夏祭りはヤマト村で 16
いやぁ~、なんであんなでっかいのが何の脈絡もなくいきなり上空に現れるんだろうね。
こんなの直撃したら消滅しちゃいますよ、もうこれで魔王軍も王都もぶっ潰して世界征服しちゃえばいいと思うの
「かえでがぶっ放したぞ!!」
「結界班はどうした!?」
「落ち着け、第二弾を放たれる前にかえで様を諌めるのだ」
皆必死に駆け回ってるけど誰かこの子をちゃんと教育しなかったのかって思う
「す、すみませんでしたー!!お、俺が悪かったから許してくれぇぇ」
多分ヤマト村でも10位以内に入るであろう手練れのヨウさんが土下座して平謝りする始末。
それにしても隕石ってゆっくり落ちて来るように見えるんですね、それが余計に怖いっす。
ってこんなの落とされたら洒落にならんから俺も対応するか
「一発ドギツイのかまして破壊してやる。幸い大きさは絶望的ではない筈、砕け散ったら後任せるぜ!」
「俺の技は隕石には向かないから見学しとくわ」
トウ君め、いや的確な判断なのだろう
「任せな、俺の風で吹き飛ばしてやる」
レン君が魅せてくれるようだ
「じゃあ俺も粉々にするの手伝うよ」
ではみーくん、行きます
「秘奥義、天帝波」
うわぁ、押し切れない…トウ君のお天道様は押し切れたのに。
こうなったらさらにティメッツぱわーを重ねてやる
「砕けやがれぇぇぇ」
よし!だがあともう一息…イメージ的にはアレだ、ライオウが放った凶獣砲のような突破力が欲しいので瞬間的にもっと集中させたのを放つ感じで
「頑張れ!いけるぞ」
「俺もやるぜ」
他の連中も各々技を放ち出した。斬撃のような物から爆発する物など多種多様な技が飛び交う。
一瞬の隙を見て凶獣砲を参考にした感じのを放ってみた
「やった!砕けだぞ」
見事に砕け散らせた
「俺の出番だな、風ファイブ!」
何それ?物凄い突風が砕けた隕石を巻き上げて行く
「更に砕くよ、チャーハン!」
そうだった、シン君の技名は料理名だった。
何か締まらないが名前とは裏腹にとんでもない雷撃が更に隕石を砕く
「後は任せな!大畳み」
あ、多分この人が空間を畳んじゃう人だ
「よぉーし、取りこぼしは俺が飛ばしておくぜ!風ファイブ一線」
レン君が人の居ない山の方向に残存物を吹っ飛ばして何とか事なき得たが結構近い所にやったのでちょっと心配、まあヤマト村の人ならなんとか出来るか…な?
それにしても恐ろしいな、ヤマト村の人達って
「か、かえで様…慈悲を、御慈悲おぉぉ〜」
ヨウさん…何とも情けない姿のおっさんがそこに居た
「もう!今回はこれで勘弁してあげるけど今度あんまり変な事言ったら加減しないからね」
何と!?加減してたのか?それにしてもアレだ、やはりこの村の感覚は少しおかしいのだろう。
村消滅の危機に陥れた筈のかえでさんを責める人は誰一人として居ない。
きっと何か我々には知らないルール的な物があるのだろう、でなきゃこんな事やっててアレだが良識ある真面目な筈のかえでさんが全くやらかした感を出さない理由が分からんもの
「いやぁ……かえで様恐ろしいっすわ〜、先程は失礼致しました」
とりあえず謝っておく
「ちょ、ちょっとやめてよ、かえで様って。みーは何もしてないだろ〜?そんな風に言われるとなんか嫌だよぉ」
なんかこんなやり取りをたまにするなぁ、なんて思ってたら何か落ちてきた
「うおっ!?あぶねぇ!おいレン、テメェ取り逃がしてるじゃねーかよ」
「思ったより上空に行っちまったのがあったか」
まだ隕石の残骸が落ちて来るようだ
「ここはみーサーチで探るか。思ったよりあるなぁ……ってゆっこさんあぶねぇ!!」
みーパンチで格好よくゆっこさんを助ける俺……
「きゃっ!?あ、ありが」
「痛ってぇぇぇぇ!気、込めるの忘れたぁぁぁ」
尖った破片を思いっきりぶん殴ってしまった
「だ、大丈夫?」
いかん、まだ落ちてくるぞ。一か八か、他の人もやれる人は続いてくれ
「みー結界」
おお!?遂に結界を成功させた!ちゃんと落下物だけ抑えてる
「後は任せとけ、結界!」
俺のなんかより立派で凄そうな結界を続いて放ってくれた。早く手を何とかせねば
「大丈夫みー?ちょっと見せてみ」
そう言うとかえでさんが回復を掛けてくれた
「かえでさん回復もプロ級なんすね、流石っす」
「凄いだろぉ、まあ私の回復は至近距離じゃないと他人には使えないんだけどね」
「にしても遂に結界を使えるようになりましたよ!見ました?ちゃんと岩弾いたよ」
これでリリィさんに頼ることなく結界が使えるようになったぜ
「アンタ使えなかったの?ライブの時使ってたじゃん」
「アレは音だけ遮断するっていう何とも使い勝手の悪いものだったのさ」
「それはそれで何となく難易度高い気がするけど」
「それより他の場所に隕石の残骸が落ちたりしてないかな?」
あんなの直撃したら死人が出ますぜ
「そりゃ大丈夫だろ?かえでさんの魔力が籠もってるから上空にある限りはここらへんにしか落ちて来ねーよ」
そういう物なのか
一段落して打ち上げを再開して落ち着いた頃、せいら兄妹とリリィさんが現れた
「見てたぞ〜、かえでの隕石が発動してたな。みーがオイタでもしちまったか?」
何故俺になる?かえでさんとはそれなりに仲良くしてる筈
「違うよせいらさん、この飲んだくれの剣士が私にいやらしい事しようとしたからお仕置きしたんだよ」
「何だと?……アレだな、奥さんに報告しておこう」
「ま、待ってくれさい、せいら嬢。別に変な事する気は無かったんだぜ、みーとかえでがいちゃこらしたそうだったから人気のない所へだなぁ」
「やっぱりみーじゃねーか」
「何でそうなるんだよ!?そんな感じ全く無かったじゃねーか!」
俺を巻き込まないで下さい
そんなこんなでせいらさん達も交えて打ち上げは続いた。
個人差はあれど酒が進み若い人達は酔い潰れだして大人な時間になって来たので少し真面目な話を村長さんとしようと思う。
するとマッさんが真面目なトーンで話し掛けてきた
「みーさんにはちゃんと御礼言わなきゃでしたね。家の娘を立派な冒険者にしてくれてありがとうございます。ナミも凄く感謝してましたよ、まゆもが14歳にして家に大金を入れてくれたんですからね」
その事か
「お気になさらず、むしろ助けられてるしそもそもまゆもが居なきゃ今の俺は無かったですからね。それに、前も言ったように俺は生前はしょーもないヤローだったからその辺をキチンとしたいってだけの自己満ですから」
「せいらも感謝してましたよ。まさかこんなすぐ偉業を達成するなんて思ってもみなかったですよ」
そうだ、せっかくなのでマッさんも交えて村長に相談だ
「ちょっと村長に相談があるんだけど良かったら一緒に来てもらっても良い?」
「ええ、大丈夫ですよ。私に出来ることなら」
ということで村長と話す事に
「どうしたみー?改まって」
「実は…相談がありまして。まず先に恩返しという事でヤマト村にお金を入れようと思うので受け取って頂けたらなと」
「そんな他人行儀な事する事はないぞ?だがその方が楽になるっていうならありがたく受け取っておこう」
こういうやり取りがスムーズなのはヤマト村の人達の良い所だ
「ヤマト村の人達無くして俺の偉業というか俺の今は無かったですからね。然るべき対価という事で、3000万ほどお渡しします」
すると後ろから来てたせいらさんが割って入ってきた
「お前何言ってやがる!もう少しお金の使い方考えろや、それにそんな他人行儀な事言ってんじゃねーよ!」
ここで静止を施す村長。流石村長だけの事はありそれには素直に従うせいらさん
「……何か他にも理由があるのだろう?」
ここで俺は先日の王都でのやり取りを話して俺というかクリスの立ち位置の話もしておく
「そんな話だったのか、それで?それが3000万とどう繫がってくるんだ?」
「いやぁ、俺も何ていうかその……大臣の前で格好つけちゃって俺が守るからこいつ等が先にやられる事はないとか言っちゃったんすよ。
随分カッコいい事言っちゃったって恥ずかしかったりするんだけど問題はクリスの家族と、俺が先に死んだ場合の後の事なんすよね〜。
俺がくたばったらその限りではないって話はしたけど信用出来るかってなると微妙じゃないですか?それに、そうでなくともクリスの家族は守られないなんて事になったら困るし。
格好つけちゃった手前それを放置するのはちょっと嫌なんですよね。
なのでそういう事がある際にはクリスとクリスの家族の保護をヤマト村の方でお願いしたいなっていう意味での3000万です」
「そういう事か、あいわかった。細かい事は抜きじゃ、その通り引き受けよう。しれっと格好つけるのはヤマト村の者の嗜み、それを成就させるのはヤマト村の者の使命でもあるからの」
「全く、バカだなお前は」
「みーもしれっとやるのが身についてきたね〜」
かえでさんとゆっこさんも話を聞いていたようだ。
いつの間に!?年齢の話はしてないよな?
「だって、かっこつけちゃったんだよぉぉ〜」
俺も酔い気味なのか謎のテンションになってしまってる
「ではこの話はおしまいじゃ。そろそろおひらきする頃合いじゃのう」
こうして神輿の打ち上げは終わり、せいら家に戻る流れに
「みーさん、いえ、みー様!良かったら私の店も繁盛させて下さい」
湯上がり美人2人を扇風機で乾かしてるとリリィさんがまた突拍子も無い事を言い出した
「なんすかいきなり?」
また手を握り上目遣いで……これはアカンやつだ。断ってもしがみついて来るヤツだ
「遠目で観察してましたよ、屋台であんな繁盛させるなんて凄いですぅ。私にもその真髄を教えて下さい!」
見られてたんですね。でもそれはちょっとね、物を売るっていうのはそう都合良くはいかないものだ。
ハッキリ言って薬なんて全く分からない俺はどうやればいいのかなんて想像もつかない。
売るための最低限のノウハウは言えるにしてもあんな感じの繁盛を期待されてもそれは無理というもの
「物が違いますからね〜、ちょっとしたノウハウならアドバイスは出来ますがあんな繁盛はちょっと無理がありますよ。薬ってそういう物でも無いでしょうし」
「そうですよね。でも、それでも何かご教示願えたらと思いまして。私はあんなふうに口は回らないですし前にみーさんが言ってた売れ筋がどうとかもピンと来ないですし」
そうなのだ、この人の店は用がある人しか来ないので売れ筋が万人受けする物とかいう事情ではないのだ
「今度改めて見させて貰いますよ、その時にまた作戦会議としましょう。それにリリィさんはトークでどうこうするタイプでは無いので俺を参考にはしないほうが良いですよ、持ち味を活かしましょう」
うんうんと頷きメモを取るリリィさん。この人は凄く勤勉なのだが、回りが見えなくなる程のめり込むから気をつけないとだ
「おいおい、今度は家でリリィ様相手にいちゃつくか。本当に節操のない野郎だぜ」
さっきから謂れのない無節操男にされまくってるな俺。
悪いが俺はそこでずっと言われっぱなしな程大人しくないぜ?
「そうやってすぐ僕を無節操な男に仕立てやがって〜」
抵抗しようとするとその前にリリィさんが反応した
「す、すみません。つい話に熱中してしまい手を握ってしまってました」
リリィさんがそう言って手を離す、なるほど熱中度が上がるとそんな感じなのか。
でもこの人は断るとその手を離そうとしなくなるわで面倒くさいのを俺は知ってる。
リリィさんなりの交渉術なのだろう
「リリィ様は何も悪くないぜ、まあ今日はお前も色々大変だったろうからこの辺で勘弁してやるか」
あら、やっぱりせいらさんが何か大人しくなってる気がする。
それにしても俺もどっと疲れが出て来たからそろそろ寝ようかね
「せいらさんとぉ、リリィさんがぁ、おふとぅんになってくれると嬉しいみーくんなのでぇす」
ちょっとふざけてみた
「おふとぅん……お布団ですか?それは一体どうやって…」
「あんまりバカな事言ってるとしまいにゃ言う通りにやっちまうぞ?」
願ってもないです
「ま、まさか私達の体がお布団代わりになってみーさんを覆う……と、そういう事ですか?」
顔を赤くしながらわざわざ解説しちゃうリリィさん。
改めて言われるとなんか恥ずかしいのでやめて下さい
「安心しなよリリィ様、このヘタレは口だけだからな。それにいざって時は私がキチンとお守りするぜ」
「せいらさんは椅子とかテーブルね」
俺は何を言ってるのだろう
「くっ……まさかの家具扱いなのか?なんて鬼畜なんだ…やはりこの男だけは捨て置けん。だが椅子やテーブルとはどうするんだ?何をやらされるんだ?」
せいらさんのスイッチが入ってしまったようだ
「せ、せいらさん?」
「椅子にしてもテーブルにしても動いたら駄目なのでぇす。それは何されたとしても、動いたら駄目なのです」
「み、みーさんも何を言ってるんですか?」
本当何を言ってるんでしょうね
「あれか?何されても物のように動くことは許されず、お前等が何してようと微動だにせずただ見てるだけ……何たる屈辱……この鬼畜めが!何でそんな事ばっかり思い付くんだ」
「ええっと、私は覆い被されば良いのですか?」
ちょっと待て、まさか本気でやる気?リリィさんは本気でやりだしそうで怖いんだけど
「いや、冗談ですからね?本気で覆い被さられたらもう色々大変な事に…多分俺剥がれなくなるぜ」
「剥がれなくなっちゃうんですね、なんて冗談ですよ。みーさんもあんまり変な事言っちゃ駄目ですよ」
「リリィ様、私に覆い被さってはくれないだろうか?」
この人は何言ってるのか?
「そ、それはちょっと…昨日も夜中一緒に寝ようとしてましたけど季節的には暑いですし」
この変態さんは色々持て余してるんですね
「そ、それは憧れのリリィ様と一緒に寝たくてだなぁ、他意は無いぞ!さ、さあそろそろ寝るか。それじゃあおやすみ、みーもちゃんと休んどけよ」
リリィさんが覆い被さる……夢みたいだな




