#51 ユニークパーソンエンカウント
寒いからココアを買ったけどガワが熱すぎて飲めないと判断、窓際で冷まして30分待った末にガワがちょっと熱いくらいになったから飲んでみた。
ぬるかった(((
バカは私です
飯を済ませ、NEOを始めた──────わけでなく、俺は夏の暖かな朝日の中、散歩をしていた。
当たり前と言えば当たり前だが、参加するらしいクエストは日程が決まっていて(具体的に言えば明後日の夜)、直ぐにログインする必要がないと分かった俺は、少し用事を済ませるために外出していたのだ。
ジョギングによる体力作りも兼ねているので、一応ゆっくり走っている。
「到着……っと。」
そうして走りながら道を進んでいた俺が足を止めたのは、『Game La Bar』という名前のバー。絶妙にお洒落とは言い難い、変なダジャレみたいな名前であるが、中はちゃんとお洒落な店である。その名前から察せると思うが、大のゲーム好きの人によって経営されている、ゲームショップとバーを兼ねているお店だ。
ゲームショップとは言ってもそれだけではなく、フリースペースではゲームの貸し出しとかもしてくれる優良隠れ名店なのだ。
といっても俺が見つけた訳ではなく、経営者が直接の知り合いで本人に教えてもらっただけだが。
「お邪魔します」
「おお、いらっしゃい」
カランカランと入店を報せる鐘の音が響く。まず目に入るのは、細めのスーツをピシッと着こなした老紳士。彼はここのマスターだ。穏やかな眼光に丁寧で品のある所作からは彼の性格が伺えるだろう。
こんな紳士がゲーム大好きと言われれば少し戸惑うだろうが、今の時代は老若男女だれもがゲームをするし、個人の嗜好と言えばそれまでだろう。
「ではU様、ひとまず1ゲーム指しましょう」
「いっときますか」
そもそもの出会いがチェスゲーであるからか、会う時はだいたい一局やることが習慣化している。そこだけ見ればルックスからのイメージと合致するが、ゆるふわな育成ゲーとかもするのだから人は見た目では測れないものである。
「じゃあルールはいつもので?」
「ええ、『自他統合進化』有りでやりましょうか」
ただ、チェスをやると言っても普通のチェスではない。自分で言うのもなんだが俺たちの腕前は相当高い。つまりより高度な駆け引きが出来るのだ。だからただ普通のルールでやるのはつまらないということで、自由度を高めるための特殊ルールがある。
それが自他統合進化だ。
取った敵駒が行ける方向から1つを選び、取った自分の駒に加えるのだ。例えばポーンでビショップを取り、右上を選択した場合、その瞬間からポーンは前と右上に移動できるようになる。また同じ方向にふたつ積んだ場合は進む距離が2になる。そしてなんと、ポーンに限り自分の駒も取り込めるのだ。敵の力を削ぎに行くか、自分の防御を削って強駒を作り攻めに行くかの塩梅が駆け引きとなる。
正直、毎ゲーム駒の進む先を覚えるのはダルいが、ルールとしては面白いのだ。
「先手は私でも?」
「どぞどぞ」
「ではまずD2をD4へ」
まぁ程々に頑張ろうかね。
◇
「ほい、チェックメイト」
「ふふ、やはりU様はお強い」
「まぁ弱くはないだろうね」
統合進化を繰り返し、最終的に射程がめちゃくちゃ伸びたクイーンでチェックメイト。
無事勝利を収めることが出来た。毎度毎度ギリギリではあるが、なんとか俺が勝つ。マスターが楽しめているのか微妙だが、顔がニッコニコなので良いのだろう。
「ではU様、このゲームに免じて1商品、3割引致しましょう」
そして形式的な感じではあるが、俺が買ったら商品を割引してくれるのだ。買い物目当てで行くことが多い俺にとっては非常にありがたいシステムである。
さて、ここに来た目的のブツを買おう。
「お、『コンクエ』の続編もあるし『インクリ』も最新版もあるな。豊作だねぇ」
目的のブツといっても、何か一つを目指して買いに来た訳では無い。せっかくの夏休みなので、面白そうなのを2〜3本消化しておこうという考えがあったのだ。
このバーはマスターがマニアックなおかげで様々なレアなものもだいぶある。俺はどっちかと言うと、大衆ゲーよりはコアで面白いゲームが好きなので、ここを重宝している。マスターとはネットで知り合ったが、こんなに近いところで店を構えていたなんて奇跡のようなものだ。
ちなみにコンクエとは、ゾンビを率いて人間を滅ぼすというテーマのAADV兼RTS、『征服せし屍』のことで、インクリは『インターナルクリエイション』という天地創造ゲーである。どっちも面白く評判は良いものの、少しイロモノゲーだ。
色々と物色している俺を少し離れたところで楽しそうに見ているマスター。
─────────カランカラン
しかし、店に入店音が鳴り響いたことによりマスターの意識がそちらへ向く。
「優羽じゃないか、久しいですね」
どうやらユウという人が入ってきたらしい。口調がフランクになり敬語が消えたので、客とかではなく家族なのだろう。丁度棚に隠れて見えなくてどんな人か分からないが、うちと同じように家族揃ってゲーマーなのだろうか?
お、これはレア物のマゾゲーじゃあないか。クリアした時には精神がイカれると噂の。いやなにそれ劇毒かよ。
そしてこれは既に絶版している昔の格ゲー……!下手したプレミアつくかもしれないのにこんな値段でいいんですか!?凄い品揃えだな……。
「お久しぶりです、お爺様」
うーん、どれを買うか迷うな。今候補は4つある……が、この夏はNEOメインになりそうな予感がするのでそんな大量に買ってもお蔵入りするだけだろう。
「やっぱりここの雰囲気は落ち着きます。外は暑いですからね、寄ってよかった。」
しかしNEO1本でやると言うのも、飽きた時に困る。だから少なくとも1本は選ばねばならないのだが……精鋭揃いのこの店で最強を決めるというのはなかなかに至難の業。くっ、俺には全買いしか道はないというのか……。
「そうだ、今うちの常連さんがいらっしゃっていてね、私が認める人だ。顔合わせをしなさい」
「お爺様、その話は無しですよ。私には心に決めた男性が1人いるとなんども──────」
ええい南無三!心許無いお財布にクリティカルヒットしてしまうが、仕方ない。全買いしようでは無いか。俺の財布は包容力に満ち溢れているからな……。これくらいで揺らぐ資金力では無いッ!
「マスター、これ買います…………って委員長?」
「はぇっ!?、ゆ、悠君?何故君がここに!?」
「おっと2人とも知り合いでしたか。それはそれは、話が早い」
何故か居る一条さんに、凄くニコニコしているマスター。なんか面倒事の予感……。
お兄ちゃんはおしまいの2話、クッソギルティギアしてて笑った
この子一応ヒロイン予定なんだけど、50話までの出番が数行ってマジですか?




