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ep1 魔術師ハーメルン

初めて作品を投稿します。駄文ですがご容赦ください。(アドバイスは受け付けています)投稿の頻度は遅くなると思いますが、是非楽しんでいただけると幸いです。

 『魔法』、それは人知を超えた力。争いの火種。二千年前に確かに存在したその力を人々は求め、争い、そして滅んだ。争いは天を裂き、大地が隔たれ、人々は集まり対立し多くの血が流れた。だが人々はそれでもなお魔法を求め、果てには魔法の模倣、『魔術』を生み出した。魔法が超自然的な奇跡だとすれば、魔術は理論に基づいて作られた人工的な奇跡。魔法の猿真似、愚かな産物。人々は魔術を千年かけて発展させ、もはや魔法はおとぎ話の存在になっていた。魔術とは、人間の欲深さが生んだ失敗の一つだった。


「魔術なんて糞くらえだ!」

 

 そしてここに、そんな魔術を嫌い、失われた魔法を求める一人の魔術師が居た。名はハーメルン。世界最高峰の魔術師の称号『魔法使い(ウィザード)』を持ち、ありとあらゆる魔術に精通した、正真正銘の世界トップレベルの魔術師の男。街を一度歩けばサインを求められ、新米の魔術師に弟子入りをせがまれる。しかし彼は心底魔法使い(ウィザード)という称号を嫌っていた。それは___


「何が魔法使い(ウィザード)だ!魔術師と魔法使いを混同させるなこの糞アバズr(自主規制)」

 

____という訳らしい。ハーメルンは魔術師として最高峰に上り詰めながらも、その心は魔法に憑りつかれていた。魔術とは違う、失われた神秘。そのロマンと秘匿性がハーメルンの心をつかんで離さないのだ。


「何が鍵なんだくそっ。どこの文献にも魔法のことなんか書かれてない、、、どこもかしこも魔術魔術魔術魔術!!」

 

 彼のそばにあった花瓶が割れる。床に転がるは魔術の歴史書、魔術師ならだれもが欲しがるグリモワール。

 ハーメルンは辟易していた。彼も初めは魔術が好きだった。日々新しい刺激を受けて魔術を純粋に楽しみ、今や魔法使い(ウィザード)となった。だが彼は気付いてしまった。もう魔術には新しい刺激が無いと。言ってしまえば、ハーメルンは魔術に飽きていたのだ。


「物に当たっちゃ駄目だ、、、そんなことをしても意味が無い。花瓶の中から魔法が出てくるわけでもない」

 

 完全に自暴自棄である。今や魔術という知識の泉はハーメルンの前で枯れ果ててしまい、彼は打ち上げられた魚のように水を求めのたうち回っていた。


「、、、手紙?」

 

 開いていた窓から手紙が投げ込まれる。バサバサと鳥が飛び立つ音、あれは郵便を配達するカラスだ。ハーメルンは床に落ちた手紙を拾い見る。妙に高級感のある紙に、国家公認の封蝋がされている。ハーメルンはその手紙を開けるわけでもなく、湿ってカビの生えた木桶に投げ捨てた。木桶の中には同じような手紙が何通も捨てられていた。


「俺は忙しいんだ、、、かまうな」

 

 ハーメルンは手紙の内容を知っていた。内容は国からの要請、弟子を取るか、アカデミーで教授として働くかの二択を迫るもの。ハーメルンは初めてその手紙を貰った時のことを鮮明に思い出せる。上から目線の文章に、中途半端に整えられた文字、そしてハーメルンの自由を迫害する内容。その一つ一つが、ハーメルンの魔術嫌いをさらに加速させていた。


「俺は自分のために魔術師になったんだ、他人に構ってられるか」


 本来、魔法使い(ウィザード)となったものには国への奉仕が義務付けられる。弟子を取り今まで学んできた魔術の全てを受け継がせるか、魔術師を育成する機関であるアカデミーに教授として最低二年務めるかの二択を選ばされる。しかしハーメルンはそのどちらも拒否した。挙句の果てには国家の命令を無視し、自分の家がある森に引きこもって家の周りにトラップを仕掛けるという実に排他的な態度をとっていた。


「____気分転換でもするか」


 だが問題は無い、魔法使い(ウィザード)の称号を持つ魔術師は他にもいる。唯一神オーリンを崇める光神教を重要視する西のカンゴ神聖共和国に一人。圧倒的な軍事力を誇り、魔術師の育成に力を入れている南のカヴィライア帝国に二人。極寒の地ながらも豊かに発展し、魔術工学の先駆者でもある北のコーデリア王国に一人。そしていくつもの国が合併し円卓とも称される東のロザリア連邦国に彼を含めて二人。そう、ハーメルンがいる国には彼以外にも魔法使い(ウィザード)の称号を持つ魔術師がいるのだ。


「さてと水桶は、、、あったあった」


 埃の被った物置から小綺麗な水桶を取り出し水を入れる。


「皆魔術に頼りすぎなんだ、もっと自分の力で生きないと」


 愚痴を言いながら外に出る。快晴に輝く太陽がハーメルンの肌を焦がす。


「もうこんなに暑いのか、氷を用意しなきゃな」


 水桶から手で水を掬い取り、花壇に撒く。所々枯れているが、この行為こそがハーメルンの日々に確かな彩りを加えていた。


「、、、もう魔術師やめてやろうかな」


 ハーメルンは弱音を吐く。珍しく弱気になっていた。


「もう何年だ?魔法のまの字も分かってない。魔法使い(ウィザード)が聞いて呆れる」


 ハーメルンは自分の肩書と現実のギャップに乾いた笑いを零す。汗が頬を伝い、涙のように地面に落ちる。


「______あら、珍しく弱気ね」


 そこに一つの影が伸びた。背中から聞こえたその声は歴戦の女の雰囲気を感じさせる。しかし不思議だ。この森にはハーメルンが仕掛けたトラップがあったはず。それをこの女は全て突破して今ハーメルンに話しかけている。


「、、、カーミラ」


 それは一つの事柄。人物を指していた。ハーメルンが振り返るとそこには一人の女が立っていた。背が高く、くるくるの長い金髪に、赤い唇、紫に輝くその目がハーメルンをじっと見つめていた。そう、この女こそがロザリア連邦国に所属するハーメルン以外のもう一人の魔法使い(ウィザード)、カーミラ。通称『魅惑の魔女』その人だ。


「久しぶりね、ハーメルン」


「何で来た、お前は弟子の相手で忙しいんじゃないのか?」


「ふふっ久しぶりに会った女性にそれは無いんじゃないかしら?」


「はっお前を今更口説いても気持ち悪いだけだろ」


 ハーメルンは憎まれ口を叩きながらも少し笑っていた。カーミラも然り笑っていた。何が面白いのか疑問に思うのはごく自然な反応だ。魔術師のコミュニケーションは時に独特だ。家の前の猫が死んだと言ったら大笑い、反対に他人の結婚話には悲しみの涙を見せる。極端だが、要するに魔術師には変人が多いということだ。


「、、、で用は?」


「文句を言いに来たのよ、貴方が魔法使い(ウィザード)としての仕事を放棄するから、その仕事が私に回ってきているの」


「それは悪かったな、俺は好き好んで魔法使い(ウィザード)になったわけじゃない」


「だけど貴方は魔法使い(ウィザード)、いつまでも子供ではいられないのよ?」


「、、、分かってるよカーミラ、そんなに不満をぶつけないでくれ」


 ハーメルンとカーミラは同じ場所で育ち、同じタイミングで魔術に出会い、同じ日に魔法使い(ウィザード)になった。言わば幼馴染、好敵手(ライバル)、犬猿の仲、幼い頃はことあるごとに争っていた。


「不満じゃないわ、正論よ。いいかげん弟子を取るか教授になりなさい」


「二年もひよっこの面倒を見るのか?拷問に等しいぞ」


「じゃあ弟子を取る?」


「、、、俺の話聞いてたか?」


 カーミラはその質問に沈黙で返した。ハーメルンは一つため息をつき、水桶を置いて次はスコップを取り出して穴を掘り始めた。


「、、、何してるのよ」


「ごみを捨てるための穴を掘ってる。何週間かして掘り返すと、地中の魔力が混ざっていい肥料になる。お前も入るか?何週間かしたらそのキツイ性格も幾分かマシになるかもしれない」


「相変わらず口が減らないようね。それと、今は魔力じゃなくてマナよ、時代に取り残されてるわね」


「魔力は魔力だ、お前もそんなくだらない時代の流れに身を任せてたらいつか大事なものを見落とすぞ」


「大事なものって?まさか魔法とか言うんじゃないわよね?私を貴方と同じにしないで頂戴」


「勝手に言ってろ、お前にはこのロマンは理解できないよ」


「、、、馬鹿ねほんと」


 カーミラの友人を憂う言葉が虚空に響く。その目はどこか悲しさを帯びていた。ハーメルンはお構いなしに穴を掘り終え、泥の付いたまま家の中に入る。ごみの入った大樽を持ち上げ、それを穴の前に持ってくる。


「それで、俺と口喧嘩するために来たのか?」


 大樽を倒しゴミを穴に流し込む。底にたまっていた腐臭がカーミラの鼻を衝く。


「っ違うわよ。警告しに来たの」


「警告?」


「えぇ、最近この森にドラゴンが巣を作ったのはもう知ってるわよね?」


「あぁ、なるべく刺激しないようにしているがな。この時期のドラゴンは子育てをしているから気性が荒い」


 二か月前。ハーメルンの住む森に赤いドラゴンがやってきた。おそらく子育てに最適だと思ったのだろう。ハーメルンは仕方なく森に仕掛けてあったトラップを一部外し、ドラゴンを刺激しないよう森の西側には近づかないようにしていた。


「ならいいけど、でもそのドラゴンの様子がおかしいのよ」


「おかしい、、、?」


「時折痛みに藻掻いてるような仕草を見せて、咆哮の数も増えてきている」


「、、、冒険者協会にはもう報告したのか?」


「貴方の仕掛けたトラップがあって近づけないらしいわよ?まったく何人に迷惑を掛けてるの」


「、、、考えなかったなそれは」


「おい。まぁとにかく、そのドラゴンを見掛けたら討伐もしくは捕獲して協会に報告を入れなさい。良いわね?」


「はぁ!?なんで俺g「いいわね?」


「、、、分かったよったくめんどくせぇ」


「素直でいいわね。じゃ、ドラゴンの件も伝えたし、私帰る。もう一生ここに来ることは無いでしょうけど」


「口が減らないのはお前もじゃないかったく、、、、また来い」


「、、、えぇ」


 そうして魅惑の魔女は瞬きの間にハーメルンの前から姿を消した。後に残ったのは音の残滓、透き通った女の声の名残だけだった。カーミラが手紙を出せばいいところをわざわざハーメルンの家まで来て葛藤しながらも話しかけたことはハーメルンにはお見通しだったが、彼はあえて黙っていた。彼は名残惜しさを感じながらも、ごみを入れた穴を埋め立てた。


「ドラゴンか」


 スコップと水桶を片付け、服を着替える。そして脳裏にはカーミラの忠告。ドラゴン、獰猛なその牙は特に夜に輝く。ハーメルンは一応の警戒をしながらも昼食を食べ、再び魔法の痕跡が無いか探し始めた。


「、、、」


 そして夜。ハーメルンが外を確認すると、大きな満月が大地を照らしていた。こんなきれいな満月は珍しい。ハーメルンは手を止めてしばらく魅入ってしまう。


「満月草が採れるかもな」


 そう思い立ちローブを着て外に出る。昼間とは打って変わって肌寒い風が駆け抜ける。満月草とは満月の夜にだけ花を咲かせる植物であり、魔術の触媒として利用される貴重な素材でもある。在庫が減っていることを覚えていたハーメルンはここで一束程満月草を手に入れておこうと考えていた。


「っと、採集ポイントは確か西の、、、」


 西へと向かう。採集ポイントに近づくに連れて木々に大きな爪痕が目立ち始める。ドラゴンのものだった。


「カーミラの言ってた通りだな。こりゃあちょっとおかしい」


 無精髭を手で弄びながら観察する。爪痕はどうやら獲物を追いかけてできた傷ではない様だった。どちらかと言うと所構わず暴れた印象を受ける。


「早めに採集して帰るか」


 ハーメルンは再び採集ポイントに足を進める。この広い森で一匹のドラゴンに遭遇する確率はかなり低い、そう踏んでいた。だがさらに西に向かうに連れて、爪痕が残されている木々の生えている感覚が短くなっていく。


「、、、血の匂い」


 森の暗い静寂。一歩闇に足を踏み入れれば引きずり込まれてしまうような雰囲気が漂う。


グゥルルルル____


「、、、、!」


 唸り声。ただの獣ではない血に飢えた唸り声。ハーメルンは杖を構え周囲を警戒する。


バキバキッ!!


 木が倒れる音、枝が折れる音が響く。集中し気配を探ろうとしたその瞬間。


グウ”ォォッ!!!!


 重い咆哮と共に深紅の鱗を持ったドラゴンがその鋭い牙をもってハーメルンに襲い掛かった。


「やっぱりか!____鉄壁よ!」


 その言葉と共に地面が隆起し、鉄の壁が起き上がる。それはドラゴンの攻撃を受け止めたがすぐに砕け散った。


「詠唱が足りないか、だが逃げれた」


グウ”ォォッ!!!!


 ドラゴンの咆哮が肩にのしかかる。その声は悲痛に満ちており、カーミラの痛みにもがいているという言葉に一致する。そしてその声はやがて怒りへと変わり、目の前にいる矮小な人間に向けられようとしていた。


「八つ当たりか、とんだストレス解消法があったもんだな_____求めるは炎、唸れや豪炎。その力の一端を見せよ」


 詠唱と共に魔法陣が正方形の形にドラゴンを囲む。そして一斉に炎が吹き荒れた。ドラゴンの体が炎で包まれる。


グウ”ォォッ!!!!


 しかし効いていない。あの深紅の鱗が炎を弾いている。ドラゴンは更に怒りを燃え上がらせ、その口にブレスの予兆が宿る。


「っ______求めるは大地、建てや堅牢。その力の一端を見せよ!」


 巨大な土の壁が立ち上がる。ドラゴンの口からブレスが放たれ激突する。


「、、、!」


 土の壁にヒビが入る。長くは保たないことは一目瞭然だった。


「____求めるは水、穿てや槍。その力の一端を見せよ」


 だが想定内だった。空中に水の槍が浮かび上がり、土の壁を貫きブレスを掻き分けドラゴンへと一直線に飛んでいく。


グウ”ォォッ!!!!


 水槍がドラゴンの喉を貫通する。土壁は限界を迎えボロボロと崩れ始める。そしてハーメルン見やるとそこには血を噴き出し力なく倒れるドラゴンが居た。お腹は若干膨らんでおり、子供を孕んでいることが分かった。


「許せよ、、、これもまた運命だ」


 ドラゴンは息をしなくなった。これは母親が陣痛に苦しんだだけなのか。それとも別の理由があるのか。思い返せばあれほどの暴れようは陣痛にしては大袈裟だった。ハーメルンはドラゴンの腹を見つめる。


「、、、あれは!」


 そして見つけた。ドラゴンの腹の中腹部分。僅かに出っ張っている。ドラゴンの子供ではない、近づいてみてみれば、それは人間の形をしていた。


「っ!?、、、なんだこれ」


 ハーメルンは懐から解体用ナイフを取りだし、ドラゴンの腹を切り裂く。何層にも重なる筋肉の膜を切り裂き、ようやく出っ張りの正体に辿り着くと、そこには衝撃の光景があった。


「人間の、、、女、、、!?」


 少女だった。人間の少女だった。喰われたわけではない、この少女はドラゴンの子宮の中にいた。


「ドラゴンが、、、人間を孕んだ?」


 あり得ない。それはだれしも思う。だが実際にこのドラゴンは人間の少女を身籠っていた。


「_____息がある」


 驚いた。この少女はまだ生きていた。微かに胸が上下し、呼吸していた。ハーメルンは腰を抜かしそうになったがハッと我に返り、満月草のことなど忘れて少女を抱え家に戻った。

 これが現代日本からドラゴンの腹の中に転生し、後に弟子となる『柊 燕』(ヒイラギ ツバメ)との出会いだった。

今回の話を最後まで読んでいただき感謝します。今後も続きを投稿していこうと思っているので、是非読んでいただけると幸いです。

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