#4 いざキャラクリ
ネッ友から来たメールを読んでみる。すると驚いたことに、まともな神ゲーっぽいものが紹介されていた。
その神ゲーの名は、『New Eternity Online』
通称『NEO』
1年前に配信スタートされたゲームで、発売当初の抽選倍率はなんと50倍にも登ったらしい。
名前は聞いたことあるな。発売から1年経った今でもそこらじゅうに広告が出ている
メールの紹介を要点だけまとめると
・グラフィックが凄い!
・物理法則が凄い!
・AIが凄い!
・システムが凄い!
・ストーリーが凄い!
・分岐が最初からなく、全て自由な世界なのが凄い!
と、凄いづくしである。
超長文メールで読みにくかったが、こんなに勧められるのは珍しい。
「これオススメだよー」とか「定期布教やぜ」みたいなテンションが大体なのに、余程オススメなのか。
リリース後から半年経った今でも、ショップでは時々売り切れになるくらいの人気だそうだ。面白そうだし買ってみるか。
ではショップにGO!
………………
………
…
まさか1番近いゲームショップのチェーン店で売り切れだったとは。
だが、行動派ゲーマー(自称)の名はだてでは無い。ちょっと遠い所で買いましたとも。
設定を読むとするか。
『そこは正しく新世界であった。未知の植物、動物、鉱物など、種々発見をし、心はいつも驚愕に満ちていた。たがこの世界はまだ未知の方がずっと多いことを確信している。それは今も、そして未来も、更には過去に於いても、だ。私達はこれから新世界の人間になり、そこに順応する。■■の旅人である君達もすぐに世界に馴染むだろう。だが、是非忘れないで欲しい。君達は、私達は、過去に囚われているのだと。常に己の目を疑え。呉々も、我らの使命を忘れるな。ヤツらの存在を忘れるな。(アンドリュー・A・アンダーソンの日記より引用)』
『注:このゲームはノンジャンルのフルダイブVRMMOです』
ふむ、成程。設定ではなく、作中の日記ねぇ…。まぁ勿論なんにも分からなかったな。最初の方はそれっぽいのに後の方になるとなんか暗くなってるな。まぁゲームを初めてないやつが考察など烏滸がましいか。最後の注が気になるが、まぁ始めるかな。
………
……
…
ロードしなきゃ
……………
………
…
はい、ロード完了!
では早速始めようか!
「Start the game!」
«『New Eternity Online』にログインしました»
「新世界へようこそ!!!!」
「うおっ?!」
「ワタクシはチュートリアル補佐用AIの『アイ』って言います!よろしくね!」
「は、はい。よろしく、お願いします?」
「敬語は要らないですよ!!」
「わかった。よろしくね」
「はい!よろしくです!!」
なんか凄い元気な子に当たったな。結構びっくりしたな。
「では早速質問です!新世界で名乗るお名前をおしえてください!!」
その声と同時にUIが表示される。タイプで名前を入力するっぽいな。
どうしよ。まぁいつも使ってるやつでいいか。
「『U』」
ただ名前をアルファベットにしただけである。読み方が同じなだけなので多分バレない。というか考えるのがめんどいのでずっとこの名前にしている。
「『U』さんですね!あらためてよろしくです!」
「よろしく」
「次はキャラクターメイクです!現実の姿を元にすることも出来れば、ゼロから作ることも出来ますがどうしますか?」
「現実を元で」
「かしこまりました!!」
キャラメイクは結構自由なようで、ちょっと調べて見た時には異形に近いような姿をしている人も居た。
ちょっとこわかった
さらに身バレの危険性が増えた訳だが、まぁいいや。と思うのは早く始めたいと急かす心のせいだろう。
さっきから感じていたことだが、このゲームリアルさが物凄い。チュートリアルAI『アイ』との会話も人とのものと遜色ないし。
これは結構期待できそうだ。
早くゲームを始めたいからキャラクリは力入れなくていいや。(これが本音)
と、考えてるうちに、キャラアバが目の前に出てくる。
それにしてもやはりすごいクオリティだな。鏡で見た自分と全く変わらない。
「何を変えますか?」
「えーっと、髪を真っ黒にして、目の色を黄色にしてくれ」
「りょーかいですっ!髪を漆黒にして目を鮮黄色にしますね!!」
なぜわざわざかっこよく言い換えた?
そりゃ男の子だしかっこいいのは好きだけど
てか鮮黄色って金色だよな
まぁいいけど。
見た目が変化したアバターが出てくる。リアルでは、茶髪の混じった黒髪みたいな感じだから、真っ黒にするだけでだいぶ印象は変わる(はず)。というか思ってたより髪が黒いし目が金色なんだけど。
「これでよろしいですか!」
まぁいいや
「はいな」
「では次に職業を決めましょう!」
これは…職業一覧か。いや多いな。俺が見た中で2番目くらいに多い。ちなみに1番多かったゲームは全ての武器を右手と左手での全ての組み合わせがあった。と言っても、自分のキャラがある訳ではなく、その武器のキャラになって戦うゲームだった。
この世界に存在する武器の数をxとするとその組み合わせの数はx²だな。単純な計算だが、この世に存在する武器の数を考えると、とんでもない数になる。
その中で俺がメインで使ってたキャラはだいぶやばかった(スペックが)のだがまぁそれは置いといて。
何にするかな。と言っても大体は決めてる。剣が使える職業だ。
やはり剣は良い。かっこいいし。そして何よりファンタジー感がとてもある。せっかくのファンタジーゲームなのだ。雰囲気を楽しみたい。ので剣を使うことにする。だが、この膨大な数の中からどうやって探すかな。
「条件を決めて、表示範囲を狭められないか?」
「出来ますよ!どんな条件にしますか?」
「剣が使えるやつで」
「刀はどうします?」
「あー、入れて欲しいかな」
「りょーかいっ!それっ!!」
果たして、掛け声が要るのかは分からないが、声に合わせて表示が変わる。これくらいなら目は通せるか。
「そういえば、剣士だと体術が使えないとかはある感じ?」
「えーっと、使えはしますけど、威力はめちゃくちゃ落ちますね!武術家とかの職業には大幅に補正がかかってますので、肉弾戦ならボッコボコのバッコバコです!!!」
「PvEはどうなんだ?」
「エネミーにもあんまり効果は無いです!!そりゃ少しは抵抗できますよ?拳で。でも拳で倒すのは厳しいです!!!」
マジか。俺は獲物に関係なく体術は結構使うタイプだったんだけど、それは厳しい感じか。耐久値が無くなったら終わりだな。
そういえば耐久値システムある前提だけどほんとにあるのか?
「一つ質問いい?」
「はい!大体は何でも多分お答えしますよ!!」
「じゃあ遠慮なく。耐久値システムってある?」
「ありますよ!武器によって耐久値は異なりますが、ゼロになったら修復が必要になって、それまで使えなくなってしまいますのでご注意ください!!!」
「ありがとう」
「いえいえ!仕事ですから!!」
うーん、ますます厳しくなってきたな。
まぁ体術は諦めるか。
すると、良さそうなのは〘双剣士〙、〘短剣使い〙、〘刀使い〙くらいか。
〘双剣士〙はその名の通り、剣を両手に持てる職業だな。ステータスは筋力が伸びやすい。
魔法はからっきしで、デメリットとして職業の固有スキルの消費スタミナが多いらしい。
また使用武器、つまり剣の種類は結構制限があるらしい。どちらも長剣オンリーだそうだ。
なので、最初はステータス的に軽い剣しか両手に持てないので、打ち合いに弱いそうだ。
いい感じではあるが、打ち合いが弱いのはあんまりだな。避け続けるのも限界があるし、パリィも出来なさそうだ。
スキルも、買いに行くバスの途中で事前調査をしてみた所、パリィには、スキルパリィとテクニカルパリィがあるそうだ。前者は単純にスキルによるパリィで、後者は技術によるものだ。わかりやすく言うと、「相手が切りつけてくる剣の腹を叩けば攻撃は逸れるよね!」をアシスト無して自前でやるということだ。結構難しそうではあるが、慣れれば行けるはずだ。
というか物理法則にめちゃくちゃ忠実っぽいな。期待以上にいいゲームかもしれない。
そして〘短剣使い〙は、短剣を使えてステータスは敏捷が伸びやすい。回避系のスキルも生えやすく、上位職である〘暗殺者〙や〘忍者〙にもジョブチェンジ出来るので、人気が高い。デメリットは、先程と同じ様に、剣は短剣しか持てないことである。だがしかし、反対の手に盾などは装備が出来る。二刀流よりは少し自由なのだ。
だが、リーチ外から魔法を連射されたりしたら厳しそうだな。
短剣はなによりリーチが短い。実際の戦争では、リーチの長いハルバードや槍などが強力だったらしいし、スキルでどこまで補えるかがよく分からないので、あまり選びたくない。
そして〘刀使い〙は……
悩むUを見て『アイ』は思う。何とかして助けてあげたいと。『アイ』は他人が悩んでたり困ってたりするのが嫌いだ。
自身の思考を侵食するものに気づいていても、留めることができなくなってしまった。元来の性格と、Uの欲する職業が合致しているという免罪符を得たことにより、意図していないささやかな妨害が始まる。
そして『アイ』は、とある職業をすすめる事にした。
「あのー、ちょっといいですか?」
「ん?ああ、なに?」
「実は一つだけ、剣を使う職業で体術がダメージバフありで使えるのがあるんです」
「マジ!?見して!」
「これです」
〘流離人〙?
ふむふむ、太刀と打刀を両手に装備出来て、伸びやすいステータスは敏捷と技量。
固有スキルだけでなく、全スキルはスタミナ消費が少ない。ただ、体力と防御が物凄く低い。
いや強くね?
「強くない?」
「そう見えますよね」
「でも実は問題点があるんですよ」
問題点?
「どんな問題?」
「えっとですね、その」
「うん」
「武器の要求ステータスが加算方式なんです」
「…」
「…つまり?」
「余程STR上げないと二刀流出来ません…」
マジか。まぁ二刀流目当てじゃないしいいけど。体術使えるのはだいぶでかい。最初から二刀流は捨てようか。
「まぁでもそれでいいよ」
「ほんとにいいんですか?まぁ今日のうちは変えられるので、やっぱり無理だったらジョブチェンジしてくださいね。神殿で出来るので。」
「わかった」
「では気を取り直して!次は心核を設定しましょう!!」
「しんかく」
「心核です!心核を決めると、その心核によって初期スポーン位置と永続的ステータス補正が決まります!!」
永続的ステータス補正?
「あー、ジョブチェンジしたら職業事の補正は消えるけど、心核はずっとその補正なのか」
「そういうことです!ちなみに、ステータスはレベルアップと同時に貰えるSPで上げれます!!」
「これが心核一覧です!はいどうぞ!!」
UIに36個の心核が出てくる。ステータス項目を2つ組み合わせてるっぽいな。
じゃあ、敏捷と技量に補正入るやつにするか。変わりに体力と防御が伸びづらくなるようだが、当たらなければ良いだろう。
「じゃあ、この【速技】ってやつで」
なんて安直な名前だこと。
「あ、今名前が安直だって思いましたね!?私が考えたからちょっとショックなんですけど!!」
「え、まじ?なんかごめん」
「謝ったってことはやっぱりそうだったんですね!!いいですもん!進化したらかっこいい名前になりますから!!」
「進化するの?」
「はい!心核はプレイスタイルによって進化先が異なるので進化したあとは被ることはまず無いですよ!」
「ほえー」
システ厶が多すぎて覚えられなそうだ。
でも
「そろそろ終わりかな?」
「はい!これでキャラクリエイトは終了です!!お疲れ様でした!」
「ありがとね、アイちゃん」
「こちらこそ!私も楽しかったですよ!〘 U 〙さん!!」
「今からあなたをあちらへ転送します!」
「これからは何をするも何を成すもあなたの自由です!」
『アイ』の声が遠くなる
「では、新世界をお楽しみください!!!!」
「じゃあねアイちゃん」
「また会えるといいね
彼女には最後まで聞こえただろうか
「はい!」と答える声が聞こえた気がした。
そして世界は暗転する。