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静岡県丸ごと異世界転移  作者: さば缶
第1章 混乱の始まり
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荒野に現れた青と白の大地

「見ろ、あそこだ」 グラナス・レオンハートの声が、乾いた風に溶けるように響いた

 長い荒野を進んでいた彼とライラ・エセリアは、いま目を奪われる光景に出くわしている

 先ほどまで何もなかった地平線上に、突然まばゆい閃光が走ったかと思うと、巨大な大地が丸ごとせり出すように姿を現したのだ

 一瞬、蜃気楼かと疑ったが、それは間違いなく本物の土地だった


 ライラは金色の髪を束ねたまま馬を止め、ふと息を呑む

「これほど大きな領域が、丸ごと出現したの?」 騎士の鎧に映る太陽の光が揺れている

 目の前には大きな山がそびえ立っていた

 山頂が雪で白く染まり、中腹あたりには深い青や緑の斜面が広がっている

 完璧な円錐形のようにも見えるその山は、どこか神々しさを漂わせていた


「馬鹿な、こんな質量の土地が瞬時に出てくるなんて

 山だけじゃない、町や道らしきものまである」 グラナスは渋みのある顔をさらに険しくし、くたびれたコートの裾が風に舞うのを気にも留めずに目を凝らす

 ライラも同じ方向をじっと見つめると、舗装された細い線のような道路や建物のような影が点在しているのがわかった

「明らかに我々の世界のものではないわ」


 そう言い切ったグラナスに、ライラは深くうなずく

 あの山の姿に覚えなど一切ない

 しかも山麓の広がりが切り取られたように整然としており、その周辺には碁盤の目みたいな区画が無造作に張り付いている

「こんな形状、どんな魔術でも説明できるとは思えない」 ライラの声に戸惑いが混じる


 光の余韻がまだ遠くの空気を震わせているようで、耳を澄ますと僅かな放電音のような響きが感じられた

「厄介なことになりそうだ」 グラナスは腰の剣に手をあてながら、険しい視線を送る

 ライラは愛馬を一歩進め、突然現れた土地を上から下まで見渡す

「大規模な転移が起きたのかしら

 どんな存在がこれを引き起こしたのか、知りたいわ」


 宙にはまだ微かな光の揺らめきが残り、そこだけ時間が歪んでいるような不安定な雰囲気をまとっている

 二人のまわりには乾いた荒野が広がるが、その向こうには青と白の雄大な山が主張するように聳え立っていた

「もし人が住んでいるなら、そちらも相当混乱しているだろうな」 グラナスが唇を曲げ、少し皮肉っぽく笑う

 ライラは言葉少なに手綱を握り直し、馬をそちらへ進める


 行く先に何があるかはわからない

 だが、これほどの異変を前に後退するわけにはいかなかった

 共に視線を交わすと、ライラとグラナスは馬を駆り始める

 荒野を進むひづめの音が土埃を巻き上げ、明るくも静かな日差しのもとに、二人の影が長く伸びていく

 その先には切り取られたように出現した大地と、不自然なほど青い斜面を抱える白い峰が待ち構えているようだった

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