始まりはヤマト村で 2
これは…
日本の田舎になんか似てる気がするけどよく見ると所々生えてる草木や使用されてる構造物など違う気がする。やはりここは完全に異世界なんだとわかる
「着きましたでぇす、ここが我が家にござるのでぇす」
えっと…案内だったよね?
「そうなのですか、中々良さ気な所に住んでますなぁ」
あれ?
「さあ上がって下さいなのです」
村の案内…てかいきなり家ってちょっと待って、かなり緊張するんですけど。
なんて心の葛藤もお構い無しに部屋に案内されるとそこには両親と思われる方々が待っていた
「いやぁ〜娘から話は聞きました。命の恩人だそうで。ささ、ごゆっくりしていって下さい」
「ご丁寧にどうもありがとうございます、よろしければ少し話を聞いてもらってもよろしいですか?」
流されるままだとなんかおかしくなりそうなのでここらでこちらから声を掛けてみる。見た感じも普通だし両親ならきっとしっかりしているに違いない。道中で話してみた感じこの娘、まゆもちゃんはどうやらこんなナイスバディ…良いスタイルしてるくせにまだ13歳だそうで、そして会話して何となく察せるが無邪気というかかなり変わってる気がする。喋り方もなんか独特で…ってこればかりはまだこの世界の人達を知らないのでもしかしたら標準なのかも知れないがとりあえず俺側の意見としては変わってるというのが第一印象だ。なので流れのままに行くと変な事になるかも、と思った俺はこちらの両親に話を聞くことにした
「お話ですか?な、何か娘がやらかしたとか?」
やはりやらかす系寄りっぽいな、まゆもちゃんは
「いえ、実は……」
と、ここでまゆもちゃんに話したように記憶喪失ネタを話してみた
「なるほど…これはかなり特殊なパターンですな。持ち物からも居場所等特定も出来なそうで、これは何か……あるのやも知れない」
えっと、そういう対応ですか?ってよく考えたら俺も記憶喪失者に生前も会った事無いのでどんな対応になるかなんて分からんけど
「あなた、村長の所で聞いてみるのはどうかしら?これはもしかしたら何かあるのかも知れませんよ」
奥さんも?
「うむ、もしかすると貴方は何か宿命を帯びてるのかも知れません。これは村長の所で話をしてみましょう」
宿命?あ、確かに転生する寸前魔王がって言われたけど、そう仰々しくされるのもちょっとね。
と思いつつ話が早くテキパキしていてあっという間に村長宅に。そしてあれよあれよという間に村役場に主要の人物とおぼしき者たちを集めて話が行われた。
ヤダ何これ面倒くさい…けど本気で何も分からないから手っ取り早くて助かるか
「貴方のような珍しい衣服を纏った記憶喪失を訴えたり世界が違うと訴える方は都や町等で稀に見掛けるという話を向こうの役人から聞いた事があります。その際には王宮にある部署の一つにそういった方々を導くといったのがあるとか無いとか、遅かれ早かれそういう使者が来ると思われます。何でも……あ、これだ。専門の部署の人の中になのかは分かりませんがそういう人を発見出来るみたいな事が可能だそうです。1〜3ヶ月以内には来るっぽいですよ」
どうやらこの村は王都とかとはかなり離れた場所にあるようで実質自治区みたいな感じらしい。なんか濁らせつつ言ってたが王都とかとはさして関与はしていないっぽいけど一応セーレ王国という国に属する村らしい。セーレ取説とか書いてあるノートのような物を見て話してるけど取説って
「色々ありがとうございます、では私は使者に従い立ち回れば良い。という事ですね」
「そういう事になるかと。しかしそんな特殊な方がまさかこの村に現れるとは…もしかして凄い使命があったり、伝説の勇者だったりなんて事も?」
悪いけどそんな期待には応えられませんよ、若返っただけの元はただのおっさんですからね
「ありうるのぅ……何せほら、魔力が」
ありえません、何言ってるの?この村長さん?
「確かに…流石村長、即座に見抜くとは」
え?なになに?俺実は凄い系なの?
「私もひと目見た時に気付きました、魔力が皆無だって。そんな人間はこの世界には居ませんからね」
何?魔力無いの?……いや元から無かったけどむしろそれってマイナスなのでは
「それに何か隠してる、いや違う…きっと言い辛い事があるようにお見受けされます。いえいえ大丈夫ですよ、分かっておりますから」
何を分かってると言うのだろうか、まあ色々教えてくれて助かったからいいですけど
「ところでみーさん、その使者が来るまではどうするつもりですかな?聞く内容からすると行く宛も路銀も無さそうとお見受け出来ますが…」
「そうなんです、なのでもし良ければ何か仕事とかありますかね?」
出来れば住む所もと言いたい所だけどまだこちらの方々に全て甘えるのは色んな意味でリスクになる可能性もあるのでここはまずお金だ
「そうなりますよね、本当に何も記憶がなくて何も無いって…改めて考えるとおっかないですね」
その通りです。何となく死んで転生したとかは伏せてますけどそれ以外はありのまま伝えてるので本当に困りものです
「そしたらアレじゃな、みーさんがまゆもを救ったという場所の近くに誰も住んでない小屋があるからそこで寝泊まりするが良いぞよ。雨風凌ぐ位は出来るじゃろうて」
それは助かります
「それでしたら今晩は家で食事を、余ってる布団なんかもお渡ししますよ。娘の命の恩人ですからね」
まゆもパパが神だった
「ありがとうございます、非常に助かります」
さらに
「みーさんとやら、明日にでも…と思ったが記憶喪失、何も分からないんじゃ色々混乱もあると思うから気が向いたらまゆもにでも聞いてウチに来るといい。大した金は出せないが簡単な仕事なら常にあるからよ」
それは助かる、まず生活基盤を作らないと話にならんからね
「ありがとうございます!是非とも行かせて頂きます」
「では話もまとまったという事で……みーさんよ、何か話す事があればいつでも相談に来ると良い。では解散」
皆解散となって役場のような所から出るやいなや凄い光を放って各々が飛んでいった。何と表現すればよいのか、あれか?ルーラ的なのか?てか何だこの村の人達!?全員魔法使いなのか?残されたのはまゆも一家と俺だけだった
「まゆもちゃん、これは…魔法ってやつかい?」
俺がそう聞くと
「うにゅ、全員使えるわけではにゃいけど家に帰るやつを皆一斉に放ったのじゃ」
「他所では中々お目に掛かれないと思いますよ、この村ならではと言っておきましょうか」
なんて奥さんのほうが言うと
「アチキ達の村は他所では達人の村とか超人の村、なんて呼ばれてるなのでぇす」
そうなんだ、確かに立ち振舞とか所作が各々やたら綺麗というか芯がしっかりしてる感じはしたんだよ
「コラ、まゆも。それはヤマト村らしく無いぞ!こういうのはしれっとやるのがカッコいいんだ。では我々も帰りましょう……転身」
早速体験しました