活躍は戦いで 7
「アナタ、もうお酒はやめて。まゆもは部屋に行ってなさい」
「お母しゃんをいじめないでの」
「うるせー!一家の大黒柱に逆らうのか〜?ほら、早く持って来いやぁ」
「もうこれしか…お金ももう無いのよ」
「だったらみーよ、その体で稼いで来いやぁ」
「ぅぅ…そんな……」
「お、お母しゃんをいじめるなぁぁ」
「なんだ、ガキのくせに生意気なぁ!なんならまゆも、お前が身体売って」
「それだけはやめて!わかりました…わかりましたから」
何が起きてるのかというと…これは先日、久しぶりにカジノに行ってボロ負けしてしまった事がきっかけで始まった新しい遊びだ。
俺達は各々が消し炭のようになりながら俺の部屋で無と化していた。喪失感と虚無感の中、一人で居るのが心許なかったのだろう、何も言わずに俺の部屋で集まってた訳だ。
そんな時気晴らしにリアルおままごとでもやろうと言い出した俺。配役は俺がお母さん役でクリスがパパ、まゆもは子供という配役に。
台本は飲んだくれのどうしょうもないパパと可哀想だけどいくら何でも弱気すぎる母、純真無垢な子供という設定な訳だがどう見ても酷いキャラでどうしょうもないパパの役であるクリスは最初こそ難色を示していたがやってみるとこれが意外と面白くてその日のカジノの負けを忘れ去るくらいの盛り上がりっぷりを見せたのが始まりで、それ以来たまにこの芝居ががふとした時に始まるようになったのだ
「私は一体どうなってしまうのでしょう」
俺もすっかりその演技に夢中に
「アンタ等何やってんの?」
たまに帰って来る程度で殆ど姿を見せなかったシオーニがいきなり部屋に来た。ノック位しろってんだよ。
他人に見られると物凄く恥ずかしい場面だったのでクリスもまゆもも顔が真っ赤になっとる。当然俺も超恥ずかしいです
「お、お久しぶりです。どうしました?」
とりあえずこの空気を早く何とかしたい
「クエストよ。王都からの案件だから断れないのでとっとと行くわよ」
それだけ言って有無を言わせずクエストに駆り出されたのだった。
そう言えば前回コレとクエスト行ってから結構経ってるな。
各々が準備万端にし、俺も最近安物の剣を買ったので一応装備しておいた。
これで少しは冒険者っぽく見えるかなと思うがロクに使っていないのであまり役立つ気はしないのは秘密。
今回は意外な事に最初から転身で近くまで移動するとの事だ。王都からのクエストともなれば距離が遠いのだろう、目的地に近い所までは飛んでくれるらしい。
しかし相変わらず事前説明は無いし感じも悪い。前回よりも良いか悪いか分からないが完全に無視を決め込んでるな、この態度というか振る舞いは何とかならないもんなのか?仕方無いので詳細を聞いた
「今回はどんなクエストっすか?」
転身で来たのは険しそうな岩山が目の前にある場所で周りには申し訳程度の寂れた屋根付きの休憩所?的な物があるだけで人が住んでるような気配は一切無いどころか生き物だって住んでるのかすら疑わしいレベルの無機質な場所だ
「ギガビースト討伐よ。この岩山の奥を根城にしてるわ」
「ギガビーストだって!?」
「にゃんと!?」
二人が驚いてるがそんな有名なヤツなのか?
「ちょっとそれは流石に頼む所が違うんじゃないかい?冒険者になる前の私ですら知ってるようなバケモノだよ」
そうなのか?まさか魔王の幹部とかそんなだったり
「ギガビーストってヤバいの?」
「うにゅ、巨体で物凄いパワーがどーのこーのと聞いた事があるぽん。それと魔王軍に属してない魔物の中で、単体の魔物としては最高格のヤツぼぅん」
それはまたヤバそうな…何故そんなクエストを俺達に持ってくるんだろう
「ギガビーストって言ったら上級者だって全滅しかねない程の魔物だって聞いたよ。なんでそんなクエストをまだ初心者の私達に持ってくるのさ?しかも手に負えないだけで私達の行くギルドにも普通にクエストとして置いてあるやつだよ。王都のクエストとか関係ないじゃん。駄目だからね、リーダーとしてそんなクエストを話し合いも無くいきなり引き受けるなんて出来ないよ。皆、帰るよ」
クリスがかなり真剣に、そして熱く抗議をしている。
この女が苦手なのかあまり関わりたがらなそうだったのだがここはリーダーとしてちゃんと抗議しようって感じだな。偉いぜクリス様
「でもずっと放置は出来ないでしょ?ここに居据わられて皆困ってるのよ。ここは魔石の元が採掘出来る場所なの、人助けだと思って頑張りましょ」
そう言って有無を言わさず行かせようとするシオーニ。先導して行ってくれたらそのまま隠れてやり過ごしたかったが敵が敵なだけあって先導して行く気は無いらしい
「おかしいから!何勝手に決めてるのさ!思えばオーガインプだって初心者に勧めるようなクエストじゃなかったよね、アナタ何企んでるの?」
そうだったのか?あれは個人的には美味しいクエストだったけど
「人聞きの悪い事言わないで。アンタ強いんでしょ?だったら人の為に役立ちなさいよ」
褒めてるのか知らんがムカつく言い方だな
「私の仲間を危険には晒させないよ。帰ろうみーくん、まゆもちゃんも帰るよ」
「うにゅ。倒せるか倒せないかは別で、いきなりギガビースト倒してなんて言ってくる人はちょんぱするぼん。ちょんぱしていいぴょ?」
ちょんぱってなんすか?まゆもも怒ってるのか、シオーニもクリスもちょんぱって言葉にやや引いてる。
ただの変わった子が言うなら流せるが如何せんこの子はヤマト村の子、発言一つが怖かったりする
「そうだな、リーダーもそう言ってるしこれは引受けられないな」
俺もそう言って断るが引き下がってはくれなかった
「王都からのクエストだから断れないって言ったでしょ?それに人助けにもなるのよ?冒険者なんだからちゃんと受けなさいよ。1体しか居ない筈だから楽勝でしょ?ねぇお願い、どうせ私が上に掛け合ったら受ける事になるんだから今やっても一緒よ。勝てたら私からも何か褒美あげるから」
うぜぇ…出会ってから今までずっと感じ悪くゴミ扱いかのような態度だったくせにここぞとばかりに甘えたような声で言ってくる。
こういう奴はぶっ飛ばしたいんだが流石に女に手を出したらクリスもまゆもも引くか
「みーくん、この人ぶっ飛ばしていいかな?クリス様は凄くイラッとしちゃったよ」
おおっと、この人はそうでした。引く前に行く人でした
「ねじれうさぎあたりがいいかのぅ」
まゆもさんそれなんすか?初耳ですよ
「そういうのいいから早く行きましょ、報酬だって凄いんだから良いでしょ?」
コイツあれだな、温室育ちというか舐め腐ったまま生きて来れた人だな。どおりで合わないわけだ。しかし報酬ねぇ、いくらだろ?
「報酬っていくらよ?」
「8000万よ」
「ヨシ乗った、やろう!俺一人でやるからその代わり条件がある」
俺はあまりの額につい乗ってしまった
「ちょ、ちょっとみーくん!?た、確かにその報酬は良いけど流石に命には変えられないよ」
「じょ、条件って何よ?まあいいわ。あなたが一人でやるって言うならそれは止めないし好きにすればいいから条件も飲みましょう」
なーんか、なんとなくだけど…言葉には表しにくいけどコイツの狙いがそれとなく見えて来た気がするな。
このクエストで俺が死ぬのを期待してる的な…まあいい、条件を伝えておこう
「みーくんダメだ、やっぱり怪しいよ。条件も聞かずに飲むなんて。アレだろ?みーくんに死んでもらおうとしてるでしょ?」
「人聞きの悪い事言わないで貰えるかしら?オーガインプを一人で倒せる人なら可能性はあるでしょ?私は別にあなた達が参加しても止めないからそう思うなら助ければいいでしょ?」
「まてまて、条件は2つ。1つは報酬の8000万は俺とクリスとまゆもの3等分でアンタは0な。それが仕組み的に厳しいとかだったら1割だ、それ以上は認めないしゴネるなら帰るぜ。そもそもオーガインプの報酬500万が4等分されてる事に何の説明も無いのが納得いかねーしな。そのかわりやるのは俺一人でだから俺がくたばるようなら逃げていいぜ。もう一つがもし俺がやられるようならこの二人も一緒に転身で即逃がしてくれ、それが条件だ。どうだ、悪くはないだろ?」
かなりの好条件を提示してるはず。これが通れば少なくとも俺達3人は1人頭2400万は手に入る。
そうなれば夢の物件も手に入る可能性が出るというもの
「駄目だよ!みーくんもヤバかったら逃げなきゃ。見捨てて逃げるなんて出来ないよ」
「うにゅ、最後まで一緒戦うなのじゃ」
嬉しいこと言ってくれるね〜良い仲間だぜ。だが金に目がくらんでつい乗ってしまったのに付き合わせられない。
その依頼がこの糞女の依頼と来たらなおさらだ
「分かってるよ、俺だっていざとなったら逃げるから。でも巻き込まれたりしたら寝覚めが悪いからね、あくまでパーティーの安全のためさ」
「いいわ、その条件呑むからさっさと行きましょ」
条件にビンタを加えとくべきだった




