#46 エリアボス通過
ここ1ヶ月くらい忙しくなるので少し更新頻度落ちます。あとクッソ今更ですが、章作り忘れてました。実は新章始まってます。
1章のオチが微妙もいいところなので、いつか改訂入ります。
「どう?ギャンブラーになれそう?」
揶揄うような口調で不貞腐れたヘラにそう声をかける。
「賭けはもうしないから」
そう拗ねたように答える。どうやら社会の厳しさが相当堪えたらしい。強い子に育って欲しいものだ。
そんなことを考えながら地面に散らばっている素材たちを拾い上げる。
・小鬼武者兜
ゴブリン種の中でも希少なゴブリンサムライが落とす兜。全ての敵を切り刻まんとする強い意志が入ってるそれは、装着した者の心を励ますだろう。
・飛群の嘴
群れで畳み掛けるように襲いかかる鷹は、何よりもその嘴を進化させた。その硬くも軽い独特な嘴は、速さを産む武器となるだろう。
・飛群の羽
仲間意識を大切とされる森鷹の羽。その結びつきの強さから、とあるコミュニティの目印としても使用されている。
素材が2種類に装備が1つがドロップしていた。
素材たちは現時点では職人のコネが無いのでどうすることも出来ないが、とりあえず兜だけでも装備しておこうか。
「うーん、可も不可もなく……」
というより少し悪影響が出るだろうか?頭の感触に違和感がでるのに加え、少し視野が狭まるのはあまりよろしくない。こいつは当分インベントリの肥やしとしよう。
「じゃあもうそろそろエリアボスに凸ろうかね〜」
別にここですることも無いし、なんなら早く攻略を進めてしまいたいので、再び奥へ進み出す。
現在、戦力はめちゃくちゃ充実しているし、ヘラは少なくとも死なない状態になった。躊躇することも無いだろう。
◇
大したモンスターとエンカウントすることも無く、順調に奥に進んでいくとその最終点らしき場所に到達した。
森も濃くなり高い崖で先が遮られたその場所には、少し間が空いた、言うなれば渓谷的な構造が設置されていた。
そして、その渓谷に立ち塞がり行く手を阻んでいるものが一匹。
「ここ、ゴブリンメインじゃなくて鷹メインだったのかよ」
『大きいですね。鷹では無いと思いますが、なんの種でしょうか?』
確かに飛んではいるが、鷹とは呼べないフォルムをしているためシュヴィから反論が入る。
明らかに鳥類では無いそれは、どちらかというとトカゲを彷彿とさせるルックスでその場を旋回している。
ワイバーン、と言えばいいのだろうか?ドラゴンと呼べるほど立派では無いにしろ、十分威圧感のある大型の番人がそこを阻んでいた。
「まぁまだ序盤だ。そんなに強くも無いだろそんな気負うこともないよな。っておーい、ヘラも行くよ?」
いつの間にか少し離れたところの木にしゃがみこんでいたヘラを呼び戻し、エリアボスのフィールドに入っていく。
「ギャアアアア!!!」
〘エリア【蒼翠の森林】の希少エリアボスとの戦闘を開始します〙
うるせぇ。ナワバリに入ってくる侵入者に気づいたらしく、咆哮しながら降りてくるワイバーン。【渓谷の降翼竜】という名前でLvは52。
なんかレベル高くないかという違和感を抱きながらも、四足歩行で威嚇行動をしてきたのでこちらも戦闘態勢に入る。希少だからなのだろうが、いつフラグ立てたっけな?
【Insulator】を再開し、先手を取らんとこちらからも接近を始める。
ワイバーン、というか竜の攻撃パターンの定番として、突進、ブレス、あとは……尾の振り払いとか?を警戒していれば良いだろう。ブレス警戒で回避系スキルは温存で、弱点らしき場所狙いで行こう。
「よォし、いざ参らん」
最初から全開で疾走し、数秒で距離が無くなる。
急な接近に驚いたのだろうワイバーンは、焦ったように噛みつきモーションを出してきたのでフラッシュリフレクトを発動。
前歯を叩き折るつもりでその顎をパリィし、仰け反った顔の下から首の真下に潜り込んだ。
「まずは一撃。【天ノ叛逆】からのォ、『アクセルストライク』!!」
巨大化した戦斧が首に傷跡を作る。
一撃目ながらも多大な被害を与えられ、ワイバーンは苦しそうに悶えながらも俺を叩き潰さんと前足で俺が居たあたりを薙ぎ払った。
しかしその時には既に後ろから離脱していた俺は、そのデカいシッポから背中にライドオン。そして、振り落とされないように羽を掴みながらも斧でダメージを与えていく。
若干ハメ技臭いが、こういう飛んだりする敵には騎乗からのラッシュ攻撃が定番なので今更だろう。
気分は木こりな俺は、薪割り作業のように斧を叩きつけている。振り落とそうとしているがなかなか落ちないので確実にダメージが蓄積している事だろう。
なんというか、物凄いデジャブ。最初の犠牲者である鹿くんもこの倒し方したなぁ、と感慨深くなる。
まぁもちろんこれだけで終われば楽なのだが、エリアボスには変わりは無い。そう簡単には通してくれないだろう。
今俺が1番危惧していることは空に逃げられることだ。
現状対空攻撃手段に非常に乏しい俺は、背中という飛翔を妨害できるポジションを取りながらもダメージを稼ぐのが最適解であろう。
だが、少しDPSが不足している気がしなくも無い。ならば戦力を投入しようじゃあないか。
「ヘラ!攻撃を始めてくれ!!」
「はーい!」
一応危険なことや1人で倒せる可能性から、事前に手を出さないでくれと伝えていたヘラにもアタッカーを任せる事にした。
終深喰も持たせてあるし、あの強さなら足手まといにはならないだろう。
うちの天才サイコキラーは強いからな……。
「って───うおっ!?」
意識が一瞬ヘラに向き油断した瞬間、ワイバーンはその体を一際大きく揺らして俺を振り落とした。
そして落下した場所はワイバーンの右斜め後ろ。畳み掛けるように迫ってきた尾は転がりながらギリギリ避けたが、当たっていたらだいぶヤバかっただろうと理解させられる暴力がすぐ側の地面を削っていた。
ひぇー、と肝を冷やしながらも離脱。
俺が離れたので飛翔して逃げられるかと思ったが、ヘラが上手く応戦してワイバーンを地上に留めている。
飛ばない翼竜とはこれ如何にという感じだが、好機は好機だな。
それに俺の知っているとある別ゲーは、出来るだけユーザーの使用感を良くするため動く感触が歩行と同じのになっていた。それよかマシだ。
軍事シミュレーションがテーマのはずなのに、傍から見ると飛行機が歩くような挙動で移動するっていうクソシュールな絵面が日々展開されてたんだよな……。歩くワイバーンなんてマシもマシだわ。
そんな別ゲーへの愚痴を挟みながらも再びワイバーンの元へ。ヘイトを稼いでいるヘラの代わりにアタッカーとしての役割を果たそうか。っとあれは……
『マスター、ブレス攻撃です』
「っ!ヘラ!一旦離脱!!」
「はい!」
ワイバーンの喉の奥に溜まる赤い焔が見え、慌てて離脱を指示する。
下手に後ろに下がると射程圏内から逃れられない可能性があるので、ワイバーンの背後に回ったヘラ。彼女はこれで大丈夫そうだな。
さて、折角なら実験だ。ブレス攻撃は口から攻撃判定が発生するが、もし不発なら?きっと口が大火傷するに違いないだろう。ということで!ワイバーンくん主演、即興炎ショーの始まり!
「失敗に終わって貰うけどなァ!!」
焔が完全に溜まったらしく、正面の俺に向かってブレスのモーションが発生する。が、その口から焔が出る前に跳躍を発動し加速する!そしてサイドスライドを発動。慣性を強制的に無くし、口の真下で停止する。この状況、お分かりだろうがやることは1つ。
「口閉じろオラァァ!!!」
思いっきり口を蹴り上げた。
「ギャアアアア!?!??」
吐き出すはずだった焔が口の中で逆流し、腹の中を焼き尽くしている。随分辛かろうが、これも定番なんだ。対策してねぇ方が悪い!(極論)
苦しそうに身を捩り、激しくのたうつワイバーン。少し空いた口からは焔が溢れてくる。その火の粉から逃れる為に少し距離を取った。
しかしワイバーンは思ったよりも根性がある様で、痛みに耐えながらも空へ逃げることを選択。大きく翼を広げ、羽ばたいて飛翔しようとする。もちろん、そんなことはさせないがな。
そばの崖に走り、壁走りを発動しながら跳躍効果で壁を登っていく。実は壁走りはそれほど万能では無く、重力を軽減する程度なので少ししたら落ちてしまう。だが、跳躍と合わせればワイバーンの飛翔を先回りすることは容易だ。
そうして空中に舞い上がった俺は、飛翔してくるワイバーンを迎え撃つ!!
「喰らえ必殺、ただの踵落としィ!!!」
その言葉の通り、ただの踵落としをワイバーンの脳天に見舞う。だが、スキルを介さない踵落としとはいえ、跳躍スキルによる脚力強化を含めばその威力はバカにならない。
そして、跳躍と重力、ワイバーンの飛翔の為の上へのエネルギーがその脳天に一気に集中し──────
「──────ギャァ」
脳震盪を引き起こした。
そしてそれに耐えきれずポリゴンと散るワイバーン。
「よし!無事エリア通過!!」
ワイバーンを仕留めたものの、落下ダメージにより残りHPが1となった俺だが、意気揚々と勝利の狼煙を上げたのだった。
明らかに無事では無いのだが。
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【BATTLE RESULTS】
【WIN】
撃破ボス:【渓谷の降翼竜】
報酬:降翼竜の羽膜、降翼竜の牙、降翼竜の尾、降翼竜の溜焔袋(希少)
評価:A
貢献%:100%(ソロ)
称号┐
【撃墜】
【翼竜を飛ばせない者】
【希少ボス討伐!】
備考:ギミッククリアにより出現するレアエリアボス。
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・エリアボスギミック
エリア内のとあるギミックを解除することで、エリアボスが希少種となる。その素材は総じて優良であり、割と重宝される情報である。ちなみに蒼翠のギミックは既に判明済み。主人公は何故か分からないらしいから、他の誰かが何かをしたのかも……?
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