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New Eternity Online -PSだけで往く新世界-  作者: Amane Rinne
古代の枷は楽園を衛り、抑えられた羽根は再び拓いた
68/79

#65 囚世:乖離虚域 part9

つづきー


 

「立体機動Lv4」を始め、【悪路争覇】、「壁走りLv3」、「跳躍Lv9」。

 

 俺が持ちうる全てという全て。それを用いて街を走り抜ける。

 

「あ゛あ゛あ゛ァァァ、クソッタレ!!」

 

 跳ぶ。跳ねる。壁を走る。システムUIに従うようにして角を曲がっていく。

 1秒前の俺が、50の銃弾に貫かれ続けている。

 

 角を曲がり射線を切る。戦斧を投げて街灯を薙ぎ倒し、後ろへ蹴り飛ばす。

 

(よし!!5人掛かった!!転んだな!?)

 

 後ろをチラ見、喜ばしい成果(キルスコア)を確認する。少しの足止めに成功した。

 またこれを何度か繰り返せば、更に距離は開くだろう。投げた斧の元に走る。後ろを確認しながら地面に手を伸ばす。

 

「あ」

 

 斧、拾い損ね──────

 

「畜生ッッ!!ミスったあああ」

 

 手が、空を掴んだ。

 

 斧は諦めて走る。後ろは振り返れない。スピードが落ちたら、蜂の巣にされて一貫の終わりだ。

 

 最悪だ。本当に、最悪だ。

 走り始めてから、一向に状況が良くならない。なんなら悪化の一途を辿っている。

 

 道を走る(ダッシュ)。左腕が貫かれるが、【光喚】なので問題は無い。

 壁を走る(ダッシュ)。右腕が貫かれるが、欠損はしなかった。

 空中を跳ぶ(ダッシュ)。地面に跳ねた弾が足を貫き──────あ、これマズイ。

 

 後方を見れば、俺に向かう無数の銃口。空中で身動きが取れず、脚が貫かれ着地が困難。

 

「『フラッシュリフレクト』!!!」

 

 パリィ補正。持続時間は約5秒。体勢は、問わない。

 

 

 ──────キキキキキキキキキキキキキキ

 

 

「だははははは!!気持ちイイ音だなオイ!!」

 

 もはや、ヤケクソだ。

 空中で銃弾を弾き返す。身を捩り、珍妙な体勢でできる限りパリィ。飛来した数十の弾丸。その殆ど打ち返す。

 

「『サイドスライド』!!」

 

 そしてスキルを発動。

 

 慣性無視。空間ごと、体がズレる。無理やり体を起こし、着地。直ぐに足を回復させる。ここにきて初期配布アイテムが役に立つとはな。

 

 打ち返しのヒット警官(スコア)は───畜生、たったの3人……か。

 

 残りは約40人。

 俺は斧を1つ失い、少しづつ削れたHPは残り2割。【光喚】の効果時間はそろそろ終わり、その他のスキルもCTに入った。

 

 既に厳しい状況。

 このまま逃げていたら、ジリ貧だろうな。

 

「……はァァァ、良いよもう」

 

 なのでもう俺は、諦めることにしよう。

 軍隊の方へ向き直る。

 

「来いよ、無双ゲーのMOB扱いにしてやる」

 

 俺の特技は何も考えずに殺すこと。

 全員、三枚おろしだ。

 

 

 ◇

 

 銃弾を避けるのに最適な行動は、パリィである。

 もちろん『フラッシュリフレクト』があればその難易度は易化するが、スキル無しでもパリィは可能。

 

 ただ、足りないのは手数だ。どれだけ上手くやっても、一振で弾けるのはせいぜい5程度がいい所。

 

「ア゛〜頭、痛ってぇなァ」

 

 ならば、どうするか?

 増やすのだ。

 参考は、【縋り憑く深淵】。奴の【光喚】の使い方を真似る。

 

 光で剣を構成(アウトプット)

 

 その数、50。

 

 空中が、光の剣で埋まる。

 光の総量は一定だ、剣の数を増やせば増やす程、その大きさは小さくなっていく。

 

 最低限大きさを保ちながら浮遊させたその剣で、軍隊を迎え撃つ。

 

 

 ────────────キキキキィィィィン!!!!

 

 

「は、は、ハハハ、ハハハハハハハ!!!!」

 

 全速力で近づきながら、【光喚】の剣にて銃弾を全てパリィ。その全てを思考入力にて動かしている故、慣れないうちのその負荷は大きい。

 

 だがそれを上回る、爽快さ!!

 

「【天ノ叛逆】ァ!!!」

 

 そしてスキル効果により、【光喚】の剣全てが拡大される。

 直剣大になったそれらで、連続で切り付ける。多段攻撃と化したそれが、警官達を一撃で薙ぎ払う。

 

「チィッッ、リロード早ぇよクソ!」

 

 リロード(CT)が空けたらしく、再び襲来する弾丸の群れ。この近さでは対処が出来ないのでバックステップにて距離をとる。

 

 そうして再び弾丸の嵐。潜り抜け、逸らし、捩りあるいは切り裂いて。猛攻の隙間をぬって接近していく。

 

 纏う光の剣に護られながらも奴らのFF圏内()に入り込んだ俺は、【滅光の深斧】で『アクセルストライク』を──────

 

 〘警告(Warning ):〔天空を呑み喰らう虚構【幻龍】〕が出現しました。周囲の生命体及び機械は、死を覚悟することを推奨します〙

 

 急に目の前が、長く揺らめく影に覆われる。

 悟ったように上空に視線を投げかけてみれば、空を泳いでいる蛇のような……


 いやあれ、龍じゃねぇか。

 え、こっちに堕ちて──────

 

「なああああああああああ!?!?!?」


 全力ダッシュで即時離脱。

 後ろを向けば、軍が全て押し潰されて消滅したのが見える。


「あ〜、その、ナイスキル!敵の敵は味方……って感じじゃ無さそうだなァぁぁぁ!!」

 

 目標変更(ターゲットチェンジ)

 地を這うようにしながら再び浮上した龍の、視線と意識とが俺に向かってきているのが感じられる。


 システムUIが再び音を立てた。

 それに従い、俺は再び駆け出した。


 最悪は連鎖する。

 

 

 ◆


 【図書館】の中の静かな空間。

 テーブルの光が輝く。

 

「あまり宜しくなさそうな状況ですね」


 聖女は微笑みながら、そう囁いた。


「ええ、そうかもしれないわね」


 確かに状況は悪い。

 5人のうち、3人が、4体のうち、3体の幻獣と接敵。

『幻獣を避けギミックをクリアする』という策は既に破綻した。聖女からすれば、非常に状況が悪いように見えただろう。


(全く、挙動の制御が難しすぎるわ)


 心の中で少し愚痴る。

 まずLilyに必要であったのは、各々の駒が()であるかの特定。そしてそれに対応して存在する幻獣の特徴を確定させること。


 実際のところ、プレイヤーたちが幻獣にエンカウントしたのは計算のうち。なんなら、自分からエンカウントさせるような挙動を命令していた。


 だが、プレイヤーたち皆が皆、想像以上に乱雑な挙動をしたのだ。命令に対応する行動のブレ幅が、予想以上に大きい。


 しかも命令を全員に対して行い、その結果を観察。行動のブレを予測し幻獣の移動経路をも予測しなければならない。

 そして初めて、チェスのような駆け引きが可能となる。


 そして本来の予定ならもう少し遅いエンカウントとなる筈だった。


 だが。


(あの動き方、もしかしなくてもフィールド上に敵性MOBが居るのね。それが聖女の駒であるか否かの判断が必要……)


 予想外の要素の参入。それにより幻獣とのエンカウントが早まった。もしプレイヤーと幻獣の相性が悪いのならば、少し予定が狂ってしまうかもしれない。少し憂慮する。


「でも、ここからよ」


 手駒を切る。策の修正と拡張を始める。

 見えない敵性MOBすらも考慮し、兵器を利用して、最良の未来を作り上げる。


 それがLilyの役割だ。


「『L Series』起動」


(まずは、幻獣の解析を済ませる。そして選別──────ね)



 ◆


「…………」


「…………っ」


 唯一、幻獣にエンカウントしていないペア(・・)

 夜鳴とヘラは、既にギミックエリア【塔】に到達していた。偶然が必然か、Lilyと同じように基盤前に転送された彼女達。


 しかしその間の空気は厳しい。


 別に大したことでは無い。この世界にて、未だ自我が育ちきっていないヘラ(子供)が、夜鳴を一方的に嫌っているだけ。


 現在の唯一の精神的支柱であるUが離れていくことを、今彼女は何よりも恐れている。


(………全く)

 

 夜鳴も過去の不安定な時期があった。その時の精神的依存先がUであった為、ヘラの気持ちを夜鳴は理解している。

 そしてその不安定な状態が、ヘラはさらに重いことも感じていた。

 

 すでに抜け出した者として、何とかしてやりたいと夜鳴は思う。のだが、ヘラはこちらに敵意を向けるだけ。解決は随分難しそうだ。

 

「なんで私がこいつと………ブツブツ」

 

 そして最初からNPCという特性的上、いずれ訪れる別れは確実。

 

「おいガキ」

 

「あ?」

 

「私がお前を助けてやる」

 

 ならばそれまでに、自立させてやろうと夜鳴は決めた。

 先輩としての役目だ。

 

「チッ、何様よ」

 

 しかし道は険しい。

やっとUが幻龍とエンカウントしたので本格的にシナリオが進みますん


夜鳴の過去はいつかしっかり描写しますん

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この前の兄妹超高速じゃんけんといい今回の銃弾を弾き「返す」ことといいほんとに人間かどうか真面目に考えたほうが良いかも
[一言] 痛みを代償に高パフォーマンスするキャラ、ほんとうに大好き。Uさんが俺の琴線に触れ続けている… ギミック確定のために何をすればいいのかがわかんねえ。 選別と言ってるから、フィールドギミックと…
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