑いで返す。

しかし、ベルゴールからは、

「王都の民の間でソーリ様はかなり認知されておりますし、例のひったくりの一件で人の味方をしてくれる存在だということも伝わっております。おそらく大丈夫なのではないでしょうか?」

という意外な答えが返ってきた。

「そうか?」

「ええ。ちなみに、あのオークの魔石は自由にしてよいとのことでしたので、軍資金もございますよ」

「ほう。あれは売れるのか?」

「はい。冒険者ギルドに持ち込めばそれなりの価格で売れます。たしか、三十数個あったかと思いますので、それなりの値段になるでしょう」

「なるほど。では、ひとつ冒険してみることにしよう。城への連絡を頼んでも?」

「かしこまりました。魔石をもらうついでに行ってまいりましょう」

という感じで、なんとひとりで町に行く許可が下りる。

私はウキウキしながらベルゴールが戻ってくるのを待った。

やがてベルゴールが戻ってきたが、なにやら肩掛けの学生鞄のようなものを持っている。

「魔石を入れるのにちょうどいい鞄はないかと探して参りましたが、王が学生時代に使っていた鞄がございました。不要とのことなので、そのままいただいてきております。これならソーリ様が首から下げて使うこともできるかと思いますがいかがでしょうか?」

と言われてその鞄を見てみると、たしかに古ぼけてはいたが、肩掛けの紐が割と長くできるようで、私にも使えそうだと感じた。

「いいな。ありがたくもらおう。ちょっと首にかけてみようか」

そう思って首にかけてみると、案外ちょうどいい。

「これはいいな」

と少しご満悦気味に言うと、ベルゴールが、

「魔法鞄となっておりますので、魔力に応じて見た目以上の物が入りますよ」

と言ってきた。

「魔法鞄?」

と思って首元を見る。

するとまた例の画面が開き、

「君の魔力なら容量ほぼ無制限! この際時間経過もなし改変にしちゃうよ! 出血大サービスでぃ!」

という文字が出てきた。

「ほう。無制限にものが入って時間経過もないのか……」

とつぶやくとベルゴールが、

「い、いえ。そんな伝説級のものでは……」

と焦ったように言ってきた。

「ああ、いや。私の魔力でそうなったらしい。おそらく私が使うならという条件付きだろう。いい物をもらった。ありがとう」

そう言って軽く微笑んで見せると、ベルゴールは珍しく苦笑いをし、

「楽しんできてくださいませ」

とどこか引きつったような顔でそう言ってきた。

さっそく町に向かう。

城門をくぐり、貴族街を抜けると、また生活の匂いが一気に濃くなっていった。

市場の方からなにやら肉を焼く匂いがする。

どうやら屋台が出ているようだ。

他にも野菜を売る露店や衣服を扱う露店などがあり、先日と同じように王都の町は今日も活気に満ちていた。

そんな街並みを眺めながら歩いていると、

「フェンリル様こんにちは!」

と気軽に挨拶をされたので、私も、

「はい。こんにちは」

といって手を上げてみせた。

少し人に囲まれ、握手をして回る。

(なんだか選挙活動みたいだな)

と思いもしたが、みんなが嬉しそうにしているのを見ていると、悪い気は全くしなかった。

やがて人が落ち着き、町ブラを再開する。

まずは冒険者ギルドに行こうと思って場所を訪ねながらそちらに向かった。

大きなウエスタンドアを開き中に入ると、

「ぬおぅ!」

とか、

「きゃっ!」

というような短い悲鳴が聞こえたので、

「すまんな。邪魔をするぞ」

とにこやかに声を掛け、どうやら接客をしてくれるであろう人の方に向かう。

細長いカウンターの向こうにいる女性に、

「すまん。魔石を売りたいのだが、ここでいいのだろうか?」

と尋ねると、女性はかなり緊張した面持ちで、

「は、はい!」

と答えてくれた。

「うむ。ありがと。これだ」

と言って首に下げた鞄から魔石を取り出す。

ごろごろと置かれる魔石を見て、受付嬢らしき人が目を丸くした。

「オークロードとかいうのを退治してな。数えたら三十二個あった。いくらくらいになるだろうか?」

と聞くと、受付嬢はハッとして、

「しょ、少々お待ちください。ただいま鑑定いたしますので!」

と言い魔石を袋に入れ奥の方へ下がっていってしまった。

みんなの注目を集めながら待つことしばし。

「お待たせいたしました。全部で金貨五十枚と小金貨五枚になります」

と言ってきた。

周りから、

「おぉ……」

という声が上がる。

(ということは結構な値段だったのだろうか?)

と思いつつ、受付嬢に、

「つかぬことを聞くが、この金の価値はどのくらいになるんだ?」

と聞くと、受付嬢はなんだか引きつったような笑顔で、

「私の年収の倍くらいですかねぇ……」

とその価値を教えてくれた。

「なに? そんなに高いのか? あの豚が?」

と驚く私に受付嬢が、

「オーク一匹が金貨一枚と小金貨五枚です。オークロードは金貨四枚とさせていただきました。単純な強さで考えれば高くてもいいと思うのですが、オークロードは強いわりに魔石が小さいものですから……」

と申し訳なさそうな声で言ってくる。

それでも、庶民の年収の二倍近い金額になったことに驚き、

「ならばミノタウロスあたりを捕まえてくれば、相当な金額になるんだろうな?」

と聞いた。

「み、ミノタウロスですか? えっと、あの、おそらくここでは買い取りできないかと……」

「なんと。ミノタウロスは価値のない魔獣だったか」

「い、いえ! その、おそらく競売にかけて売ることになると思いますので、値段は天井知らずになるかと思いますよ」

「そうか。それはいいことを聞いた。金に困ったら是非狩ってこよう」

と冗談を言って受付嬢に軽く微笑んで見せる。

受付嬢はなんとも言えない表情で顔を引きつらせながら、

「その時はぜひ当ギルドをご利用ください」

と言ってきた。

懐が温かくなったところで、冒険者ギルドという所を見回してみる。

この世界には冒険者という職業があって、魔獣の討伐や護衛を生業にしているという話はベルゴールから聞いていたが、なるほど、ものものしい防具や大きな剣を抱えた者たちが多くいるのが見えた。

(ん? 女性もけっこういるんだな。全体の三、四割くらいか?)

と感心しつつ、なんとなく目の前にいた気のよさそうな青年に近寄って声をかけてみる。

「君は冒険者になってどのくらいなのかな?」

そう気さくに尋ねると、青年は緊張の面持ちで、

「あ、えっと、はい。十年だ、えっとです」

と詰まりながら答えてきた。

「そうか。体を使う仕事を長く続けるのは大変だろう」

「はい、えっと、体には自信があるんで、大丈夫っす!」

「そうか。頼もしいな。ところで、ここはやけに広々としているが、会議室かなにかなのか?」

とわりと広い空間にテーブルやいすが並べられているのを見ながらそんなことを尋ねてみる。

すると青年は一瞬ぽかんとしていたが、やがてハッとして、

「夜は酒場になるんすよ」

と教えてくれた。

「ほう。酒場になるのか。それは興味深い。ぜひ今夜寄らせてもらおう」

と答えて、青年に手を差し出す。

青年はなんだろうかという感じで戸惑っていたが、私が目で促すと、ようやく握手のことだとさとったらしく、緊張しながら手を握り返してくれた。

「では、機会があったらまた夜にでも会おう」

と言って冒険者ギルドを後にする。

私はたんまりもらってしまった金をどう使おうかと思いながら、賑わう町の方へと歩いていった。


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