#45 ステータス群。とある科学の解決策(ソリューション)…… part3
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スキル名称:【Insulator】
Lv:──
効果:特定称号効果を断絶。1200s間効果継続。効果一時停止可能。
発動:アクティブ
CT:600s(効果終了時からカウント開始)
備考:『私を無能武器だなんて二度と呼べなくしてやります。応急処置程度ですが、十分でしょう。さぁマスター、敬うのです。』
取得条件:外部ダウンロード
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お?
おぉ!最高か!?20分間は確定で通常状態のまま戦えるってことか!しかも移動時間とかは停止ができるってコト!?
「ぐう有能すぎる。さすがは我らがハッキングデバイス様!お見逸れしたぜ!」
『だから、私はハッキングデバイスなんぞではありません』
いやー、良かった良かった。ステータスを保つ目処が出なかったら、キッツイことになってた。
具体的には、金にものを言わせて武器を買いまくって、全部投擲で倒すという悪コスパクソ戦術を取ろうかと思うくらいキツかった。なぜか破損してる投擲だけはまともに使えたからな。
さすシ(流石シュヴィの意)だわマジ。
「まぁ一気に色々分かったな。ひとまず問題も解決した事だし、先のエリアに進みますか。へーいヘラ、行くよ〜!!」
「は〜い」
ゴブリン村の中で1番大きな家からヘラの声が聞こえる。俺が色々としている間、ずっと財宝探しをしていたらしい。盗賊もびっくりなスカベンジャー精神ですなぁ。感服感服。
じゃあ行こうかね。
◇
どうやらこの【蒼翠の森林】とかいうエリア、森が深くなればなるほど出現するMOBの種類が増えるらしい。単一種として出現し、群れを作って行動するゴブリンのようなものも入れば、レアモンスターとして出現し個体単位で動くのもいる。
そして俺たちは茂みの奥からそんなレアモンスターを目の当たりにしていた。
「……シュヴィ、あれ何?なんかめっちゃ強者感あるが。」
気づかれないように出来るだけ声を潜めてシュヴィに問う。NPCと行動するメリットの1つは、事前に情報が手に入ること。聞いて損は無いだろう。
『あれは、「ゴブリンサムライ」と「飛群の森鷹」の群れですね。ゴブリン種の希少個体と、森の常駐種です。』
ほーん、強者感あるゴブリンはどうやらレアモンスターだったらしい。武者的な鎧と刀を装備しているし、それ相応の強さがあるのだろう。それに相対するオオタカの群れは、個体差で大きさの違いこそあるものの少し見劣りするだろうか。
「タカが群れを形成するのか……餌問題とか大丈夫なのか?」
鷹のような猛禽類が群れを形成しない理由として、強者が群れれば餌に警戒されて、食料が確保しにくくなるという点がある。それなのに群れを形成するということは……この森の中では弱小種ということか。
『先頭の鷹、αですね。余程サムライを屠りたいのでしょうか……』
「α?まさか、ゴブリンだけじゃなくてタカとかにもそういうのあるの?群れも格差社会かよ、世知辛いねぇ。」
まぁ折角こんないいポジを取れているんだ。攻撃パターンの観察でもさせてもらおう。そしてあわよくば漁夫ろうか。
どっちかが全滅すれば、残った方の負傷具合を見て突撃するか決めようか。あわよくば相討ちしてもらって。俺にはドロだけ華麗に掻攫うのだ。大して消耗せずに沢山の素材が手に入ることになるだろう。ふむ、パーフェクトプラン。
「じゃあヘラ、賭けしようぜ。俺はサムライに100ベット。」
「……賭けってなに?」
どうやら純粋なヘラちゃんは賭け事の世界を知らないらしい。立派なギャンブラーに育ててやろうぐへへへ。
「どっちが勝つかを予想して、勝つと思う方にお金を担保するんだ。それでもし賭けた方が勝てば違う方に賭けたお金が貰えるし、負ければ違う方に出した人にお金が渡る。倍率とかはめんどいから全取りで行こう。」
「なるほどね。でも私もサムライに賭けたいんだけど。そしたら成立しなくなっちゃうよ?」
「おお、さすがヘラ賢いな。そんなヘラに免じて俺はタカが生き残るのに賭けることにしようかな。」
「……いいの?」
「おう。だが負けるつもりはサラサラないから覚悟しときなよ?」
大人は汚いということを教えてやろうではないか……!!
「えー、こちらフィールド【蒼翠の森林】。実況解説はユウと?」
『シュヴィがお送りします。』
「いやー、シュヴィさん。この戦いどう見ますか?数の有利を取るのはタカですが、サムライの個の力は計り知れません……!」
『そうですね、サムライが鷹の連続攻撃を捌き切り、スキをついて崩せるかがポイントでしょう』
唐突に即興解説が始まるが、結構ノリノリなシュヴィ。ポカンとした顔でこちらを見ているヘラを置いて、状況は進んで行った。
まず先手をかけたのは鷹の群れ。サムライを包囲し、嘴で刺すように突撃していく。そんな圧倒的集中砲火を刀で弾きながら対処していくサムライ。鷹がその嘴を最も有効活用する為には、急降下による最大速度を引き出すための飛翔が必要となる。
そのタイムラグが辛うじてサムライに休みを与えていた。そうして突進を繰り返しながら、少しづつダメージを蓄積させていく鷹。最初は鷹が有利な状態で始まった。
「よっしゃいいぞ!そのままつつき殺せ!」
コロシアム的な治安になって来たが、そんなことはお構い無しだ。俺の100ベット(俺の金では無い)を守るためにも、鷹には頑張って貰わねばならないのだ。
しかし、そんな有利状況も一瞬の隙によって大きく瓦解することとなった。
──────パァン!!
連続攻撃が少し休まり、サムライに納刀する時間を与えてしまった鷹。そのせいで、次の突進攻撃が居合によって真っ二つに斬られてしまう。
『これは戦況が変わりましたかね。』
焦ったように再び一斉攻撃をする鷹だが、1度納刀を挟んだサムライによって一瞬の内にその全てが斬り伏せられた。
このまま単純な攻撃パターンだと斬られるのみだと気づいたのだろうか、αが一声鳴くと、群れの隊列が変わる。
しかし、戦い方を変えるのはサムライも同じようで、構えた刀に雷が纏い出す。長引かせるつもりは無いらしい。刹那に生きる紫電はその決意の表れだろうか。
個の人権が無いのが強みである群れ。それを活かさんとする鷹の同時攻撃が始まる。一斉に飛びかかり、自分の死をも群れの為に使おうとするその姿は、群れの強固な絆を彷彿とさせる。だが、絆なんてものは精神的なものでしかなかった。
鷹の同時攻撃にタイミングを合わせて、紫電を纏った刀を上に掲げるサムライ。すると、バリバリ!!!という音と共に電流が周囲に放出された。いや斬らねぇのかよというツッコミは喉の奥で留め、感電死した鷹達がポリゴンに散っていくのを見ている。
いつの間にかその数は減り、もはや数匹までしか残っていなかった。
「……この賭けは私の勝ちだねお兄ちゃん。」
明らかな有利状況に、ヘラがそう言ってくる。あぁ、確かにこのままでは負ける。だから、賭けに勝つの醍醐味を見せてやろう。純粋なギャンブルを愉しむのではなく、勝ちに行くには何が必要か。
「ふふ、甘いなヘラ。大人の本気を見せてやろう。」
「え?……えっ!?ちょっと!?」
スクッと立ち上がり、未だ鷹と交戦しているサムライの元へ歩き出す。ヘラの困惑の声を無視しながら、【Insulator】を発動。ステータスが戻り、戦闘形態になった俺は無敵だ。さぁ、行くぞサムライ!!
まずは死角から【破鉄の手斧】を投擲。高速で脚に命中し、急な衝撃でバランスが崩れたサムライの元へダッシュする。
「【天ノ叛逆】、『アクセルストライクLv1』!!!」
そして、巨大化バフ及び速度上昇が乗った【戦斧:旧式】を首に打ち付ける。色々なバフやらなんやらで超速で迫る斧。明らかな過剰火力により体ごと吹き飛んだサムライは、唐突なオーバーキルに困惑したような目をしながらポリゴンに散った。
そうして場に残っているのは、満身創痍な鷹のαと、先に投げた斧を拾い上げる俺。
そうしてヘラの方に向き直り、こう言う。
「これが大人の勝ち方だ。」
「不正じゃん!!!!!」
その通りである。
ユウ「手を出さないなんて一言も言ってないお?生き残ってれば良いんだお?」
ちょっと意識した元ネタがあります。それは一体なんでしょう?
ヒントは、キンキキキンキン、ヤー!です。
というか、命名が適当すぎんだわ。いつか変えときます
変えました。




