3話 ピザの食べ方
店を出て彼女と一緒に大きな箱に乗った、
大きな箱、、これはおそらくエレベーターだ、前世の物とは大きく違う、ドアは手動だしボタンも無いあるのはレバー1本のみだ
俺が物珍しそうに周りを見渡していると彼女がレバーを左に倒し一階に下り建物から出て大通りに差し掛かったところで俺は息をのんだ。
「すげえ」
そこは昨日みた4~5階くらいの建物が並ぶ物ではなく何十階も重なった高層ビル群だった。いやビルというより壁だ、いくつものビルが重なっているのか錯覚なのか分からないが、とにかくデカい。
思わず周りをキョロキョロと見渡していた。
「ちょっと、そんな田舎者みたいにキョロキョロしないでよ、恥ずかしいじゃない」
「ああ、すみません昨日見た街と全然違うなあって」
「そう、あんたが倒れていたのは旧市街地だから当たり前よ、そういえばあんた、どこに住んでるの?」
どう答えよう、転生してきたので家はありませんなんて言えないし、だからあんな路地裏を彷徨っていたわけだし、まあ素直に答えるか
「実は住む家が無くて」
「宿住みってこと?」
「いえそうじゃなくて、来たばっかで右も左もわからなくて」
「そっか、これから大変ね」
少し間があったあと彼女が口を開く
「あんた、行く当てあるの?」
「無いです」
「そう、どうするの」
「どっかで働いて給料がたまったら、助けてくれたお礼も兼ねてお金返そうと思ってます、、」
彼女はため息をついて、あきれた口調で言った
「あんた、本気で言ってるの?この国はもう不況から4年も立ち直ってないのよ?働き口があるわけないじゃない、働いたって食べるだけで精一杯よ」
「でもそれ以外、、」
「あんたさ、人を殺したことはある?」
急な質問に俺は困惑した
「あるわけ、ないです」
「そう、簡単よ、猿でもできる」
「は、はあ」
「あんた、私と組む気は無い?」
人を殺したことある?の質問の後のあの発言はロクでもない事に違いない。人殺しも犯罪もまっぴらごめんだ。ただ、俺には迷いがあった。
これから工場で働いて、何時間も心を殺して社会の歯車になってもいいのか、そんなの本当に生きているなんて言えるのか。
昨日帰宅中の労働者の顔を見たが皆死んだような顔をしていた、わざわざ神様からもう一度やり直すチャンスを貰った結果が工場の部品なんてそれでいいのか?俺、覚悟を決めろ、
「組みたいです」
「決まりね、あんたの名前は?」
「ナオトです」
「リオンよ、よろしく」
選択肢なんてあるようにみえて実はない、覚悟は決まったつもりだ
信号待ちをしているとき彼女がふと俺の靴から顔まで舐めまわすように見て言った
「にしてもあんた、その金持ちぶってるダサい服どうにかならないの?」
「これ以外持ってなくて、、」
シンプルに悪口言ってきたな、そうはいっても一応俺の高校は制服がかっこいいで有名だったんだぞ、最も俺が着れば台無しだが
昨日はスーツ姿の人は結構居たけどここら辺は居ないな、スーツは上流階級の着るものなのかな、少し変わったスーツみたいな感じで行けると思ったが無理そうだ
「ならまずは服屋に行きましょ、男物は分からないけど、少なくとも今よりはましになるわよ、」
そういって彼女と一緒に服屋へ行った。
中にあったのはおじいちゃんでもダサいと言いそうな古臭い服とノスタルジックなかっこいい服があった。
俺は定員さんに服を選んでもらった、俺からするとギリギリ後者だ、彼女は少し不満そうな顔をしていたが
服を会計に持って行った時言われた
「そういや、あんたお金はどれくらいあるのよ」
あ、やっべ完全に忘れてた
「持ってないです、、」
「はあ、あきれた奴ね」
彼女はそういって代わりにお金を払ってくれた。やっぱ見た目に反してこの人は優しいな
「あ、ありがとうございます」
「やめて、これは貸しよ」
そういって僕は着替えて店を出た、貸し借りか、映画でよく見るやつだ
「うん、やっぱそっちの方が似合ってるわね」
「そうですかね?まあ確かに雰囲気に合ってる気がします!」
「ならよかった、お腹空いたなあ、いいとこ知ってるの、一緒にいきましょ!空いたしょ?お腹、おごってあげるわ」
言われてみれば確かに昨日から何も食べていない。
今なら大嫌いなピーマンでもバクバク食べれそうだ。
「いいんですか?でも貸しを二個も、、、」
「そんなけち臭いことしないわよ、ご飯くらいで、おいでっ」
そういって俺の手を引いて彼女は大通りに面したファミレスみたいな店に入った。
店に入ると美味しそうな香りが沢山入ってきた、これは絶対美味しいやつだ、席に座った。あれ、メニューが無いぞ
「ここはね、ピッザァがおいしいの、あんたも好きでしょ?」
「ピザあるんですか!大好きです!」
「じゃあ決まりね」
そういうと彼女は注文をした。ピザあるのは心強い、少し恐れていた。何も知らない異国に飛ばされて知らないモンスターの肉を食う羽目になることを。ただこれなら心配は要らなそうだ
周りを見ると皆ピザを食べている。ラーメン屋が塩だけで勝負するみたいなノリかな、これは期待できる。
「そういやあんた、名前聞いてなかったわね」
「ナオトですそっちはリヨンさんですよね?」
「リオンよ、よくその間違いされるわ、あと、、ほらこれ」
そういって彼女は一本のカギを渡してきた。
「知り合いがホテルをしてるんだけどね、いっつもガラガラだから一部屋譲ってもらったの。どうせ家無しだと思ってたし」
「何から何まで、すみません」
「何よもう相棒なんだから助けるのが当たり前でしょう?」
「は、はい」
彼女は不満そうな表情をする。
「相棒よ?敬語禁止!」
「お、おう!ありがとな?」
彼女はふふっと自然な笑みを浮かべる。そこから他愛のない話をしてる内に料理がきた。しかし俺が思い浮かべていた物とは違った。俺が知ってるやつよりも二回りも三回りも小さいものがいくつか来た。これは何等分すればいいんだ、?
とりあえず机の上にあったナイフを使って4等分にしようとした。
「ちょっとあんた、何してるの」
「何って切り分けようと思って、、」
「そんなことしたらあんた店長に殺されるわよ、こうやって食べるの」
彼女はそういってピザを持ち上げ折ってから口にした。俺からするとそっちの方がみっともないわけだが、まあ郷に入っては郷に従えだろうな、イタリア人がピザの上にケチャップとパイナップルを置くと怒るのと一緒だきっと。
確かに言われてから気づいたが周りもそうやって食べてるな。これこそいわゆるカルチャーショックだ。
俺も彼女と同じような感じで食べた。結構おいしい、これはベーコンだ。
そうしておれはベーコンをいくつか皿に落としながら夢中になって食べた。うん、これは食べ方慣れが必要だな。
そうして食べ終わった後、彼女と明日会う約束をしてその場で解散した。
明日はいろいろ教えることがあるらしい、いろいろとお世話になりっぱなしだからな、頑張ろう。