#75 囚世:乖離虚域 part19
短いし中途半端だけどあげるわ
溢れ出る光の奔流が、幻象を貫く。
高さ40m、全長60mを誇る超巨大な身体の大半が削り取られる程、圧倒的な光量と攻撃範囲の砲撃。
しかも広域の光であるにも関わらず、圧縮を重ね殺傷能力が高まったものであり、容易く目標とその直線上の全てを消し飛ばした。
恐るべき体力を持ち合わせる幻象も、流石に光砲には耐えることが出来なかったらしく、完全に消滅することとなる。むしろ、よく耐えた方だろう。
そんな力の奔流の反作用は巨大であり、落下のスピードを全て打ち消し、跳ね飛ばされた俺は壁の上へと着地。手から離れたシュヴィは、壁際に退避していたシーアの元へと転がる。
「キルスコア獲得ゥ!!」
「はは、えげつないねお前。なんだよアレ?」
壁に斧を突き刺し、引っ掛けるようにしながら壁を滑り降りる。
ピコン♪
おっ、通知音。そしてスキル獲得と………壁滑り───そのままだな。
「俺にもよく分からん。そして分かってもまだ教えねぇ」
「ちぇー、ケチくさいよU。死んだと思ったのに」
「うっせ」
軽口を叩きながらも、見据えるのは幻龍の方向。
2対1となり、対龍の手札とあるこの状況、俺らが圧倒的有利なのは間違いないだろう。
地面に落ちていたシュヴィを──────
「あ!!それが言ってた銃ってやつか!いいな!?ちょっと触らしてくれ〜頼む!後生!」
あ、厄介なオタクになってる人いる。
まぁまぁ、こんな超強力有能武器が心底羨ましいのだろう?分かるぜその気持ち!残念だったなその銃は俺ンだ。
「まぁちょっと見るくらいならいいぜ」
だが、オタクくんが少し哀れなので貸すくらいはしてやろう。小声でシュヴィを喋らないように咎めておき、ほいと投げて渡す。
「おお!いいな、重厚でしっかり重くて機能美が───」
「まぁお前はそこで愛でてろや。その間に俺が幻龍をリストラさせてくるわ」
気合いを入れて、肩を回す。元気十分、HPは未だ残っている。武器は深斧、スキルも大半がクールタイムを終えた。
準備は良し。あとは覚悟を決めるだけ!よぉしと意気込み、1歩を踏み出す。
瞬間、体が爆散した。
〘称号【事故発生】を獲得しました〙
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【Player Dead】
リスポーンしますか?
『Yes/No』
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「───は?」
◆
「Uが、死んだ?」
テーブル上にてシステムが、1つの矢印の消失を告げる。
最もレベルが低いものの、一番生存力が高いという認識が、その死の衝撃を膨らませる。Lilyに驚きの感情を浮かべさせる。
「ふふ、幻獣は一体減りましたが貴方のところの主力も潰えた様ですね」
「なに、余裕そうね。それに一体じゃなくて二体でしょう?」
冷静に返すLilyだが、心の中の焦りを聖女は見抜いている。
そもそもLilyは最初から、幻獣をプレイヤー一人が倒せるとは考えて居なかった。
だからこそ、最もPSが高いシーアとUを同じギミックに集め、2人で相手をさせた。だからこそ、大きな対価を支払ってまでAliceを補助した。補助するのに邪魔な窓もわざわざ対物砲によって破壊した。
これまでのデータ収集によって幻獣の強さの序列を理解していたからこそ彼女は、幻龍に2人を充てたのだ。
だがその状況も覆り、幻龍対シーアの1on1という形。
形勢が一転二転し、結末が分からない。しかしひとつ確かなのは、再び形勢が悪くなったということ。必要なのは持ち直しだ。
(まだ、まだよ。大丈夫───)
「まだ大丈夫と思っているのでしょうが」
「───」
Lilyが保ってきた冷静さという仮面が崩れる。心の中を言い当てられたことで驚愕が表情に出る。
「最悪なのは、ここからですよ。勿論貴方にとってですが」
◆
「こっからどうしよっかな、君たちなにかいい案だして」
夏帆:街を探索してほしいです
みろろろろ:神殿見るべき世界観とかもっと分かりそう
コトネ:鏖殺鏖殺!サーチアンドデストロイや!!
「こいつら意見に纏まりがないわね……」
ギミックをクリアし、崩壊した乖離虚域が消滅した。アリスは今、Lilyとシーアと同じフィールドに立ち尽くしている。各所では激しい戦いが繰り広げられている所ではあるが、それを彼女が知る由もなく。
一旦目標をクリア、よく分からないまま幻鳥も消え去った今、彼女は暇なのだ。
「うーん、どうしましょ」
迷っている表情。だが、案ずることは無い。
理不尽は向こうから訪れてくると相場が決まっている。
『──────Pyooyoyo』
「───は?」
尊:は?
Kanon:え?は?なんで
Jake102:は?
残った火種が燃え盛り、響き渡るは焔鳥の鳴き声。
背後を振り返れば感じるのは煌々と光る炎、その熱量が肌を焼く。
伝説であるのだ。
その鳥は、最後の火種の一抹が潰えるまで死ぬことは無い。
「不死」と呼ばれるその性質が、その理不尽をフィールドどに再び降臨させる。
反射的に短剣を構えるアリス。手持ちの精霊は殆ど消耗し、効力の強いスキルはCTの最中。最初から薄かった勝ち目が、これにて消え去る。
AliceVS幻鳥。
延長戦、開始。
わ




