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ヒマを持て余した神々のアソビ~アレクシア転生記~  作者: きんくま
chap.1 転生~幼少期
7/7

ep6.アレクシアは真実を知る

■後神暦 1310年 / 春の月 / 空の日 pm 11:30


――図書館


あの衝撃の出会いから1週間、図書館ここに通うことを止めようか悩んだけれど、結局学園に入学してしまえば嫌でも顔を合わせることを考えて開き直ることに決めたわ。

それに刺客たちから逃げ回って魔法の習得を疎かにするとママを救えなくなる可能性が高くなって、いよいよシナリオ通りになってしまう。

そんなことになったらわたしの精神が保ないわ。


数冊の本を手にいつもの席に座り、読書を始める。

今回は魔法書の他に精神医学の()()()学説が記述されている医学書も持ち出した。「ような」と表現したのは、この世界で心理学の類いは前世と比べて進歩が遅れている。精神病も然りで、まだまだ認知が新しい部類に入るみたい。


関わると決めた以上、出来る限りの抵抗はするべきだとは思うのよね。

バレンティンが()()()()()になるには何か理由が在るはずなのよ。

つまり、原因を今のうちに潰しておけばもしかしたら真面目な好青年に成長するんじゃないかしら。

エラルドの更生には失敗したけれど、アレはもう持って生まれたものだからわたしのせいじゃない(たぶん)。


パラパラと本をめくり目当ての項目がないか探すが中々該当する記述がない。


「どこにも書いてないわ、そりゃそうよね…そもそも病気とも思われてなさそうだし」


思わず独り言を呟いてしまうくらいには予想はしていた。

だって多かれ少なかれ皆持っている性質なんだもの。前世でも程度の差はあっても周りにいるのは珍しいことじゃなかったわ。

ただ、バレンティンは異常だけどね…


「アレクシア!! 良かった、やっと会えた!!」


「ちょ、ヴァル。しーっ!」


人差し指を唇に当て、静かにするようジェスチャーする。

ここは図書館だ、そんな大声を出したら周りから注目されてしまう。


「ごめん…会えたのが嬉しくてつい…」


「いいわ、でもビックリするから大きな声出しちゃダメよ?」


「うん、それでね、次に会ったらアレクシアに言いたいことがあったんだ」


「…何かしら?」


わたしはかなり警戒をした。今は無垢を装っていても刺客は刺客、更生は試みるけれど相手が危険人物であることを忘れてはいけないわ。


「もし良かったらボクの家に来ないかなって思って。アレクシアって魔法に関する本に興味あったよね? うちにもたくさんあるからどうかな?」


「う~ん…」


どうするべき?

確かにバレンティンの家はお金持ち、図書館に置いていない本もあるかもしれない。

ママのことを考えたらここは乗るべきなのかしら…ええい、虎穴に入らずんば虎子を得ず、株に手を出したお父さんも言ってたわ。あの時は微妙に損をしてお母さんに怒られていたけれど、わたしは失敗しない!


「わかった、行くわ」


「本当!? じゃあ今から行かない?」


バレンティンが持ってきた本を戻すのを手伝ってくれて、わたしたちは図書館を後にして彼の家へ向かった。



――カルローネ邸 書斎


「…すごいわ」


20畳以上ありそうな部屋にいくつも置かれた本棚には隙間なく本が納められている。もちろん図書館に及ばないけれど、個人がここまで蔵書できるなんて前世も今世も庶民のわたしからしたら信じられない光景ね。


「お父様もお母様も本を集めることが好きなんだ。姉様たちは少し偏ってるけど、皆本が好きなんだよ」


「へぇ~ヴァルってお姉様もいるのね」


「うん、二人いるよ」


ゲーム本編でもそんな設定出てこなかったわよ…どうなってるのよ制作陣。

それとも実はゲームの世界だって思ってるのはわたしってこと?

いやいや、エラルドの件もあるし、もしゲームの世界じゃなかったら異常者はわたしってことになるわ…うーん…でも…


「アレクシア? どうしたの?」


「あ…いや、なんでもないわ。ちょっと考え事してたの」


自分自身の記憶に疑心暗鬼になって、しかめっ面のわたしを不思議そうにバレンティンが覗き込んだ。腕には数冊の本が抱えられている。


「そうなんだ、大丈夫? 魔法に関する本持ってきたよ、それと関係ないかもしれないけど、聖女の伝記も。昔の話だけれど、聖女様もすごい魔法を使えたらしいよ」


「聖女!? ありがとう、読ませてもらうわ」


盲点だったわ。アレクシアはゲーム後半に聖女と呼ばれていた。

もしかしたら魔法書以外にもヒントはあるかもしれない。


わたしは時間を忘れて伝記を読みふけった。

バレンティンは時々わたしを見つめていたけれど、声はかけずに静かに隣で読書をしてくれていた。こんないい子がヤバい奴になるのかしら…やっぱり異常者はわたし…?


9割近く読み終えたところで、書斎の扉をノックする音が響いた。

入ってきたのは栗色の髪のママと同年代くらいの女性、それと黒髪でバレンティンより年上の女の子二人、きっと彼のお母さんとお姉さんだろう。

全員彼と同じくぱっちりとした二重に通った鼻筋、整ったパーツが小顔に収まっている、つまり美女・美少女だ。バレンティンは母親似なのね。


「ヴァルちゃん、お友達を連れて来たって聞いたからお茶とお菓子をもってきたわ」

「ヴァルくん、もう友達作れるなんて偉いわね~」

「当然ですよ姉様、こんなに可愛いんですもの。ね、ヴァルくん~」


「ママ、お姉ちゃん、ありがとう~」


ん?ちょっと待って、「ママ」?「お姉ちゃん」?

それに何か雰囲気変わってない?


「読書するヴァルちゃんも絵になるわね~」

「お母様、ヴァルくんは天使ですから当然ですよ」

「でもヴァルくん、家に居る間はお姉ちゃんの服を着る約束でしょ~?」


「そうだった~、ごめんねお姉ちゃん」


ん?ん?んん!?

ど、どうしたんだバレンティン?

おかしくないか?


「ごめんね、アレクシア。僕って可愛いみたいでさ、家にいる間は姉様たちの服を着てるんだ~、着替えてくるね」


「…あぁ、うん、ヴァルって綺麗な顔だもんね。わたし、お手洗い行ってもいいかしら?」


「あら~ヴァルちゃんの美しさが解るなんて聡明なお嬢さんだわ~。お手洗いは出て突き当りよ」


居酒屋みたいなトイレへの案内をされたわたしは廊下に出てすぐに走り出した。

バレンティンは美しい湖畔を見ても「水面に映る自分が美しい」と言ってしまうほどのナルシスト。


わたしはてっきり家庭でなにか辛い想いをして、自己愛性パーソナリティ障害に陥ったと予想していたけれど逆だった!!

家族が彼を猫可愛がり、いや、それとは少しベクトルが違う可愛がり方をした結果、ナルシーモンスターが爆誕してしまったんだ。

加えて母親や姉に対する奴の態度…


トイレに駆け込み、勢いよく扉を閉めた、そして感情を吐き出した。


「マザコンでシスコンかよーーーーー!!!!」


わたしは渾身の力で叫んだ、その声はうるさいくらいに反響した。


【バレンティン イメージ】

挿絵(By みてみん)

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