イベントは来訪者からで 9
数日後
毎朝屋根に来るロックバードさん、すぐに飛び去るので気にしないで居たら遂にこの件で来訪者が現れた
「おはようございます。いきなり訪れてすいません、実はいくつかお話があって伺いました。早速ですが今外に居るロックバードの件なのですが」
来たのはギルドの職員だった。なんでも近所からクレームならぬ依頼の話が来てたらしい。
この家が俺達の家と知ってたようで直接話に来たとの事
「危険生物とは言えないかもですが安全な動物とも言えるか微妙な所ですのでなんとかして頂きたい所存です。も、勿論私はあなた様方々が飼育してるとかでしたら全然賛成なのですが街の住人はやはり怖いようで」
すっかり低姿勢の職員さん、前のやり取りを気にしてるのだろう。
他の冒険者への対応を見たイメージとしては結構気が強そうというか人当たりは悪くないが決してナメた態度は取れないくらいの圧は持ってる感じのお姉さんだ。
まずは飼育してる訳ではなく、こちらもいきなり来るようになって驚いてるという話をしておいた
「そうだったのですね。いえ、この個体かは確実に断定出来る訳では無いのですが実はロックバード自体はこの辺で見掛ける事はあったんですよ。向こうから街を出た所の川の対岸に大きめの岩があるのですが、その岩によく止まっていたそうなんです」
なんて?
「ところがその岩が跡形もなく消えてしまってたようでその影響では無いかという話も来ております。
ロックバードは硬い岩に好んで停まる性質があるとかでその可能性も否定は出来ないかと、それと気になるのがその川付近の地面が物凄く荒らされていたという話も聞きました。
水害にならないなら問題は無いのですがもし水害が発生しようものですと損害はとんでもない事になりますので…ってすいません、その辺は関係無い話かもでしたがロックバードの件に関しましてはそういう話まで出て来てしまってるのです」
ヤバい、バッチリ関係しちゃってますよそれ。ロックバード云々はむしろまったく知らなかったけどその川のどうこうは物凄く関係しちゃってます。
まゆもがあからさまに目を逸らして口笛吹くフリをしている。つられてクリスも同じ事している
「いやぁ~、向こう側って言ってましたっけ?確か俺も釣りだったか探索だったかで行った事ある気がするなぁ、そんでその岩ってのも見た事あるかも知れないから…今ちょうど暇してたしロックバードが飛び去ったら見に行く位しておきましょうかね」
「本当ですか?それじゃあこの依頼は受けて」
「ふっ、まだこの件は正式にクエストとして出されてないんですよね?困った人達を助けるのに依頼がどうこうなんて言ってる場合じゃないでしょう、ここは俺達に任せて下さい。ウチに居付いちゃったロックバード…ロックちゃんの事もなんとかしてみましょう」
「名前ついちゃった」
「ロックちゃんなんですね」
「ろっくくんかも知れぬぞよ」
何でもいいです。どう見ても俺達のせいなのでここは丸く収めることにしよう。流石にこれでお金は受け取れない
「あ、ありがとうございます!正直もっとお金の事とか言ってくるかと思いました。魔王軍の将軍を倒すだけの事はあるのですね」
さっきの怯えてる感から一転して尊敬の眼差しを向けられて来た気がする。やめてください、今後お金の話とかし辛くなりますし聖者なんて思われたら困る。
なんて俺の思惑をヨソに3人は得意気な顔をして誇らしげにしている、まあいいか。
とりあえず外に出てろっくちゃんの所まで行ってみた
「微動だにしないね、本当に大人しいな。ちょっと撫でて見るか」
思ったよりフワフワして気持ちいい
「いいなぁ~私も撫でてみたい」
「私も撫でてみたいです」
「餌あげてみようぜ、何食べるかな?」
するとまゆもがパンとハムを持って来た。せっかくだし皆にも触ってもらおうという事で結界で上まで持ち上げてみた
「みーくんがどんどん便利になってくねぇ」
「こんな使い方出来るんですね」
昔漫画で見た気がするんだよ
「みー様は魔法使いだったのですか?本当にレベル3なのですか?」
受付嬢さんが色々聞いてくるがギルドと馴れ合う気は無いのでテキトーに誤魔化すか
「その辺は俺も謎っすね。んじゃろっくちゃんよパンとハム食べるかな?」
と、手に持ったパンとハムを差し出した瞬間に食べられた。
ヤバい、器用に食べてくれたから大丈夫だったがその勢いは普通に怪我するやつだ。
小さい子供は確かに危険だな、仮に狩るつもりが無いにしてもクチバシで突付かれただけで下手すりゃ大怪我、あるいはってレベルのパワフルさだ
「フワフワして気持ちいいですよ!可愛いですね、この子ウチで飼ってしまいますか」
「いいねぇ〜なんだが愛着湧いてきたよ」
「あ、あの…それだと街の人達が怖がって」
飼ってみたい気も山々だが元はといえば俺がコイツの止まり木ならぬ止まり岩を壊したせいだからね。
コイツにとってもいい迷惑だろうからちゃんと戻せそうな方法を試してあげよう
「ろっくちゃんよ、飛び去られると戻ってくれるか分からないからちょっと付き合ってね」
ロックちゃんと同サイズ位の結界で閉じ込めて持ってみる。本当に微動だにしないな、腹決まりすぎだろ
「おお!?持ち運びする気だよこの男」
「ろっくちゃんも暴れたりせずおりこうちゃんなのでぇす」
とりあえず川まで連れてくか
「それじゃあまずは川のところまで連れてってみてなんか考えるので…そういえば他にも話があるんでしたっけ?」
「あ、はい。でもその…まずはそちらで大丈夫ですよ。こちらはまだ時間がある話なので」
ちょっと気になるがとりあえずそれは後でにして川に到着した
「キミが岩をあんなふうに破壊するからこんな事に」
「おい、それ提案したのってクリスじゃなかったか?」
クリスのほっぺを引っ張りながら砕いた岩の断片をみつつどうするか考える……凄く単純というか子供騙しではあるがこの砕いたちょっと大きめの岩を長い木で止めて元あった場所に立てたら止まってはくれないだろうか?
他にも大きくはないが岩があるのにそれには目もくれてない可能性があるとするならあの岩になら止まる可能性がある気がするのだ。
とりあえず掘り返すか
「クッソー、相変わらず重いなこの岩。さてコイツを3メートル位の高さにすべく木を調達してくるのだよ」
「木を切るのですね、このろっくちゃんのようにならないよう巣がある木とかは避けて下さいね」
さて、木はそれなりに生えてるし高さも充分ではあるが問題はどう切るかだ。
剣持ってくりゃ良かったか?って言ってもそう簡単に両断するなんて出来ない気がするしねばのーるノコギリでもかなり疲れそうなので…やれるか?ねばのーるチェンソーみたいな技
「これは良き!みーくん流石なのでぇぇす」
出来ました。そしてまゆも褒めを貰った。まゆも褒めは素直に嬉しい。
ヤマト村の人のお墨付きは自信になる
「良いだろぅ〜、いくぜ!みーカッター」
思ったよりは燃費はマシだったがやはり結構疲れる技だった。
簡単に倒れない様にこれでもかくらい地面に木を3本刺し込み、真ん中に岩を置く作戦にした訳だが結構安定してはいるものの、端から見るとあまりバランスが良さそうにも見えず落下して人が下敷きなんて事もあり得ると怖くなったので周りを更に木で囲ったり色々してなんとかそれっぽくしといた
「疲れたぁ〜、でもこれで簡単に落下したりはしないだろ、よし!ろっくちゃんや、その石ころの上に止まってやってください」
結界を解除するとろっくちゃんはちゃんと岩の上に止まってくれた
「上手くいったね、単純な作戦だったから無理あるかとも思ったけど大丈夫で良かったよ」
「たまに遊びに来るのでぇす」
「これで一安心ですね。ふふ、ろっくちゃんもご満悦そうに見えますよ」
川の方も問題無さそうだしこれで解決って事で良いだろう。
かなり重労働だったから家でゆっくりしたい所だがギルドの受付嬢の話も気になるな
「そろそろ戻るとしまして、後でギルドに寄ってみますか?」
「そうだな、とりあえず戻って昼食べようぜ。その後は気分で」
「私は今の所家でゴロゴロする気持ちの方が強いよ」
クリスもお疲れモードのようだ。メロニィの転身なら一発で帰宅だがこの距離で使うのはなんか怠け過ぎな気がするので大人しく歩いて帰る。
そういやちょっと疑問に思った事があるのでメロニィ先生に聞いてみようか
「メロニィ先生、ふと疑問に思ったのですがロックバードは魔物じゃないっていうのは何となく分かるんだけどそういうのの定義というか決まりはあるのかな?」
「そういえばみーさんはその辺の知識は無いんですよね、すっかり忘れてました。ではメロニィ先生が説明しましょう」
何でもこの世界の動物はざっくり獣、魔獣、神獣の3種類に別れてるそうだ。
犬や猫、クマやライオン的なのも普通に存在してる訳だがそれらは引っ括めて獣と定義され、それ以外でも邪悪な魔力が帯びてない物も獣に分類される。
魔獣は邪悪な魔力だかを帯びてるものを言うのだが魔物や魔獣、モンスターなんかは邪悪な魔力を帯びてる物をそう分類するらしい、多分だけど魔物に魔獣にモンスター、この辺は翻訳のされ方や俺の認識とかで変わってるだけだろうな。
そして神獣はそうそうお目にかかれたりはしないそうだが一番有名なのがドラゴンらしい
「邪悪な魔力ね、そういうのって見れば分かるの?」
「多分分かると言いますか、本能的に感じるとは思いますよ。我々聖職者に当たるものはその見分けをするのも仕事の一つとしてあったりします。専用の魔導具があれば誰でも出来ますしね」
そういうものなのか。面白い魔導具とかあったら欲しいな
「因みにね、魔物やら魔獣達は基本的に動物は襲わないんだよ」
そうなの?クリスが得意気に言っておる
「魔物達の糧となるのは邪な魔力がメインです。動植物には邪な魔力は無いのであまり意味がないと言い換えても良いでしょうかね。なので人間だけが襲われ捕食の対象となるのです。とはいえ例外もチラホラ居てそれらは普通に動植物も食したりしますがやはりメインは人間になりますかね」
初耳な情報を沢山教えてもらった。発想すら無かったので聞くことも無かったことだった。
動物に草食肉食等色々な区分があるように、魔物にも魔獣や魔族なんて分類があったり、ちょっと驚いたのがこの世界で生まれたタイプと魔界から来たタイプなんて区分もあるのだとか、魔界なんて聞くと恐ろしそうだが強さ的にはどっこいどっこいらしく研究者以外は然程気にする事でもないらしい。むしろこの世界由来の方が血の気が多いなんて意見もある。
豆知識として悪魔はいるが魔物とは別で完全に悪魔という分類になるというのと、龍は邪龍に堕ちると魔物扱いになり討伐対象になるとか、龍に限らず神獣に関してはそういうルールがあるらしい。
「なるほど。んで魔王軍なんかは神獣には手を出すことは無いって訳か。俺達もちゃんと神獣には敬意を払っておこうね」
「それが賢明です。まあ神獣なんてそうそう出会うことなんて無いですからね。ただドラゴン討伐はちょっとロマンがありますけどそうそう邪龍に堕ちるなんて無いですから無理に挑むことは無いでしょう」
「ところで邪な魔力って発生源は分かってるの?」
「人間ですかね、更に追求すると悪魔なのか人間なのかそれとも魔界からなのか?等神話級の話に繋がり宗教で解釈が変わったりもしますが…ごく一部の上位にあたる聖職者の中には人間から生まれる邪な魔力の観測まで出来るらしくそういう人は人間だと言いますね。
ただそれだと不都合もありますし観測出来る人が限られ過ぎてて鵜呑みには出来ないという事でこの手の議論はだいたいタブーになってるようです。このタブーに触れ過ぎると消されるなんて都市伝説もあったりするのですよ」
こういうのはどの世界も一緒なんだな
「発生と言うよりは練ってる気がするにょだよ」
そうなのか?ってなんの気無しに聞いてたらメロニィが物凄く驚いていた
「ま、まゆもさん、もしかしてそういうの見えてるのですか?」
「ほえぇ〜、私も軽くは聞いた事あるけどそれってかなり凄いんじゃないかい?それともヤマト村の人は皆見えてるのかな?」
「ブクブクしてる感じやでぇ、多分見えるのはアチキ位な気がするぽん。でもアチキも11歳の時に姐御と話してる中で知った事ゆえもしかしたら無自覚で見えてる人もおるやも知れぬぞよ。あ、コレ確かあまり言いふらさない方が良いって皆に言われてるから内緒の話なのでぇす」
「自覚出来ないものですね、なるほど。とんでもない人を目の当たりにしてる気がしますが確かにこの事は公言しない方が良いでしょう。ヤマト村の方々ならまず大丈夫とは思いますがそれでも先程の都市伝説的な話も決してバカには出来ないくらいに各宗教は闇があったりしますので」
まゆもはやはり規格外だな




