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出すプリント間違ってない?

授業が終わり生徒達は部活や帰路につく人などそれぞれの都合に合わせて動き出した。谷田は部活には入っておらず、友達も多いという訳でもないので、早々と学校を後にし、自宅に帰った。


「ただいまー」

「あら、おかえりなさい。随分と疲れてる様ね」


家のドアを開けると母親がドアの前に立っていた。手提げバックを持っていることから恐らく近所のスーパーに行くのだろう。息子の顔を見ただけで疲れているのが分かったのは、女の感と言うやつか、それとも母親として一番近くで息子を見てきたからか、恐らく後者だろう。


「まあ、色々あったからね。そこまで深刻な事ではないけど」

「そう。ならいいけど。何か困っている事があったらいつでも相談しなさいよ」

「ん」


母親との軽いコミュニケーションをとった後、谷田は自室に向かいベッドで横になった。


(「久しぶり」か。あの言葉には一体どのような意味があるのだろう。そもそも俺と岸本さんは既にあった事があるのだろうか)


今日、学校で起きたことを一人で黙々と考察しているとチャットの通知が鳴った。どうやら中身を見てみると、岸本さんがクラスのグループチャットに入ったらしく、ちょっとした雑談で盛り上がっているようだ。しかし、約四十人いるクラスチャットの中でもちゃんと会話をしているのは、クラスでも上位層にいる十人弱だが。そんなチャットの内容には興味が湧かず、谷田は通知を切りスマホをベッドの上へと雑に投げた。しかし、なぜだろうか。スマホの通知が鳴り止まない。


「何で止まらないんだ?設定間違えたのか……え?」


そこにはチャットの通知ではなく、何故か着信画面がスマホに映し出されていた。それも、見知らぬ番号では無かった。


「『もも』って誰だ?電話番号じゃないからチャットアプリからかけているんだろうし、知り合いだとは思うんだけど……心当たりがないな」


普段、電話を掛けてくるのは湊しかいないので少し不審に思いつつも、スマホを耳に当てた。


「(谷田)もしもし。どなたですか」

「(もも)……」


おかしい。通話は始まっているはずなのに声が聞こえない。一体どういう事なんだろう。

谷田は声の出ないスマホを不思議に思いつつ、耳に当てていたらインターフォンがなった。


「電話中なのに……タイミングが悪いな」


通話中のスマホをベッドに置き、自分の部屋を出るともう一度インターフォンが鳴った。


「今、開けるので少し待ってください」


少し非常識な行動とも取れるかもしれないが、急ぎの用かもしれないので少し大きな声で返事をして、ドアを開けた。


「え……何でここに……へ?」


ドアを開けるとそこには意外な、いや、意外すぎる人物が立っていた。よって、谷田の脳はフリーズし、言葉が詰まった。


「ドアを開けるのが遅いのではありませんか?修哉くん」

「き……しもとさん、だよね?えっと……なんでここに?」


そこには制服姿の転入生、岸本桃葉が立っていた。


「『なんでここに』って。修哉くんに用件があるからに決まっているでしょ」

「よ、用件ってなんですか?」

「んー、とりあえず寒いから部屋の中入ろうよ」


桃葉は谷田の横を抜け谷田の部屋に入っていった。


「ちょっ、てか何で俺の部屋知ってるの?」

「さあ、何故でしょうねー」


ニヤニヤしながら谷田を見る姿は小悪魔そのままだった。




桃葉が谷田の部屋に来てから三十分ぐらい経っただろうか、部屋は沈黙を極めていた。桃葉は部屋の中をジロジロと眺めている。特に何かを隠している訳では無いが思春期男子には心臓に悪いので止めてほしい。


「あのー、岸本さん。用件ってなんですか?」

「お、気になる?教えてほしい?」

「まあ、そうですね。教えてください」


何故谷田がお願いしているのか分からないが、このままでは一向に進まないと思ったのと、もうすぐ買い物に行った母親が帰ってきてしまうと思い、恐る恐る用件を聞いた。


「じゃあ教えてあげよう。実はね、修哉くんと私は恋人なんだよ」

「は?」


意味がわからない。何度考えても意味がわからない。今日初めて合った女子に恋人宣言されるなんて頭の片隅にも無かった。


「恋人って、そもそも俺たちが会ったのって今日が初めてだよね」

「いいや、そんなことないよ。私達は何回も会っている。忘れっちゃたの?」

「……ごめん。全く覚え出せない」


確かにそれだと今日、自己紹介もしてないのに名前を呼ばれたというのは辻褄が合う。しかし、こんな美少女を忘れる事があるのだろうか。そもそも本当に俺たちは恋人関係なんだろうか。


「てことで本題に入ります!」

「え?今までの本題じゃなかったの!?」


桃葉は谷田の驚く姿には目を向けず、自分のバッグからクリアファイルを取り出した。そしてその一枚を取り出し、机の上に置いた。


「え、いや。これって。出すプリント間違ってない?」

「いや、これで合ってるよ」


谷田は何度も自分の目を疑った。それもそうだろう。桃葉が机の上に置いたのは……

記入途中の()()()であった。


「おまたせ修哉くん。約束、守りに来たよ!」




谷田修哉、十六歳。今日、知らない美少女に求婚されました。

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