罰ゲームはハードル高くて 10
「鉄の扇を武器にしたい」
「何言ってるのこの男は?このジメジメで頭までやられちゃったようだねぇ。メロニィ、みーくんの頭回復出来そう?」
「やってみますね」
なんて言い草だろう、俺は生前に少しカッコいいなぁと思っていた鉄の扇みたいな武器が欲しいと思っただけなのに。
俺の想いを否定するなんて酷いじゃないか。あ、回復魔法気持ちいい
「強力なのを掛けてみましたがどうですかね?」
「鉄の扇、みたいな感じのが、欲しいんじゃぁぁ!」
「駄目だったか…ほらみーくん、良い子だから飲み物取って来てねぇ」
「アチキはおやつぼぅぅん」
「あ、みーさんついでに今日の晩御飯作るの変わってもらっても良いですか?」
コイツ等、メロニィもすっかり慣れたのか最初はオン・オフキッチリしてるだけの子だと思ってたけどただのグータラっ子になって来たな。
それもこれも連日のこの雨のせいだ!これは確かに人を駄目にする奴だな。
とりあえず言う通りに飲み物やおやつを持って来る俺、晩飯何にしようかなぁ。
だがコイツ等と違って俺は実はそんなに怠けては居られないのだ。
アレです、もう2週間を切ってるがライブが控えているのです。
なので弾き語りの練習を密かに進めているのだ。
そう、密かに。俺もただ遊んでる訳ではない、ちゃんと魔法も昇華させたりしていて、前に失敗した結界魔法を何とかモノにしようと頑張った結果、何の付与もない結界だけは問題無く出せる様になった。
何を寄せ付けないかは不明の皆素通りで無意味っぽい結界です。
だがこれに遮音機能を付与する事には成功した。
なので俺の部屋は実は完全防音になってたりする。この結界の良い所は外からの音はちゃんと聞こえるという点で、中の音は良い感じに音が反響する訳だがこれってもしかしてライブの時にデカいの張れば良い感じの音を演出出来るのではないだろうかと。
そんな事から皆にはバレずにギターの練習が出来るようになったのだ。
これはかなり画期的な技術です。何せジェノサイダーズ出陣の時、家から音もなく抜け出す事が出来るという方法にも使えるのだ。
そう言えばこれも憧れだったんだけど…もしまかり間違ってライブが大盛り上がりなんてなったら……水を撒きたいです。
ギターを弾きながらだから難しいけど魔法なら何とかなる気がする、まゆもの水龍さんはちょっと規模がヤバいので例外だとして、良い手はないか…多分そんなのは使うこと無く終わるのは分かってるけど、とりあえずリリィさんに聞いてみるか。
あの人なら水を放水するように出す魔法とか知ってそうだし。
こういうのは実際に見たほうが遥かに会得しやすかったりすると聞く、なので明日にでもリリィさんに会いに行きつつ、ついでに例の店も寄ったり、鉄の扇が存在するのか見に行ったりするかな
翌日、鉄の扇を探しに行くと言い出掛けようとしたらまた頭に回復魔法を掛けられた。無礼な奴等め
という事でまずは武器屋や鍛冶屋なんかに行ってみたが武器になるレベルの扇なんて作れないとの事だ。
ただの鉄の棒を持った方が早いなんて言い出す始末。
そんなに無茶振りなのかなと不安になりつつ今度はリリィさんの店へ
「いらっしゃいませ、あら、みーさんじゃないですか。雨の中どうかしましたか?」
まずはヤマト村の祭りの日程を伝え、当日一緒に行く段取りを話しておいた
「ふふ、それでしたら既に皆さんから聞いてますよ。ライブ楽しみにしてます」
俺の知らぬ間に皆ここに遊びに来てたか。それにしてもライブの事まで…そうだ、水の魔法の事も聞いてみよう
「こんな感じですかね?」
ドアを開けて軽く放ってくれた。そうそう、そんな感じ
「これは魔法使いが習得出来る魔法の一種でしてウォーターっていいます」
そのままだな、確かエリサさんが使ってたのがハイファイヤーだから…この次はハイウォーターになるのかな?
「これってすぐに出来そうですかね?」
すっかり忘れてたが俺の分類はフリーランス、言い方を悪くすれば無職なのでその辺は完全にセンスになってしまうようだ
「みーさんの場合、自ら編み出した魔法がかなり癖の強い部分が多いので意外とてこずるかもしれないですね、そうだ!もし一時的に必要とかでしたら魔石に込めておきますよ」
なんというか継続してそれなりな量を放水して、それを何回か繰り返したいみたいなニュアンスで伝えみた
「そういう感じですね、それでしたら……」
出してきたのは高魔石だった。これってかなり高級だった気がするが…何故この人はこんなのをポンポン出す程持ってるのだろう
「今なら割引価格です」
ちゃっかりしてやがる、でも商いという点では良い事だ
「んじゃ後はこの寝起きスッキリのお薬も」
「ありがとうございます。ウォーターの魔法込めときますね」
「ありがとうございます。ではまた、ヤマト村の祭りの前に来る気もします」
「ふふ、お待ちしております。雨なので気を付けて……と、そうだみーさん。今度ヤマト村の祭りが済みましたら例のアレをまたよろしいですか」
「アレ…ですね。前にゼストさんが言ってたやつですか?」
「そうです、久し振りに私達の活躍を世間にお見せしましょう。アレでしたら今度はみーさんがジェノサイドしても良いんですよ!」
この子は何言ってるのだろうか。かなりウキウキそうだがクリス視点だとジェノサイダーズは正義の味方なんて微塵も感じてない訳だがそれを伝えるのは酷か…リリィさん的には義賊のノリだからなぁ
「ジェノサイドはリリィさんの担当ですからね、祭りが終わったらやりますか。それではまた」
リリィさんの店を後に今度は例の店へ
「お疲れ様です」
「顔出して頂きありがとうございます」
その顔出しただけでお礼はやめて欲しいな、それとなくガントさんに言っておこう。
そういえば今日はガントさんは休みか、ティッツ君も休みのようだな。
なるほど、異動で人員が変わって来るから今の内にそれとなく初期メンバーが休みでも問題無くやれるように慣れとく的な感じですね、ちゃんと考えてるねぇ
「あ、みーさんちょっと良いッスか?」
ルーミさんに呼ばれ裏に行くと話は当然、時期店長の件だった。遂に伝わったか
「正直管理してるだけって内容でしたら問題無く出来るとは思うんですけど、私って今いる皆と見知った仲ではありますけど直接同じ所に居たとかじゃ無いですし歳だって上じゃないから周りが納得するか不安なんですよね〜」
「それは微妙に悩みどころだね。でもその辺を悩める君なら多分上手くやってけると思うよ。
業務内容に問題は無いって前提の上で上手くやれない人ってのは大体が偉くなったって調子乗っちゃうみたいな所が出ちゃうとかそんなだったりするからね。
ルーミさんは良い感じに脱力感あるから馴染むと思うよ。逆に他のメンバーで舐めてかかって来るなんて事があっても大丈夫なようにティッツ君にも気にかけるようそれとなく言っておくよ」
「そうしてくれると助かるッス。やはりみーさんは大先輩なんすね?」
「なんの事かな?」
なんて話してるとガントさんとティッツ君が来た
「お疲れ様です、みーさん来てらしたんすか?良かったらこれからティッツと軽く飯に行くんですがどうです?」
という事で3人でご飯に行く事になった。どうやら今回の異動の件でガントさんは結構悩んでたっぽい
「分かってるんすよ、これは無茶振りじゃなくて言うなれば出世みたいなもんだってのは。でも恥ずかしい話アッシはこの街にずっと住んでて出た事も無いからなんていうか不安なんすよ。勿論王都はちょくちょく行くんで見知らぬ土地って訳じゃねーんですがね」
言いたい事はわかる。人によるだろうが異動ってのは結構精神的負担がかかるのだ。
せいらさんの計らいで転居は伴わずに済むそうだがガントさんはこの街では結構顔も利くし居心地は良かっただろうから転居が伴わないなら結果的にそんな変わらないというのは分かってたとしても不安なんだろう。
多分今までこういう会社勤めみたいな事やって来なかったのは何となく分かるし
「転居を伴う異動でガントさんが難色を示すなら俺だって止めましたけど今の家から通える体制なら慣れれば気にならなくなるとは思いますよ。
俺も昔似たような経験あった時は結構苦しみましたけど結果的には色々視野が広がって良かったと思ってますからね」
「そういうもんすかね?」
「そうだよ、それにやっぱり新店の店長ってなったらガントさん以外に頼むなんて考えられないですからね。出世して異動というよりは出世してるから異動を頼まれてるっていうのが正しいと思いますよ」
「流石ガントさんっス!俺なんて…こっちの店に居残りですよ。しかも店長はルーミっすよ。いや、ルーミが悪い訳じゃ無いっすけど俺だけ何も変わらないじゃないっすか……そんなに俺って使えなかったっすか?」
そういえばティッツ君視点だとそうなっちゃうか
「バカ、お前は。前にも言ったろ?そういうんじゃねーんだよ」
「今回の人事の件に関しては試験的部分が強いんだよね。ガントさんはこの事業の実務的な所の根本を任されてるから試験的異動とかでは無いけど皆に関しては試験的部分もあるのさ。
だから異動したしないとか店長になったならないが君達に対する評価とかそういう事でも無いんだよ。
確かにルーミは店長に向いてるって見解はあるよ?でもそれは君達じゃ無理って事では無いのよ。ティッツ君の今回の役目はルーミが店長をやった時、その店を上手く回すために自分が何をすれば良いか見極め行動する事さ。
良くする為に必要だと思うならルーミの手助けをするべきだし、ルーミが良からぬ感じなら君が良くする為に動くんだ。こればっかりは後から来た人はどうしても気が引けちゃうだろうから君の役目になって来るよ。
でも皆仲間だってのを忘れちゃいけない、競う事もあるかもだけど敵じゃないって事を皆に知らしめる為にも君が率先して動くのさ」
なんかそれっぽく語ってしまった
「そう…っすよね、敵じゃないんすよね」
「多分君の方が適正があるって判断したらルーミは自分からそれをせいらさんとかに言うと思う」
正直それは分からないけどそういう所はちゃんと見とくようにしよう
「ありがとうございますっス!頑張ってみます」
「この事業はこれからだからね、もっと規模がデカくなったら弱音吐く間もなく店長とかに任命されちゃうようになるかもだよ」
「お前は変な所で小心者だからな、ビビっちまいそうになったら俺には相談しろよ。それを馬鹿にはしねーからよ」
ガントさんは良い感じの兄貴分だな。本当はティッツ君を連れて行きたかっただろうが……これは変に言わないほうがいいか。
ガントさんはその辺の事はもう腹を括ってるっぽいから野暮になりそうだ。
そんな風に色々話してたらかなり遅くなってしまった。
せいらさんとの出会いとか色々面白い話を聞けたので良かったよ
「ご馳走様です!今日は飯付き合ってくれてありがとうごぜぇます。またご一緒させてくだせえ」
仕事じゃないと言葉遣いがいつものガントさんになる。このほうがお似合いだ
「ご馳走様っス!今日はありがとうございますっス!またお食事お供させて下さいっス」
もうすっかり歳上の人扱いされちゃってるなぁ… でも仕事となると仕方ないか。
しかし皆すっかり社会人と言うかなんというか…あんな真面目に取り組むようになるとは最初は思っても見なかった。
……事業内容が人に言えないような事なのが残念でなりません
「おい飲んだくれ、何処で飲んだくれてたのさ」
「1杯だけだよ、ちょっと知り合いと飲んでたのさ」
仕事仲間なんで言えない、友達とか言っときゃ良かったか
「みーさんは結構知り合い多そうですね」
「みーくん知り合いと言われると何気謎なのじゃ」
「そうだねぇ、リリィさんは例外としてみーくんの知り合いって私かまゆもちゃんは大体知ってる筈なんだけどね〜」
なんか探られてないか?
「せいらさんの手伝いで知り合った人達だよ。たまたま彼等がご飯食べるからってんで便乗したのさ」
「では今日は晩御飯要らなかったですか?炒め物作っておいたのですが」
「いや、食べる。別腹ってやつさ」
せっかく作ってくれたので食べようと思ったが…結構なボリュームっすね。
しかし流石若い身体、食べれちゃうもんだ。生前じゃ胃がやられるもの。
それにしても雨ばっかで嫌だなと思ってたらふと気になった事があったので聞いてみた
「こっちの夏ってやっぱり暑いの?」
「暑いよ〜、私はどちらかと言うと冬の方が得意だから夏の暑さは参っちゃうよ」
「私は夏派ですが結構厳しい暑さだと思ってます」
「アチキも夏好きぼぅぅん!暑さは得意にゃのだ」
それ相応には暑いようだ。季節は日本と同じ様な感じなのは嬉しい。
ただ今年は異常気象らしく俺が来た1月でもそんなに寒くは無かった。
最も年末までは寒かったようだが…この世界に温暖化なんてないよね?
季節の話をしていたら気付くと誕生日の話になった。
まゆもは5/5でクリスは本名よろしく12/25、メロニィは10/20だそうだ。
因みにリリィさんは2/10でせいらさんはなんと11/2、俺と同じだった
「せいらさんって俺と同じじゃん」
「「ええ!?」」
なんか凄いミラクルな気がする。一緒にお祝いするか。
クリスがリリィさんの誕生日を聞いてたのは何気にナイスだと思った。
一応、大丈夫だとは思うけど妙齢の女性に歳を聞く、それに準ずる事を聞くのはちょっと遠慮が出てしまうのだ。
そういう話題で自然と聞ければ問題無いんだろうけど、リリィさんとは色々くっちゃべってたけどそういう話の流れは今のところ無かった
「これはその都度パーティーになるわけだから楽しみだぜ」
「みー料理期待してるよ!」
「当事者以外は手伝えよ」
こういう楽しみをちゃんと活かせるようにしていかないとだね。




