第03話 人形、人を見つける
締まらない形で戻ってきた荷車の場所、俺はそこで一夜を明かした。
人形だけど寝れるのか?とか思いつつ横になってると以外にも眠気はやってきてすんなり寝ることができた。
川の流れる音がする。朝早くから餌を求めて宙を舞う鳥たちがチュンチュンと声を出す。
そのうちの1羽、まだ子供の小鳥がパサパサと荷車の中に飛んでくる。
そこに居るのはそろそろ目覚めそうな人形が1つ、そのなんにもない頭が小鳥には大きな木の実に見えたのだろう、人形の頭をつつきまくったのだ。
「?…!、アテテテテ!?いや痛くないけどびっくりした!!」
ガバッと起き上がり、驚いた小鳥はどこかに飛んで行ってしまった。 人形、起床。
おはようございます、まぁ誰もいないけど。
「ん、ん〜ふぅ、いつもの癖で伸びたけど人形だから意味なかったかも……夢じゃなかったか……」
意外とスッキリ眠れたのか寝起き特有の眠気もなくすんなり起きれた。
もしかしたらここまでの全てが夢である可能性も考えていたが流石にもう諦めた。ここはきっと本当に異世界なのだろう。
川で顔をバシャバシャ洗った後、昨日見つけた深皿で水を飲みナップサックから果物を取り出して食べながら荷物点検をする。未知の果物だったが美味しかったことをここに残す。
「さてと、そろそろ行くか」
昨日は行けなかったけど今日は大丈夫、天気も良いし。
コンパスを確認する。日本で見たコンパスと形は似ているが書いている文字が違うが、地図と照らし合わせて見方はある程度わかったので問題なし。
置いてたナップサックを背負いあらためて荷車の方を見る。
昨日はあれだったけど今日はもう戻ってくるつもりは無い。だからこれが本当に最後だ。
「昨日も言ったけどありがとう、いってきます」
荷車から地図とコンパスを頼りに歩き出す。
地図に書かれた川と森の場所、そして荷車があったことから森の位置をある程度絞り道を探す。
地図に書かれた森にある道は3本、内2本は山際にあるがここから山は見えない。
この事から俺は探し出しの条件に全て引っかかる1本の道を目的地として進む。希望はある、あとは信じて進むだけだ。
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3時間くらい経過
ナイフでツタや枝を切り落としながらどんどん進む、正直これで合ってるのか不安ではあるが今は進むのみ。
すると目の前に日光が差し込む少し開けた場所が現れる。
(もしかして!)と期待を胸に小走りでその開けた場所に向かう、するとそこは下に5mくらいの高さがある崖、そしてその下にはパッと見でわかるほどに人の手が加えられた道が広がっていたのだ!
興奮と安堵が訪れる、こっち向きに歩いてて良かった〜
とりあえず降りれるところ探さなきゃ、そう考え地図で村のある方向に向かって崖際を歩いて行く。
10分ほど歩いただろうか、明らかに森の中から聞こえるには場違いな金属音が聞こえてくる。
人が居る!その気持ちが昂り先走り、何故森の中で金属音が聞こえてくるのかを考えることが出来なかった。
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???side
さっきまでいた荷車と同じような物の周りを8人ほどが囲い、荷車を守る2人と切りあっており、荷車には身を縮めた母子が乗っている。
「グッ!!また増援か!一体何人いるんだ!」
左手に剣、右手に盾を持った青髪の少年が剣を弾き、相手の足を切り飛ばしてそう愚痴をこぼす。
「動き消極的になった、残りは多くないと思う」
両手にダガーを持ち、フードによって見た目から性別が分からない者が攻撃を躱し首を掻っ切る。
一見2人の方が優勢に見えるがよく見ればどっちも肩で息をしており服もボロボロ。
それに比べて荷車を襲っている方は無傷が3名と大小怪我をしてる者が6名、地面に転がっている死体は10を超えておりどれだけ長く戦っているか目に見える。
「シェアァ!!」
叫び声と共に剣が振り下ろされる。
ザシュッ、そんな音とともに少年の背中が血しぶきと共に切られ、少年は反射で剣を振るい首を跳ねる。
「ウッ!?クッ…!!」ガシャン!!
「レオンッ!!」
フードの者の声が木霊する。
レオンと呼ばれた少年は背中を切られ戦闘困難、フードの者一人では戦力差は絶望的である。
荷車の中、祈るように身を縮める母子。藁にもすがる思いで祈る子供が荷車の隙間から外を見た時、崖の上にいる人形を見つけるのだった。
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ユウヤside
(やべぇ所にかち合っちまった!!)
俺は衝撃でその場から動くことが出来ず棒立ちになっていた、気づかれなかったのは幸運だろう。
親子がいるのが見える荷車を守るように戦ってる2人と山賊?ぽい人が9人、それも守ってる2人が劣勢に見える。
どうする?いやどうすると言っても俺に戦う力も助ける力なんてない、それどころか殴り合いのケンカすらしたことが無い。
ただ死体や血を見ても冷静なのは良かった、人形だからなのか?前の俺ならきっとこの光景で吐いていた。
その時ザシュッと言う音とともに青髪の人が切られ倒れる。
(ヤバい!!どうする?助ける?いや力が無い、援護は?石を投げるくらいしかできない、どうすればいい、見捨てるしかないのか?)
ただ眺めることしか出来ない無力感の中、突如頭の中に声が聞こえてくる。
『おや、悩んで居るようだな』
と何故か安心感のある声が聞こえてくるのだった。




