持ち家を手に入れて 7
最初に来るのは魔石を動かす重要人物と聞いていたがどういう事だろうか…6人一緒に来やがった。順番というか個々で来るとばかり思ったよ
「せいら様、本日はお招き頂き誠に感謝致します。いやぁ本日も麗しゅうございますなぁ、これはほんのお土産です。お受け取り下さいませ」
なんと?そこそこな大物と聞いた貴族が平身低頭だ。せいらさん…いや、ヤマト村の力か?
「ありがとうございます。本日は存分に楽しんでいらして下さい。こちらの男がみーと言って私の代理を務めます。そしてあちらに居るのが店長のガントと言います、詳しい説明等は彼等が担当してますので聞いてあげて下さい」
せいらさんの敬語はなんか品があるなぁ
「みーと申します、よろしくお願い致します。では詳しい案内をさせて頂きますのでこちらに」
大丈夫かな俺?無礼だったり変だったりしないといいが
一通り説明を受けた貴族達は思ったより真剣に、質問なんかも結構してきた。
こちらもまだ手探りの部分があるので思った所や改善提案等あれば遠慮なく仰ってくれと言って話は進みいよいよ遊びが始まった。
部屋は防音が施されており互いに聞こえるような事はない
「何とかなりましたな、後はどう思ってくれるか」
「俺は使った事無いから分からないけどそんな魅力的な遊びなんすかね」
「俺も興味はあるけど1万5千はちょっとなぁ」
山場の1つを越して各々が一息ついていた。思う事もそれぞれではあるがどうなんだろ、俺やヤマト村の人達にはミラクルヒットだったが存外そんなウケる事でもないのか?もし駄目だったらどうしよう…やばい、今更ながらに緊張が。
この事業が良いスタートを切るにはこの上客たちの反応にかかってるんだ、一歩間違えたらただのキモい魔法だったで終わってしまう。
落ち着け俺、俺がやれるとしたら仮に五分五分位だったとして、それをこちらに傾かせる事位だ
1時間半が過ぎ貴族達が戻って来た
「本日はありがとうございました。アンケートの方を回収させて頂きます。それとよろしければせいらさん紹介のこの店初めてのお客様、是非とも生の声をお聞かせ頂きたいと存じますがよろしいでしょうか?」
ガントさんにも喋って欲しいんだが…無理もないか。多分こういうの慣れて無さそうだし
「うむ、是非とも話させて頂こう」
こうして6人の貴族と俺とガントさん、他2人は小間使い的な感じで話をする事になった。
ルーミさんには片付けやその流れの確認をしてもらってる。思った以上に汚いとかあればそれはあえて放置して皆で周知するよう言ってある
「いや、うむ。いや、あれだ、そのぉ……悪くないな。うむ、悪くないぞ」
「そ、そうですなぁ、悪く、無いですなぁ」
お、これはもしや……コイツ等も……分かる、分かるぜ。俺もだし皆も多分最初はそうだった。思いの外良いんだよ、コレ。
ここは一押して魔石の流通と顧客の幅を広めるチャンスだと見受ける。
身分を問う気はないが上客を逃す手はない。それにこの商売、正直2、3手先迄既に考えられていてその方法として在宅でも何処でも出来るというのがある。
このスライム的な物は時間が来れば勝手に消えるが回転率の関係から魔消しのアイテム、何でも良いのでそういう類いの物を使えば簡単に消えるるようになっている。その時スライム以外の物質は残ってしまうので所定の場所にてこのスライム人形を消してくれれば後は水に流すだけで済むのだ。
貴族相手に王都でこれを捌けるようになれば手間も少なく規模は広がりウハウハという作戦よ。 まだ言ってはいないが当然せいらさんだって色々考えているだろう、なので身分のある者はなるべく顧客にしときたい所。ここは…攻め時だ!
「皆様、恐れながら1つお申し上げたい事がありますがよろしいですか?」
ここで攻め落とす
「なんですかな?代理殿」
「なぁぁぁにを遠慮しておられるのですかぁぁぁ!?」
俺のいきなりの叫びにこの場の全員が驚いた。こういうのはインパクトも大事
「え、遠慮とはいったい?」
「アンケートですよ、アンケート!こんな、こんな上品に感想と要望を一言二言しか書かないなんて無いわ〜、無いですわ〜!これは欲望なんです。もっとありのままを、欲望のままを書くのでぇぇす。ハイやり直し!しかしその前に皆様には特別、この魔法の誕生秘話、悲しみの秘話をお聞き願いたいのですがよろしいですか?」
勢いに圧され一同が頷いた。ただ早口で喋るのではなく緩急も大事、上手くやらねば
「この魔法がここに至るまで昇華させた勇者の名は…よしまそさんといいます。あのヤマト村の村長をして、決して呼び捨てにはせず常に敬意を払う存在です。彼は36歳、小太りで引き籠もりの男です。そう、引き籠もってるのです。最低限の仕事だけこなして……それは何故か?あの御方は4歳からこの技法を身に付け12歳からこの形をより夢いっぱいにするべく着手し始めました。リアルな形成から質感は本来の魔法の適性と合致したので早い年月で会得は出来たそうです。しかし発声や操作に関しては決して適性は無かった。その時点で色々察せますね、さらに使い勝手を良くすべくすぐ消えるようにも着手、その他諸々血の滲むような努力の末、今の形があります」
「た、確かにあれほどの物…そう簡単には出来ませんな」
この程度ではないぞ
「彼は村の女性から何と言われてるかわかりますか?せいらさんからもですが…キモデブと呼ばれております。当然童貞です。悲しいかな1つの偉大な物を得るためには数多の犠牲を出さなければならない、彼はいつしかヤマト村の男共の尊敬を勝ち取ることが出来たのです」
「な、なんと……それ程悲しい事が」
「それは辛い…己と引き換えに皆の夢を…そのよしまそさんという方はなんと偉大な御方」
気付いたか、この偉大さに
「それだけではありません。ある時まだ動きや選択肢が然程無かった所にある男が現れました。その男はまるで異世界から来たかのような男で全く発想にもないようなプレイ…いや、動きを再現したり表情や仕草、台詞をよしまそさんにアドバイスしたのです。よしまそさんを筆頭に彼等はこう言いました…天啓が下ったと!」
「おお、あのような動きはその者が伝授したのですな?」
「あのアヘ顔なる顔もその御方が?」
「あんな風にグリグリ来るのも!?」
「す、凄い…」
もう一押しか
「しかし事はそんな簡単ではなかった、その男もまた深い傷を追ったんです。動きを見せたり発声したり表情というのは口で説明しきれるものではない。そう、口で言っても分かり難いのです。なので…くっ……これ以上は言わせないでくれ」
「ま、まさか自分で」
「もしやその御方とは…」
コイツ等もう落ちてるな。一定の成功は勝ち取れたがここからはさらなる飛躍に向けられるよう推し進めよう
「これ以上我々に言葉は不要でしょう。ただ、私は1つお伝えしたいのです。よしまそさんは今この時も……常に進化しようとしている事を!」
決まった。魔石に関しては最低でも潤滑なやり取りが出来る関係を構築したい。
なのでちょっとやってみて飽きられて渋られるなんて事にだけはならないようにしないとなのだ
「盲点だ!盲点だった!あまりにも良かったのでこれが完成されたものであると思い込んでしまった」
「そうか、まだ…発展途上と言うことですな?」
流石こういう事は皆飲み込みが早い
「そうです。なので我々が欲しいのは色んな意見やパターンなのです。発想が、命なのです。この件に関して言いますと我々はある意味同志なのです!なので遠慮等不要、欲望のままを書いて頂きたいのです。大丈夫です、匿名性はキチンと守りますし逆に個人的にというのであれば勿論対応出来るよう我々も日々進化しようとする次第なのです」
「も、もしや顔も弄れるのですか?」
きたきた
「データさえあれば我等がよしまそさんはきっと応えてくれるでしょう。別途追加にはなりますが個別にというのも対応出来るよう形にしたい気持ちがありますがここは慌ててはいけません、この事業はよしまそさんの気分1つなのです。我々は偉大なるよしまそさんに配慮しつつ、お伺いを立てる次第です」
実はそのパターンはもう対策済みだ。データさえあれば簡単に出来るらしい。俺がやる訳じゃないから分からんけど
「是非ともあの女を…おっと失礼、取り乱してしまいました。後日書物にてこちらにデータを送ります。勿論気長に待ちます、全然慌てないので是非とも作って頂きたい」
「わ、私も」
「ま、待て、私もだ!」
「ご安心下さい。いきなり何百も来たりすればそれはよしまそさんだってやる気なくすかも知れませんが今日はまだ初日、多少の量であれば寛大な心でお受けして下さるでしょう」
「さ、流石よしまそさん…いやよしまそ様だ」
「我々も助力は惜しまないですぞ!魔石もとりあえず試作と称して千個位送りますので是非とも活用して頂きたい。幸いにも新たな魔石の鉱山が手に入りましたのでそのくらいは容易いですからな」
アレですね、ギガビーストの所ですね。よぉーし思わぬ資産が手に入った、100万相当だ。これは幸先良い
「魔符に関しましてもこちらで上質なものを送れますがどうですか?流石にヤマト村の物には及びませんが使えるのなら多少の値引きも厭わず送りますぞ」
使えるか試してみたいからちょっと送ってもらうか
「そうしましたらお試し程度に少し送って頂けたらと思います」
こうして6人の貴族達は満足気にして帰って行った。これはもしかしたら大当たりかも知れない
「隣である程度聞こえてたが……眠れる獅子を起こしちまった気分だぜ。何だあのトークは?お前何者だ?」
あら、聞かれちゃってたの?どうしよ…せいらさんに聞かれちゃまずい事言ってないよな?
「元商人だったってだけです。トークは割とやれたほうなんすよ」
「話の流れを考えればかなり見込めそうだな。よくあの場でアイツ等をあそこまで落としたな。勝負所での攻めといい末恐ろしいやつよ」
褒められてるんだが非難されてるんだがわからん言い方だが俺視点で言えば勝負所とか流れをちゃんと読み取ってるせいらさんが凄いと思う
「もうみーさんが店長もやったら良いと思うんですがね?」
「何言ってるんですか、でも俺のマネとか考えないようにした方がいですよ、それより己の持ち味を活かすんです。相手に売り込むのは自分です、時に相手の想像に合わせたりしてでもキャラを変えたり相手にキャラを想像させてその通りにしてトークしたりと、対面でのやり取りって奥が深いんでね。まず慣れない間はオーソドックスに行ってやれそうなら少しずつ自分の持ち味を出してやってくんですよ」
「勉強になります、足引っ張らんように頑張りますぜ」
なるほど、見た目と異なりかなり真面目なのかもな
「けど無理はイカンです。楽しめなきゃ意味がない、楽しいって大事なんだぜ」
「そうだぜ、大先輩もそう言ってるんだ。私も無理強いはしねーからよ、気楽にやれや」
誰が大先輩だ
「大先輩の意味が全くわかりませんがとりあえずこの後も頑張りましょう。明日もこんな感じで進めてそれ以降は変にトークとかはしない方が良くなりますからね。まずは気軽に来てもらえるようにするのが第一です、皆もその辺頼みます」
「「はい!」」
あら良い返事、仕事が狙い通りにやれて上手く進むのを目の当たりにすると気が入るから気持はよく分かる。
この感じでやる気もそこそこに上手くやってってくれると良いな
夜になり今日来る予定の人はもう居ないので今日は店じまいにした。そして帰り
「お前が元商人だったとはな、当然こっちとは違うにしてもかなりのもんだったと見受けるぜ。どうだ、私と本格的に組まねーか?その方が面白そうだ」
いきなりのお誘い…ありがたいけどこの位の距離の方が良い気がしちゃう俺です
「そうですね~、でも冒険者もあるし俺としては冒険者にしても何か別の事にしても程々のこんくらいの距離が良いと思っちゃってるんですよね。まだこの世界来たばかりというのもありますけど」
「そっか、確かにそうだな。あまり縛られるのはってなっちまうよな。分かるぜ、私もそうだから。もし気が向いたらいつでも言ってくれ。まゆもやクリスも引き連れて来てもいいからよ」
この人は本当姐御って感じの性格なんだな。俺はそういうタイプじゃないから憧れちゃう
「その時はお願いします。あ、アジトまで送りますよ」
「へ?あ、ああ…それじゃお願いします」
何?せいらさんがいきなり敬語?どうしたというのか?飲み過ぎたか?
「どうしたんすか、いきなり敬語で。酒飲み過ぎっすよ」
「う、うるさいだまれ!ほら、とっとと行くぞ」
せいらさんを送り家に帰ると今日は大人しいもんで二人共寝てるのかかなり静かだった。
次の日、午前中に不動産屋へ行き例の件を頼んでみた所、意外にも話はオッケーでここ数日で何が変わったかは分からないが2300万まで値切れが出来た。
こちらは変に値切ったりしたわけではない、加えて後の二人にも話すのであくまで仮定という段階でここまで値下がったのだ。
多分買い手の見込みが無いのだろうなと思いつつこの話は持ち帰り店へと向かった。
今日は開店から閉店まで引っ切り無しに人が来た。昨日の今日で既にリピーターや話を聞いた横つながりの人達が来たのだ。
どうしよう、これは本格的なやつだ。それにしても人の割り振りが絶妙だな、店の維持は二人でだいたい出来るがその場合フル稼働になる。片付け等も考えると瞬間的にはもっと欲しいまであるがとりあえずは4人いれば休憩も滞りなく行ける…いや、これは早計か。
最初としては完璧な人員配置と言えるがまだまだやってみないとわからない点が多々あるけど別の関係筋でクリーニング業者があるのがかなりデカい。プラス店休日を今の所授けてあるので無理なく働けるのも良い。
せいらさん本当凄いな、俺なんかよりよっぽど優秀だよ




