#69 囚世:乖離虚域 part13
何故こんなに幻鳥戦が伸びてるんだ!!
2話で終わらせる予定だったのに!
そういや古代の戦士くん達は、一律「古兵」表記にすることにしますた
例えば、毒が蔓延るフィールド。
そこに湧き出たMOBは、毒の攻撃を受けていることになる。もちろん耐性やらは存在するだろう。ダメージは受けないかもしれない。
しかしそれが、ダメージを無効化しているだけに過ぎない場合、やはりそれは攻撃されていると言えるだろう。
では、その場合ヘイトは毒の源へ向かうのか?
答えは否。
スポーンし、途中でダメージが入れば攻撃であるが、生まれる以前から始まったものであれば、それは環境だ。
MOBは環境を憎まない。
端的に言うならば。
神殿に蔓延る幻の燃焼は、彼らにとって環境と化した。
古兵らのヘイトはもう、幻鳥には向いていない。
◇
「───!?」
まず想定外であったのは、古兵らの誰1人として幻鳥へとヘイトが向かなかったこと。
43ある視線の全てが、アリスに突き刺さっているのが分かる。
先程と同じ様に数体ずつ相手にするのであれば、水精霊だけでも何とかなったかもしれない。しかし幻鳥にヘイトが向かないのであれば、今度こそ1対43ということになる。
出し惜しみは、許されないらしい。
「【精霊召喚】───【赤】【黄】【緑】」
赤羽444:おお、全部出すのか
敗北者鮭:ガチやんね
今契約している全属性の精霊を放出する。火属性、土属性、風属性の精霊。そのどれも等級こそ低いが、精霊は組み合わせることによって比類なき力を発揮するものだ。注ぎ込むコストが大きい程、その力は強くなる。精霊術士の本領はここからだ。
(対多戦闘の定石は、一対一に持ち込む事。でも、対面で戦ってたらタイマンでも勝てるかは微妙。少なくとも全員は到底不可能ね)
今のアリスに必要なのは、冷静に状況を分析し、最適を導くこと。少しでも下手な動きをしてしまえば、43の古兵達に呑まれてしまう。
幸いにも、古兵は未だ動きを見せず、先制は譲られたらしい。であればまずは何を──────
「──────飛んだ?」
若干の間硬直した戦場に、訪れた変化。この戦場における異物は、聖女の命令を受け行動している。その命令を受信した幻鳥が空へと飛び立った。
横に10mほど伸びた羽によって起こされた風が、周囲の炎を大きく揺らす。そして始まるホバリング。幻鳥は空中に高く止まるつもりらしい。
「まさか、私が戦っているのを高みの見物するつもり?」
古兵戦闘は、ギミックによる強制。避けることはできない為、消耗は絶対だ。だがここで幻鳥が空へと逃げ、戦闘に参加しないのなら、のちの体力差は更に広がることとなる。今彼女が最もすべきなのは
「そんなの、許さない。待ってなさい、今から引き摺り下ろしてあげる」
目の前を余裕そうに飛行するそれを、戦場へと叩き落とす事。
Alice様の奴隷:Alice様かっこいい!
時雨:16歳の少女設定にしては覇気あるな
◇
前方へと駆け出す。
それに反応し、43体の古兵達が動き出した。全方位から向かってくる。逃げ場はないが、逃げるつもりは毛頭ない。
様々な武器を握り、目の前の敵を殺さんと肉薄する古兵たち。バラエティに富んだそれらを視認し、警戒すべき武器達を確認する。
先制攻撃は、斜め後方から飛来した矢。
風精霊によりはたき落とされ、アリスに届くことなく落ちる。アリスは気に留めることしかしない。個別に行動するその利点、精霊は自立して戦闘を行う。
「土精霊、跳ね上げて!!」
正面にハルバードを持った古兵が迫ってくる。数秒を経て距離が大幅に縮まり近距離戦闘圏内に突入、古兵は戦闘体勢へと移行する。しかし彼女の目標は古兵では無い。無視をするアリスの眼前に突き立てられるハルバード。頭に突き刺さる寸前にて、アリスは空へと跳び立った。
土精霊によって円柱状に隆起した足場に乗り、同タイミングにスキル【発条跳躍】を発動。その効果は、トランポリンの如く弾性が足場に付与されるというもの。
上に打ち上げられる勢いに、スキル効果によるバネの弾性が合わさる。
結果、彼女は射出される様に空へと飛び出す事となる。
『!────phyoooo』
予想外だったのだろうか、接近してくるアリスを迎え撃つことはせず、その身を翻して特攻を避けるだけに留まった。
(ラッキー、これなら!)
幻鳥の頭上に躍り出たアリス。その第一目標は、羽根を切り落とすこと。
「【神髄解放】───【青】」
アリスが発動したのは、精霊術士の奥の手とも言える技。
精霊のHPの大半と引き換えに、一時的に等級を上昇させる奥義を発動させる。スキルエフェクトが発生し、背後の水の人型が大幅に大きくなる。
火事場の馬鹿力により存在が底上げされた水精霊は、更なる水量の生成と行使が可能となった。やることは一つ、一瞬でもいいから幻鳥の纏う灼熱を鎮火させること。
「水精霊、最大出力!!」
その声に応じ、空中に巨大な水量の水が生成される。
幻鳥の纏う炎を掻き消すには十分な量。
それを一度に幻鳥に叩きつけ──────
「風精霊!合わせて斬るわよ!!」
一瞬、炎が消えた隙。
そこに、鋭さを纏った風と合わせた刀をぶつける。
──────ザァァァァン!!!
『───Pyooooryoryo』
幻鳥の羽の、根元に切り込みが入る。
一気に飛行性能が落ちる。
そして畳み掛けるように、連撃。堕ちながらも羽にダメージを与えていく。
再び焔が幻鳥の身体を纏い始めるが、その前に土精霊により足枷を形成。幻鳥の足を掴み──────
「おらぁ!!!」
古兵へと叩きつけた。
勢い良く墜落した幻鳥に巻き添えになった古兵が4体ほど消える。地面に落ちた紅玉を、風の力によって巻き上げ手に収める。カウントが進む。
『───P』
再び硬直する戦場。
少し違うのは、幻鳥から迸る殺意による硬直であるという点。
どうやら、逃げようとした所を戦場に引き出されたことが幻鳥の琴線に触れたらしい。
『──────PYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAA』
その鳴き声と共に、再び幻鳥がフィールドへと炎を振り撒く。
蔓延る炎が更に拡大される。
「逃がさない」という意志を示すように、神殿の外にまでが炎で呑まれる。
「はっ、私も逃げる気は無いわよ」
古兵のヘイトは分散された。
しかしアリスは、優先順位を並行する。
「殺すっっ!!」
幻鳥との戦闘の中で、古兵を倒す事にした。
◇
今度こそ本当に乱戦であった。
そして彼女は、善戦したと言えるだろう。
出来るだけヘイトを幻鳥に誘導し、同時に幻鳥を攻撃しながら、隙をついて紅玉を抜く。それが最適な戦いであると判断した。
「はぁっ、はぁっ」
VR内でも心臓が跳ねているのが分かる。ゲーム内にも関わらず息がきれる感覚がする。
今アリスの脳内にあった最大の疑問は、「何故私はまだ生き長らえているのだ?」ということ。
スコアは(12/15)。古兵の幾度とない全滅を経て、あと3体という所まで到達した。
本当に佳境であった。
精霊は既に2体破壊され、残っているのは風と火の精霊のみ。
残っている古兵3体も、既にボロボロだ。
「本当にっ、余裕そうね!」
しかし幻鳥はその限りでは無い。
未だ煌光と光を放ち、その炎で敵をすべからく呑み込まんとしている。
『──────PyyyA』
突進技。大きな羽ばたきによる推進力が、その嘴に殺傷能力を付与する。
「──────!!」
短刀でガードしようとするが、その勢いに完全に負けてしまい、吹き飛ばされる。
思い切り吹き飛び、柱に叩きつけられる。
残りHPは1、負け濃厚だ。
(どうする!?)
戦闘描写ちとサボった
【神髄解放】
火事場の馬鹿力的な、窮鼠猫を噛む的な。
精霊は、生命を使って等級を一時的に格上げすることが出来ます。1つ等級が上がるだけで、使える力は数倍になるので、まさに必殺技的なやつです。
アリスの水精霊は等級下から二番目だったので、下から3番目位になります
ちなみに感想くれると作者は喜びます




