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静岡県丸ごと異世界転移  作者: さば缶
第1章 混乱の始まり
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混乱する県境

 やがて朝が進むにつれ、強烈な閃光が完全に収まった頃には、静岡県全域が驚くほど別の風景へと囲まれていた

 県境にいた人々は口をつぐんだまま、まるで見当違いの場所へ迷い込んだかのように途方に暮れている

「おかしい

 ここ、いつもなら高速道路が続いてるはずなのに」 市街地の外れに住む者がそう呟きながら道路を見やると、先が途切れ、その向こうにはどこまでも続く草原のような地形が横たわっている


「通信障害が出てる」 「テレビも映らないし、車のカーナビも狂った」 不安の声が重なり、道路や広場は一気に混雑する

 町の防災スピーカーからは、うまく聞き取れない放送が流れるばかりで、繰り返し「冷静に行動を」と呼びかけているが、どこも大混乱が続いていた

 ビルの上階からは遠くを見下ろせる人たちが「白い山がやたらと近くに見える」と騒ぎ立てる


「富士山にしては形がおかしいし、何か遠近感が狂ってるんじゃないか?」 そんな声も上がるが、誰も正確な状況を説明できない

 歩道に立ち尽くす人々は、各自スマートフォンを操作して助けを求めるものの、ネット回線が落ちているのかエラー表示しか出ない

 まるで世界そのものが途切れてしまったような感覚に、子どもだけでなく大人までもが立ち往生する


 学校では教師たちが一斉に校庭へ生徒を集めようとするが、避難マニュアルに記された方法とはまるで違う未知の事態に職員室が大混乱に陥っていた

「とにかく生徒を安全な場所へ! でも外が安全だという確証がないぞ」 不安定な声が飛び交い、チャイムも鳴らせないまま誘導が始まる

 大音量で鳴りっぱなしのクラクションに遮られ、何が正しいかの判断が難しい


 街の大通りでは、車が列をなし、交差点の信号が点滅状態になっている

 時おり救急車がサイレンを鳴らしているが、目的地がどこなのかさえはっきりしない

 近くの高台にいる人は望遠カメラを手にして、県外に続くはずの風景が丸ごと消え、その先にまったく別の地形が広がっているのを捉えていた

「どう見ても、これは日本じゃないな…」


 こうして短い朝のうちに、静岡県という一つの地域が丸ごと異世界へ転移してしまった

 まだその事実を正確に把握できた者はいない

 ただ、さっきまで笑い声が響いていた踏切も、大混乱の現場に変わり果て、通学や通勤もままならなくなっている

 通りを急いでいた翔太や梓の姿は見えず、周囲では見知らぬ人々が口々に「どうなってるの?」と叫びながら、そちらを探す余裕すらなく右往左往していた

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