森の中の声
枝がますます近くできしみ始めた。タクミは息をひそめ、岩陰に身を潜めた。
魔法少女は彼にぴったりと寄り添い、唇が彼の首に触れそうなほどだった。
――創造主さま…… ――彼女はささやいた。血の気が引くような笑みを浮かべながら――誰が来ようと関係ないわ。あなたを傷つけようとする者がいれば……バラバラにしてあげる。
その瞳は、甘さと狂気が入り混じった危うい輝きを放っていた。タクミはごくりと唾を飲み込んだ。
「お、おい……ちょっと落ち着けよ……」
彼女は首をかしげた。
「落ち着け? だめよ。私はあなたのものなんでしょう? 他の誰にも、あなたに触れる権利なんてないの。」
ゴールキーパーが手袋をパンッと音を立てて叩きながら割り込んできた。
「おいおい! そういうイチャつきは後にしな! 誰か来たら、俺が止めてやるよ! 顔面ででもな!」
彼はしゃがみ込み、まるで見えないゴールの前に立つように構えた。目が光り、まるで捕食者のようだった。
タクミは信じられないという目で彼を見た。
ゴールキーパーは腹の底から笑った。
その時、茂みがガサリと動いた。三人の村人が、質素なローブをまとって薪を担ぎながら現れた。
しゃがんでいたメカを目にした瞬間、彼らは悲鳴を上げた。
「ゴーレムだ!? 逃げろ!」
タクミは慌てて立ち上がった。
「ま、待って! 僕たちは敵じゃない!」
魔法少女が一歩前に出る。だが、その指はナイフを撫でるかのように、杖を優しくなぞっていた。
「創造主さま、命令さえくれれば……誰も、あなたに手出しできなくなるわ。」
タクミは身震いした。彼は、さっきまでいた世界と同じような不正を、ここでも繰り返したくなかった。
「だめだ! 誰にも手を出すな!」
張り詰めた空気があたりを包んだ。
村人たちは恐怖に目を見開いたまま動かず、メカは唸り声をあげて命令を待ち、
ゴールキーパーは野獣のような笑みで手袋を鳴らし続け、
魔法少女はあの狂信的な瞳で、ただ彼を見つめていた。
タクミは手を挙げ、言葉を探して必死に叫んだ。
「僕……僕にも、ここで何をすべきか分からない。でも、誰も傷つけたくないんだ。」
森に静寂が訪れた。
村人たちは戸惑いながらも、その場に留まった。
そしてタクミは悟った。
この新しい世界で、自分にとって最も恐ろしい存在は――
怪物ではなく、自らが創り出してしまった存在たちだった。
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