#52 気づき
更新です
「あー、えーっととりあえずお金払いますね」
「いえいえ、それはU様───悠様に差し上げます。お代は要りませんからそのかわりにお話をお聞かせください」
これは一体どういう状況だ?というアイコンタクトを委員長に送るが目を逸らされる。何故…………。
「じゃあお話とは何を……?」
「とりあえずお2人の馴れ初めを──────」
「ちょっとお爺様!そういうのじゃありませんって!!」
なにか言おうとしたマスターの言葉を食い気味に止める委員長。というか、この人たち祖父と孫の関係だったのかよ。世間は狭いというかなんというか。
「ではお2人の関係は?」
「えーっと、彼女はクラスメイトで───ゲーム友達?です」
「…………ふふふ、なるほど。これは苦労しそうですね」
「いや何が?」
1体どう言うことだってばよ。状況が、飲み込めないのは俺だけか?優羽さんは顔が赤くなって使い物にならなそうだし、マスターの雰囲気はどこかおかしい。
「ちょ、ちょっと悠君は一旦奥に行ってくれないか……?言い聞かせねば……」
「?まぁいいけど……」
◆
「それで、彼が優羽の言っていた人なのかい?」
「……はい。」
サイアク、ほんとに最悪だ。よりによって悠君がお爺様と知り合いだったとは。
自分で言うのもなんだが、うちの家は割と名家であり歴史や財力が少なからずある。だからこそ、家は結婚やお付き合いと言ったことにとても厳しいのだ。つまりは家が縁談を持ってくるのが常で。相手も名家あるいは相当な資産家であることが求められている。
とはいえ、私も乙女の端くれ。自分の恋する相手と付き合いたいし、愛する相手と添い遂げたい。
そして察しているだろうが、私の意中の相手は天宮悠くん。かれこれ4年ほど片思い中である。
ってそんなことはどうでもよくてだな!
彼の家柄は知らないが、一般家庭ならまだいい。お爺様にダメだと言われて多少苦難があるだろうが、私が駆け落ちしてしまえば済む話なのだから。でもこの様子だと、悠君はお爺様にとっても気に入られている……。
「何処の馬の骨とも知らぬ奴に惚れたというからどんな悪い男に釣られたかと思えば、まさか悠様だったとは。これはこれは喜ばしい、今日は親類共々赤飯を炊かなければな。」
「ゼッタイ辞めてください」
ハァ、やはりこうなるか……。お爺様が誰か───特に私と同年齢近い男性を気に入るのは非常に稀なのだが、だからこそ気に入った人を推す気持ちが強すぎるのだ。
「とにかく!私は私のペースで彼を───こ、攻略するので!放っておいてください!!」
そんなお爺様の性格だと、私たちを無理やりくっつけようとしかねない。うちの財力だと可能ではあるだろうが…………やっぱり相思相愛になりたい。
それに彼はそういうことに関してはとっても鈍い。なにせ、4年間アタックし続けているのに気づく素振りもないし。私がチキンであんまり大胆にいけないのも問題なんだけど……。
だ、だってまだ全然進展無いし………………。
「ふふふふ」
まったく他人事だからってニコニコしやがって、嫌なお爺様。
◆
何が何だか分からないまま奥に追いやられた俺は仕方なくスマホを弄っていた。
といっても別に見たいものも無かったので、ただ無為にゲームニュースを開く。
『新エリア【霊山の麓】が発見される!』『フィールド周回MOB、伝説種モンスター【技巧兵:守護神】について』『神種の正体とは!考察』『プレイヤー最高到達レベルが180に』などなど。
ふむ、やっぱNEOについての記事が多いな。純粋にプレイ人口も多いし、やり込み要素もアホみたいにあるからだろう、無数に記事が出てくる。というか今って世界のどれぐらいを攻略してるんだろうか?進行度が分かりにくいのは難点だな。
お、面白そうな記事──────というか心当たりがあるものを発見した。
『大人気VTuber「アリス」がレジェンダリーシナリオの攻略を発表。メンバーはトップランカーらか』という題。ちょっと見てみると、大した内容は無いものの参加するプレイヤーた についての詳細が記事にされていた。
Lilyに夜鳴さん、シーアと アリスさん。彼らはNEOでもトップランカーを張っているらしく、それなりに研究されているらしい。ご苦労なこって。俺のことは書かれてない──────というより、正体不明のプレイヤーとなってる。というかランキングってなんなんだ?そんな表示今まで見てねーけど。
次の記事は…………げ
『謎のNPC「ネオ」とは?』
おぉぅ、まさか記事になっているとは、相当目立ってたんだな(白目)。まぁヘラちゃんが1人消し飛ばしちゃったし。
あんな大人数居る中でそんなことをしてしまったのだ。もちろん注目はされていたし、記憶にも残ってしまっただろう。
─────────ん?
あれ、そうじゃん。俺の顔ってネオとして割れてるんだわ。しかもFlannel諸君にも割れてるな。
……………………………………お?ヤバくね?
「え、よく考えたら俺身バレ寸前じゃね!?ネオってバレるくね!?!?」
少なくとも、アリスさんの配信にそのまま出たら確実にNPCバレする……!あれなんだかんだいい感じの隠れ蓑だし、どうにかしなければ!
「──────あの、頭抱えてるとこ悪いけど、お爺様との話が終わったって伝えに来たよ」
話し終えたらしい優羽さんがこちらに歩いてきた。やめて、変なものを見るような目しないで。俺だって困ってんのに……。
「て、てかさ悠君!」
「ん?」
「お爺様に聞いたんだけどっ、NEOやってるってホント!?」
やめてくれ優羽さん、その話題はオレに効く。
「やってるヨ」
フッ、だが俺はポーカーフェイスのプロッ!こんな悩みはおくびにも出さないぜ。
「じゃ、じゃあさ!!」
しかし、どうしようか。キャラクリし直しとかは無理だろうし、髪色とかを変えようにも変え方が分からぬ。
「───ふ、フレンドにならないか!?」
もういっそ…………顔隠す?
「ど、どうかな……」
「んぇ?」
ごめん優羽さん、話聞いてなかった。
顔…………………………隠す?
何言ってんのか訳分からんと思うけど、急遽西サハラの本を読まねばならなくなりました。更新が滞りますing




