彼女視点
“彼と終わったらしい” とあっけらかんと言うわたしに、親友は呆れ顔をした。
「 “終わったらしい” って何よ」
「連絡とらなくなって半年くらい経つから」
「いや、好きなら自分から連絡しなさいよ」
「わたしは別れたかったんだよね。
今の職場辞めて他道府県に引っ越すし」
「都外に出るのは判ったけど、もうちょっと絞りなさいよ。
てか、どこに越すの?」
「言わなーい☆」
「いや、言いなさいよ……塀の中でお務めってわけでもないでしょうに」
「いや、もうあんたと会うこともないからさ。教えても意味ない。
あ、スマホも解約するから」
「え、あたしあんたに何かしたっけ?
なんでそこまで徹底的に断絶すんの?」
「理由は御想像にお任せします☆
――さて、それじゃ、もう行くわ。元気でね」
「ちょ――!?」
わたしは伝票を取り上げ、清算して店を出た。
「さて……」
まあ、あの子に知られたところで、あの子は彼のことは何一つ知らないから、かまわないっちゃかまわなかったんだけどね。どこでどんな繋がりがあるか判らないから、本当に隠したいことは何一つ洩らさないに限る。知り合いの知り合い……って辿れば、最大6人で相手に辿り着くというしね。『秘密と権力は共有するものではない』が持論のわたしとしては、相手が誰であろうが明かす気はない。
「――あと一年、かぁ」
正確には “長くて” あと一年。それがわたしに許された時間。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
告知されたのは、あのお涙頂戴な悲恋映画を観て、暫く後のことだった。 “長くて二年ほどだ” と。
若いせいで進行が早くて、手に負えないと言われた。
“どうやって別れるかな~” と悩んでたけど、ちょうど好い具合に彼の仕事が忙しくなって、自然消滅に持ち込めた。
相手に暴言吐いて別れたら『憎悪の対象』として、相手の記憶に残っちゃうものね。一番後腐れのない別れ方ができてよかったわ。
それが愛であれ、憎であれ。
――未練なんかひと欠片も残させない。
・❖・◇◈◇・❖・
ねえ。
わたしは今でも愛してるよ。
きっと最期まで――ううん、死んでも、あなたを愛してるよ。
だからあなたはわたしを忘れて、幸せになってね。
“見守ってるから” なんて言わない。だって、わたしはその資格を、権利を、自ら手放した。
――でも、愛する人に “幸せでいてほしい” と希うくらいは、かまわないでしょう?
―― 了 ――




