#35 バンカー大迷宮攻略横道part7 ハッキングデバイス……?
あー、こんな時間の更新でゴメンなお前ら。
昨日は更新頻度が上がるって言ったよな。
ありゃ、嘘だ(白目)
──────カツン、カツン
自分の足音が金属音として反響する。
あの大きさにしては豪華な装飾もない、単調ながらも近未来的な廊下を歩いていく。
豪華客船か何かかと思ったが、少なくともここにそのような接待をしそうな気配はない。
シャコのパンチによってできた穴、それは丸い船底の1部につながっていた。
俺はそこから入り、近くにあった金属のハシゴを登ってこの廊下に出たのだ。
船底を先に探索しても良かったのだが、物資系の貨物が積まれていただけっぽいので無視した。
シャコのパンチの余波で穴の近くにあった貨物が壊れていたのだが、そこから出てきたのは植物や肉、魚に鉱石だけ。
しかも鉱石とかは、第1層でゲットしたものと全被りというハズレ具合。
この調子なら、上を探索した方が楽しいだろうと考えハシゴを登ったのだ。
船底で得られたものとしては、少し面白い情報のみ。というか貨物の積み方が変だったと言うだけの話だが。
──────カツン、カツン
「これは……武器庫か。お宝があるといいんだけど」
廊下を歩いていると、『武器庫』と表示がされている部屋を見つける。
部屋に近づき前に立ってみる。と、なんと自動ドアらしく勝手に開き始めた。
──────ゥウウン……という稼働音特有の低音が数秒響き、ドアが自動でスライドし完全に開く。
これまた文明レベルが違う産物が出てきたな。オーパーツというかなんというか。
一応、ダンジョンの1部と言えるので罠などを警戒しながらゆっくりと入っていく。が……何も無い。
何も無いというのは───罠が無いというのに加えて、武器もないのだ。
ハズレか、と落胆する。まだまだ見れるところはあるだろうが、最初から外れというのは船全体の期待値に影響するからな……
期待はずれであったそれを背に通路に戻ろうとするが、振り返ろうとした視界の端でとあるものを捉える。
ん?あれは──────
何も無いかと思ったが、20畳程の広さの武器庫の奥の壁にボタンがあるのが見える。
つかつかと歩み寄り、罠の可能性も考えながらもポチっとボタンを押す。
武器庫にあるボタンなのだから、まぁ武器かなんかに関係しているだろう。
念の為、ボタンを押した後直ぐにドアのそばまで戻るが、それは杞憂であったようで。
「!!!───ははっ、マジか……」
待つこと数秒、突如部屋が動き出し壁や天井からショウケースが多数出現する。どうやら壁にピッタリ埋まっていたようでボタンを押すことで初めて現れる仕組みのようだった。
そうして現れたのは──────
『剣』、『槍』、『槌』、『杖』、『弓』、『盾』、『拳』、『銃』、『砲』、『装』、『獣』、『念』、『統』と表示された13種の武器。
「選び放題……ってか?いや、多すぎだろ。」
またしても近未来的な見た目をしたこれらの武器。
無駄が削ぎ落とされたような機能美と、ひしひしと感じる強武器感に思わず目が吸い寄せられる。
全部貰えるものなら貰ってしまいたいのだが……そんなに都合よくは行かないだろう。
とりあえず近くにあった『銃』に触れてみると───
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武器種:『銃』を選択しますか?
Yes/No
※1度しか選択出来ません
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武器が格納されているショウケースにそう表示がポップする。
どうやら、この13種から1つ武器を選べるらしい。
「どれにしようかな。」
正直、職業的には『剣』がいいのだろう。
流離人は両手に剣あるいは刀を装備することでステータス補正が付くらしいし、今俺の手元にある刀は一つだけだから。
だがそんな理屈も覆る魅力というものがある。
どうしようかな───と迷っているふうに言ってみたが、心の中ではひとつの武器に決めていたのだ。
周りの武器を見ることもせずに、そのまま武器種:『銃』を選ぶ。
YES、とボタンを押すと他の武器は再び壁に格納され『銃』のみが残り、ショウケースが消えて取れるようになる。
「ヤバ、マジでいいな……」
取り出して手に掲げ、改めてまじまじと眺めることでその魅力を再認識する。
重厚なメタリックカラーに、機能美的な洗練されたデザイン。確かな重さと頼もしさを感じるそれは他のどの武器よりも俺の心を惹き付けた。
自動式拳銃と呼ばれるのだろうか、現代的な拳銃に近いような形状で片手の操作が十分可能であろう大きさ。遠距離攻撃の手段がない俺にはうってつけな武器だ。
とりあえず武器庫には用が無くなったので、再び通路を歩き出す。
──────カツン、カツン
そうだ、一応武器の詳細を見ておくか。
ステータスを開き、武器をタップ。『装備を外す』やら『捨てる』やらがある中から『詳細』を開く。
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アイテム:残骸機構【銃】
効果:不明
備考:システム影響外の武器種であるため、名称のみがデータベース上に存在します。
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…………………………………。
デジャブだな。
急激に心の温度が落ちる。
「はは、無能武器に当たる運命でもあるのか?」
終深喰もそうだが、なぜ効果が分からないやつばかりなのだろうか。
別に効果や強さ目当てで選んでないし、好きだからいいのだが、少なからず期待はしていたのだ。まぁ逆に効果が分からないというのも、ビジュアルにマッチしたミステリアスさが出て良いかもしれない。
そう言い訳しながらも、少し裏切られたように感じてしまったのは事実。
残念な気持ちになりながらも、どこか諦めたような気持ちでステータスを閉じ─────────
『───無能武器とは失礼ですね』
「は?」
………武器が喋った?
「……ふーん、システム表示って信用にならないんだね。」
『あら、驚かないのですね。意外です。』
「あぁごめん。期待に添えない反応だったかな?ん゛ん、ごほん。スウゥッ」
咳払い。そして大きく息を吸い──────
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!?!!!??!?!??」
『騒音です。閉口を推奨します』
ああ、そういう感じね。
「まぁいいや。無能武器って言ってごめんよ、じゃあとりあえず無能じゃないって言う証明をくれない?何ができるか教えるとかさ。」
茶番は早々に銃をクルクルと回しながら歩いていく。お、次の部屋が見つかったな。
廊下の先に新しく目に入る部屋がある。近づいてみると、今度は武器ではなく装備のようだ。
『装備庫』と表示された部屋の前に立ち、自動ドアが開くのを待つのだが───
「───開かない?」
『開閉システムが破損していますね。丁度いい、私の有用性を証明する良い機会です。銃口をドアに当ててください』
すんなり入ることができた武器庫とは異なり、システム破損か何かで開かなくなっているドアに困惑する。だが、どうやらこの武器は解決方法を持っているらしいので大人しく従ってみよう。
──────ジジッ……バリバリ!
『侵入開始……23%─37%─62%─86%─完了しました』
ドアに銃口を当て、接触したその瞬間に側面の1部がドアにくっつく。
それと同時に紫電が走るような音がすると、銃の上に模様が表れる。『銃』の言葉によると、どうやら扉をハッキングしているらしい。
完了を報告すると、銃口がドアから離れてドアが開き始める。
「なるほど、銃の形をしたハッキングデバイスか」
『違います。ハッキングしか出来ないゴミと一緒にしないでください』
「でも俺はお前がハッキング出来ることしか知らないから、なんとも言えないね。」
『………』
開いたドアから2つ目の部屋に足を進める。
新しい設定がここ数話でいっぱい出て来ましたね。いっぱいいっぱいって?まぁ安心してください。次話くらいで役者が出揃います。まぁ1章のですけど。




