#59 囚世:UnRome part3
門番くんのビジュ、あんま考えてないのでほぼ描写ありません
どんなのがええかねぇ
─────────ビィィィィィィィィィィィイ!
戦闘開始から約3秒。
耳をつんざくような警報音が鳴り響いた。
全員に動揺が走る。まさか、戦闘開始から数秒でスキルが発動されているとは誰も思わなかったらしい。
門番が手に持つ槍を地面に叩きつけるのを視認する。
その瞬間、HPが3割消し飛んだ。
「初っ端からかよ!?」
発動されていたスキルは『立哨』であろうと推測。もしかしなくても、戦闘開始前からスキル判定が始まっていたらしい。
ダメージは割合か?それとも固定値か?いやそれよりも先ずは──────
「───おらァ!!」
【Insulator】を再開させると同時に、【鋼鉄の小鬼長斧】をぶん投げる。狙いは門番の手元、丁度取り出された角笛。
最善は角笛破壊であるが、可能かどうか分からない以上狙うべきはモーションキャンセル!
スキル間隔がこれ程狭いのは予想外、『立哨』のダメージ付与直後に『轟令』のスタンが入ってしまえば、後の戦線維持は絶望的だ。
てか、アリスさんも予想外な顔してるってことは、スキル発生間隔は完全ランダムか!?
まぁいい、ここでモーションキャンセル出来るから戦況はリセット。問題はどうスキルを攻略するか──────
「はは、嘘だろ?」
思考の波が、パリィィィンという高い音に中断される。
武器が破損した時の音だ。それに加えて、武器と武器がパリィ判定でぶつかった時のエフェクトが舞っているのが見える。
あのやろう、俺の投げた斧を槍で破壊しやがった!??
あの速度の投擲を正確にパリィしたことに驚愕する。そして武器破損もしてしまったのが非常に痛い。
ちくしょう、AI積んだエネミーが取っていい動きじゃねぇぞ。
とりあえず、武器を装備するためにUIを操作する。
『轟令』発動までの猶予を見ようと門番の方へ視線を向ける。
そして次の瞬間、角笛が掲げられた。
果たして、猶予は許されなかった。
──────ボオオォォォォォォォォン!!!!!!
耳を慌てて抑えた両手を貫いて、大音量の波が全身に叩きつけられた衝撃を感じる。
痺れたように動きを止めるアバター。操作が不能となり、魂が体から切り離されたような心地になる。
そうして止まること僅か数秒。
その数秒の時間が命取りになる。
0秒経過、門番が手持ちの槍を大きく振りかぶる。
1秒経過、門番が狙いを定め見据える。
2秒経過、恐らく1番ヘイトを買っていたのであろう俺に向かって、その槍が投げられた。
ッ!動けるっ!
避け─────────られねぇッ!
永遠にも感じられた刹那の拘束が解け、身を捩って避けようとするも間に合わず。
左肩を貫かれ、腕がポリゴンとなって消える。欠損判定になってしまったようだ。
開始10数秒で、右手だけしか使えなくなってしまった。単純計算でDPSは2分の1。
残りHPは、【根性】で残った申し訳程度の1。
クソが、最悪の開幕だ。
◇
焦った顔のアリスさん達が、慌ててヘイトを前に取りに行ったので俺は大人しく戦線を離脱する。
幸いにも俺は主砲たり得る火力を持ち合わせてはいないので、多少の離脱でも影響は無いのが良いな。
だがここで丸投げするのは絶対に違う。ゲーマーとしてのマインドが許されない領域だ。だからさっさと準備を終わらせてしまおう。
とりあえず、無くなってしまった武器が先決だな。
それにしても壊れるとは……あの槍、なんか特別な効果でもあんのか?
いや、違うか。そういえば【鋼鉄の小鬼長斧】は耐久値が低かったな。あーちくしょう、壊れるのはしょうがなかったのか。
1つ消費した割に、HPは1まで削られるとかコスト対効果は最悪だな。と心の中で独りごちながら指を動かす。
UIを操作、右手に武器を装備する。
それは元は破鉄の手斧であり、つい先程〘縋り憑く深淵〙を倒して深化した武器。
検証0、詳細すら初めて見る。そんなタイミングでお披露目だ。
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アイテム:【滅光の深斧】
効果:不明
備考:よく分からない斧。永久帰属型。
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「初期状態は毎回こんななのかよ……」
それほど前ではないはずなのだが、酷く懐かしさを覚える表記。
ここだけ見ると控えめに言ってゴミ武器にしか思えないが、その実態を俺は知っている。
「おっと」
実体化した瞬間、片手だけにかかる重量。酷くバランスが悪いせいで、どうも不安定だ。
いや、どうにかなるか?
解決の心当たりのあるスキル詳細を開く。
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スキル名称:【光喚】
Lv:───
効果:変形可能な光の輪を召喚する。持続時間600s
発動:アクティブ
CT:600s
備考:光に縋り続けた騎士の想いの残滓が結晶化したその光は、来る深淵すらも呑むことは叶わない。
取得条件:〘縋り憑く深淵〙討伐報酬
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「くく、良スキルだねぇ」
攻撃力や耐久値に対する明言は無いものの、純粋に手が1つ増えると考えればそれだけで強さが計り知れる。
発動。
思考コマンドにより変形し、失った左腕を補う。
さぁ、これで戦線復帰できる。ここからが本番だ
◇
「Lily、状況は?」
最後方に居たリリィに状況を聴く。が、正直分かっている。
轟音が鳴り響くと共に、シーアが後方までノックバックされて飛んできた。
同じく夜鳴さんが吹き飛ばされてるのが見え、振り向こうとしたリリィが慌てて回復魔法をかけた。
「だいぶ悪いわね。でも火力は足りてる。ちょっと時間を稼げるなら、こっちが撃ち込むわ。」
「了解」
「てかあんた……いや、いいわ。復帰出来るならヘイト稼ぎよろしくね」
なにか言いたげな顔だったな……まぁ手が光ってたらそうなるか。
質問は後でも受け付けません!なぜなら俺もよく分からんからな!!
さぁて、検証の時間だ。
「───!」
【跳躍Lv9】を発動、前傾姿勢で思い切り踏み込む。弾丸のように発射される身体を感覚で制御しながら、門番へ肉薄する。
真横を通り過ぎたシーアのビックリした顔を横目に、更に踏み出し加速。
夜鳴さんが門番と攻防を繰り広げているところ悪いが、横から失礼させてもらおう。
俺に反応した門番が、迎撃しようとこちらに槍を振りかぶるが、させるかよ!!
「っらァ!!斧は酷使される運命なんだよォ!!」
加速を維持したまま、滑るように足を踏み出す。そのスピードを全て載せて、大砲のように撃ち出された【滅光の深斧】が、手を引いている門番の槍を弾き飛ばす。
門番が槍を掴み直している隙に、懐に潜り込む。
左手から繰り出された掴みを避け、流れるようにハイキック。頭を引いて避けられたので追撃ッ!しかしその前に多数の反撃が返ってくる。
超速で迫る槍。見極めろ。
頭、右肩、頭、腰、胸、左腕!避けて避けて避けて、ここだ!
「【フラッシュリフレクト】ォ!!」
UIを操作、『戦斧:旧式』を出す。パリィ判定に補正が入った一撃で槍を上に跳ねあげる。槍を持っていた右手は完全に上がった。このタイミングの攻撃を防ぐのは不可能!!
門番の空いた左手が俺の体に触れる──────が、なにかするより先にダメージを与えられる。
ここが好機ィ!
「『飛牙』ッッ───んなっ!?」
体術スキルの貫手で喉を狙った右手が空を切る。そして景色が下がっているのを確認した。
押された?いや、瞬間移動か!3つ目のスキル『転移』で強制的に移動されられた。とりあえず追撃を──────
────────────キィィィン!!!
追撃をしようと駆け出した体が急に重くなる。ステータスを見ればデバフのメッセージ、HPを見れば最大値が目減りしている。
門番を見れば、着地と同時に槍を地面に叩きつけるモーション。
2度目の『立哨』が発動された。
「チッ、何パーセント減だ!?」
どんどん体が重くなる感覚。叫ぶように状況を聞く。
「毎秒5%だ!持続は恐らく10秒!!」
後ろから飛んできたシーアの声。
それと同時にリリィから回復魔法が届いた。意図を把握する。
移動速度が下がりきる前に走り出した方向には、最初に投げた【滅光の深斧】が。【戦斧:旧式】をインベントリに仕舞い、拾い上げた時点で5秒が経過する。
門番の方を向くと、アリスさんとシーア、ヘラがダメージを稼いでいるのが見える。『立哨』発動中は門番は仁王立ちの無防備な状態になることを把握した。
「離れて!魔法発動するわ!」
8秒経過したタイミングでリリィの声が響く。3人が飛び退いたと同じタイミングで、その間を挟み込むように炎の幕が戦場を覆う。
完全に炎に覆われて、門番が見えなくなった。発動されたらしい魔法は炎の壁のようなものだ。
─────────ビィィィィィィィィィィィイ!
鳴り響く警報音、しかし2度目の正直。ダメージ変動は0である。しかしそれを確認する前に俺は【投擲】を発動。
「やっぱりダメージトリガーは視認っぽい!!これで───」
「──────らァ!!!」
リリィの声と被る俺の掛け声。
【滅光の深斧】を投げたその先は、リリィの後方1m。スキルの発動間隔が不明瞭な為、一応ということにはなるが、『立哨』直後の『転移』警戒。
功を奏した。
鈍い金属音、突如出現した門番の頭にほぼ同タイミングで斧がぶつかる。クリティカル判定、若干のスタンが入った様だ。
リリィの方にダッシュしていた夜鳴さんが、スタン中の門番に飛び蹴り。
何らかのバフ効果のエフェクトで、白く輝いた軌道が空中に残る。
その隙に離れるリリィ。入れ替わるように、俺とシーアが接近する。
左腕の【光喚】を変形させると同時に、【天ノ叛逆Lv5】を発動。大剣の形となった左手の光が、スキル効果により巨大化する。大きく振りかぶり、未だスタン中の門番に振り下ろす──────が。
「間に合わねぇかッ!」
『転移』により距離が取られる。
戦況がリセットされた。
しかしその体力は着実に削れている。
ちなみに天ノ叛逆は、巨大化バフ効果が発動する時に、体のどの部位あるいはどの武器に発動するかの思考入力がこっそり行われています。
勝手に心読んでます




