#66 囚世:乖離虚域 part10
みじかいですー
空中から飛来するそれらが、キューブ状の建造物と結合する。
兵装『L Series』とは、射出するものであり、射出されるものである。
その兵装は通常時では、遙か地下深くに格納されている。使用される時、島の側面から射出された後海底を経由、上空より飛来し近くの物体と結合して種々の射出台を形成するのだ。
正方形の〘乖離虚域〙。
まずLilyが配置したのは、【追尾ミサイル砲】、【対物ライフル砲】、【スナイパー】だ。リストの上部3つ、汎用性は極めて高い。
対物ライフル砲とスナイパーを【図書館】と【神殿】の中間に配置。マップの中央上部だ。
『幻獣』を誘導と分析する為、追尾ミサイル砲などを設置。フィールド上に点々と射出台が設置されていく。
続いて幾つかの射出兵装を射出した。
Lilyの度重なる試行が始まる。
◇
─────────ガガガガガガガガガガガガ!!!
背後から、地殻が削れる音がする。
地が割れる。後ろから、地面が波と化して襲ってくる。
そこに混ざる立方体の破片。飛んでくるそれを避けながら、走る。跳ぶ。
「だあああああああ!!!!!!」
未だ痛む頭を全力で回し、視界の端でシステムUIの司令を捉えながら、最適のルートを選び続ける。
幻龍はすぐ背後に迫っている。
感じる風圧と音、少しでも足を遅めればその顎に呑み込まれてしまう。
通り過ぎてすぐの街灯が噛みちぎられる。建物が押し潰される。
絶望的な状況ではあるが、先程とは若干状況が違う。
「!───また来たな!」
空を裂いて飛来してくるミサイル。
気が付いたらしい幻龍が体を揺らすが、追尾して着弾。
その体の一部が吹き飛び、龍の速度が若干落ちる。
「よォし、コレでまだ息が出来る!」
正直訳が分からないが、味方ならば何でもいい。逃げ始めてから数分、様々な補助が俺を生かしている。
少し距離が開く。再び浮き上がり空を飛行し始めた龍。
─────────ドドドドドドドド!!!!
今度は通り過ぎた龍の腹を【機関砲銃】が貫き続ける。
後ろを見れば、龍が回復のため少し停止したのが見える。
空からのミサイル。地面からの砲撃。挟み込まれるように幻龍を削り続ける。
確実にダメージは蓄積していた。
◆
〘ミサイル着弾。軌道表示:【───】命中率:【100%】敵性損耗率:【3%】〙
〘機関砲撃着弾。軌道表示:【───】命中率:【87%】敵性損耗率:【7%】〙
〘対物ライフル着弾。軌道表示:【───】命中率:【0%】敵性損耗率:【0%】〙
〘狙撃着弾。軌道表示:【───】命中率:【0%】敵性損耗率:【0%】〙
〘バリスタ砲破損。破損率:【100%】〙
配置した兵装。CTに入ったそれらが、成果を報告しウィンドウに表示される。
発射したミサイルは、左右に揺れるような軌道を描いて空中で着弾した。真上に撃ち続けたマシンガンですらこの命中率。
(飛行型。しかも巨大かつ恐ろしく長い。揺れるように蛇行する飛行形態は羽由来では無い──────龍、かしら)
推測。
(配置していたバリスタ砲が壊された。この点の動きからして、幻獣の移動経路と砲台の位置が被ったのね。踏み潰した───としたら、恐ろしく質量が大きい幻獣。鯨……地上種ならば象辺りが妥当)
推測。
残りの幻獣は2体。片方はギミックエリア内にいるため上手く干渉出来ず、もう片方は未だ微動だにしないためリソース温存のため放置。
「あら、お仲間さんは随分しぶといのですね」
「そうね、確かに。変ね」
ここまでのキャラクター挙動から、それぞれの矢印の中身が誰かは大体アタリがついた。
情報が集まった。
最終的に必要なのはそれぞれのギミッククリアであるが。
それを出達成来るのはそこにいるプレイヤーであり、Lilyができるのは最低限の補助。そして、【図書館】のギミックをクリアすること。
(やっぱり、最終目標は幻獣の撃破かしら。聖戦というのだし、必要なのは戦略的勝利──────あるいは……)
複数の策が動き出している。
自分は出来ることをやるだけ。
頼れる仲間に他は任せればいいのだ。
◆
〘警告:〔灼熱を啄む虚構【幻鳥】〕が出現しました。周囲の生命体及び機械は死を覚悟することを推奨します〙
〘乖離虚域第1層:【神殿】〙
〘参加人数:1人〙
〘虚ろなる奉納が幕を開けました〙
ギミックエリア【神殿】にて、Aliceは鳥の幻獣と対峙する。
そして同タイミング、ギミックの開始を示すアナウンスが。
【神殿】の中央部、柱に囲まれた中に天からの光が降りてくる。システムUIを見れば、『幻核を奉納をする(0/46)』という文字。
周囲を見渡せば、それぞれの柱の前にエネミーが出現してきたのが見える。
一言で表すならば、古代の戦士のような屈強なそれ。何より特徴的なのは、背中から大きく伸びた翼。被ったローブにより顔は隠れていて、その間からチラリと覗く身体は恐ろしく筋肉質。そして胸の中央に、何やら赤い宝石のようなものが埋め込まれているのが見える。
上裸+ローブ、裸足。その手には種々の武器。弓、長剣、双剣、ガントレット──────
それが、計46体。
「嘘……でしょ?これ全部倒せってこと?冗談キツイわよ」
引きっった笑みが浮かぶ。表情筋がピクピクと動く。
明らかに強そうな敵が46体に、専用アナウンスが存在するボス大エネミー。
それをこの狭いエリアにて相手にしなければならない。
─────────PyyyAAryoryoryoryoryo
鳥が鳴く。
それを合図に、古代の戦士が動き出す。
疲れとるから戦闘シーンはまた明日どす
1vs46vs1
どんな戦闘になるんだ………




