#53 我吶喊して急がねばならぬ
短いけどなんか出したくなったから出す
おはようございます。ムクリ
宿屋のベッドから体を起こすと、未だ寝ているヘラがうなされているように寝返りをうつ。ロングスリーパーな彼女は俺が起きたことでようやく目が覚めたようで、目をシパシパさせながら上体を起こした。
「今日の方針会議〜」
『ドンドンパフパフ』
「───むにゃむにゃ」
「えー、今日はですね、顔を隠せる被り物を探しに行きます。」
『わーわーぱちぱち』
クッソ適当な間の手を入れるシュヴィに、まだお眠なヘラ。だが残念、この問題は割と解決を急ぐので、我吶喊して急がねばならぬ。
「そいじゃあ頑張りましょう!!」
『朝から煩いです』
「お前は一体なんなんだ。」
さて、気合いを入れたはいいもののどこから探していこうか?とりあえず──────
◇
「えー、そしてやって来ましたのは防具屋さん!」
『てっててー』
「……てっててむにゃむにゃ」
始まりの街の防具屋とはこれまた違う内装。『頭装備専門店』という名前だし、収穫は期待できるだろう。とりあえず入って見ましょか。
こじんまりとした広さの店で、並んでる商品の数はそれほど多くは無い。
「とりあえず、みんな1つ被り物を選んでどれが良いか決め合おう」
「……りょ」
『分かりました。といっても私はマスターについて行きますが。』
10分間ほど見て回ろうか。
◇
『これはどうですか?』
ある程度時間が経過したため再び集う俺たちは、報告会を行っていた。
まずシュヴィに勧められたのは、馬の頭を模した被り物。大きさは実物大で、首まですっぽり入るだろう。インパクトこそあるだろうが、俺は羞恥心を胎盤から持ってきているのであくまで最終手段。平然とこんなものを勧められるシュヴィのメンタリティに戦慄した。
「……おにいちゃ、これは?」
ヘラが手渡してきたのは、金メッキの仮面──────!?
死ぬほど重い。どうやらメッキではなくリアルガチ純金らしい。お値段は脅威の5000万モネで、買えるわけがない。寝惚けているとはいえ、懐事情を知りながらこんなものを持ってこられると素寒貧な気持ちになってくる。割と資産家なハズなのに。
「そして俺は…………」
先行2人のチョイスが絶望的であると判明したので、真打である俺のターン。俺が手に取ったのは──────
「パンツ……」
パンツ。紛れもなくパンツだ。女性物らしく、ヒラヒラした可愛らしいものが付いている。引っ張ってみると十分な伸縮性が確認できた。
「おにぃちゃ、ヘンタイ……」
決していやらしい気持ちではなく、純粋に存在に対する疑問が湧いたため弄り回していた俺。眠そうな目をしながらそんな俺を批判する眼差しを向けるヘラ。
見つめ合う両者。
そして気まずくなった俺は、手に持っていたパンツを無言で床に叩きつけた。
◇
「二度と行くか。」
『英断かと』
なんだあのクソみたいな品揃えは。人のことおちょくってんだろ。
頭装備専門店だから期待していたが、頭ネタ装備専門店だったというオチ。大幅では無いが、確実なタイムロスである。
店を作ったやつは相当変な趣味してやがる……。とりあえず馬の被り物は買ったけどさ。
「うーむ、どうしよか。さすがに馬の被り物は嫌だよなぁ」
「私も、被り物いる?」
「あっ」
ヘラさんも顔割れてましたね。顔隠す為のものが2人分必要ですわ。Orz、
「さぁ、我々の発案係シュヴィ君よ。なんか案を出したまへ」
『狩りをしましょう』
狩り?何故───あー、ゴブリンザムライか。
ゴブリンザムライがドロップした兜は顔が見えるものの、顔が隠れるレアドロップもあるかも知れない。というか、そういうって事は心当たりがあるのだろう。
「どこで?」
『右側のエリアです。【枯れた栄華の墓地群】のレアモンスター、『追憶の騎士』のレアドロップに【霞目の鎧兜】という物があります。それは顔を全て覆えるハズです。』
ほほぅ、それはいいことを聞いたな。
「じゃあ早速、行ってみようか!」
◇
─────────キィン!!!
「その首もーらいっと」
アクセルストライクを発動し、首目掛けて斧を撃ち込む。鉄判定なのか容易く壊れた鎧こど首を切り離し、目の前の剣士はポリゴンと散った。
「なんというか、思ったより墓地墓地してるなぁ。」
薄暗い雰囲気で、十字架がそこら中に刺さっている。ちゃんとした墓というよりは簡易的ではあるが、墓地としての機能は十分に果たしているだろう。
さて、目的のレアエネミーを探そうか。
ちな頭装備専門店はプレイヤーが経営してます。主人公は明らかに店のチョイスミスりましたね




