#29 バンカー大迷宮攻略レイドpart1 初見殺しだ。それだけではなく、二見殺しであり三見殺しであり四見殺しであり─────
そろそろアクションが恋しくなってきたよね!
ってことで久々のアクション回です。こっからは戦闘やらアクションやらが続きます。
ブクマや評価、感想などなどお待ちしています。
あ、そういえば必要性から迷宮の名前を変更しました。どうやら不必要な部分があったので。
バンカー大迷宮。旧世界のとある言語のとある単語を名に冠するその迷宮は、その役割が故に街をまるごと1つ内包出来るほどの広さを持つ。
魔力によって生成された結界──人かモンスターかの選別を行う門を抜け、階段を降りた先には、迷宮内の全生物が集まれるほどの空間が1つ。
過度な装飾もなく、ただ空間としてしか存在意義を持たないそれには4つの進む先がある。まるで洞窟のような自然と、目的を持って作られたために生まれた秩序が密かに存在し共存するその道には、侵入してくるなにかを阻むための機構が複数。
破壊は困難であり、大型な侵入物に対しても小型の侵入物に対しても有効で、超攻撃的且つ大規模。そして何より苛烈であるそれのせいで気を抜いていたら直ぐに攻略班は壊滅してしまう。そしてその罠の数々を抜ける先に待ち受ける、迷宮特有のモンスターの生態系。もちろんそのような過酷な環境下で生きているモンスター類は弱いわけがなく。その、高難易度要素の渋滞がこのようなレイド──多数の上位プレイヤーの集結を必要とする原因であった。
さらには、迷宮と言う通りの複雑な構造に特殊条件を満たさなければ通れない道や部屋。光学迷彩に隠された隠し通路などの地形的問題まで存在する始末だ。
一言で言うと、想像を絶する難易度である。
◇
これほどの人数の上位プレイヤーが必要だということは、相当な難易度なのだろう。それほどの難易度となれば、最上位プレイヤーが協力しようというのも理解できる。そしてなんの運命かは知らんが、参加することになったのも百歩譲ってまだ納得出来る。そこまでは良いんだよ。
「でもなんでよりにもよって主催が知り合いなんだよッ…!」
俺の顔を知るくらいの親交があるネッ友──いわゆる身内である彼ら彼女らの中でも、とあるベクトルで群を抜いてタチが悪いのが、このレイドの主催者であり俺の攻略グループのリーダーであるあきねなのだ。他の身内ではなく彼女なのが最悪の展開だな。
声と喋り方で気づくべきだったか…マイク的なもので拡大された声がさらにこの空間で反響し、エコーがかかったようになっていたからすぐに分からなかった。
何がそんなに嫌、と言うより困っているのかというと──────
「えー、31番から40番の皆さんこんにちは!ちょっと最初に注意事項的なものを話してから潜りましょうか〜。というか皆さん、めちゃくちゃ頼りないシケた顔してますね!気合い入れてください、気合。」
───これである。よく言えば純粋、悪く言えば無配慮無遠慮故の毒舌。まだ彼女は幼いゆえ仕方ないかも知れないが、いろいろド直球すぎる上に口が悪いのである。
第一印象は「元気で無邪気なよく喋る子」だったが、今では口が悪くなって、「体育会系のメスガキ」になってしまった。
ものすごいパワーワード。
本人が言うにはシンクロニー現象のせいらしい。俺は彼女をそんな風に育てたやつを許せない…!
まあ口が悪いと言うのはまだ良い。別に俺に被害はないし、今はね。でもその純粋さは今はマズイのだ。
顔で身バレ──プレイヤーバレ?してしまい、それを平然とバラされてしまったらもう大惨事。それに加えてあきねは十中八九配信してるだろうから、全世界に拡散されて大ヨン事(大惨事の上位概念の意)になること間違いない。
絶対ろくな事にならない。民度……というか性格悪ぃもん、あいつのリスナー。変な方向に訓練されてやがるから。
「──と、これくらいですかね!まぁこれが分かってれば最初は何とかなりますよ!というか皆さんも一度は来たことあるだろうから知ってて当然ですけど。」
やべぇ注意事項聞いて無かった。
まぁいい、そんなことよりもどうすればバレないかだ。今の所彼女はそんなに俺に興味を示してないから、ずっとそうなら良いのだけど。
「じゃあ着いてきてください!私達はここの道からですね。最終到達目標は、迷宮最深部にある迷宮核です。」
プレイヤーが集まっていた空間の左下隅に向かうと、そこにあったのは下へと続く道。石の壁で形作られた壁と高い天井に囲まれたそれは、まるで小規模な洞窟であった。
光源が無くても見えるのはゲームシステムのお陰だろうか?
「あ、一応聞いておくけど、ここに居て【暗視】持ってない人なんて居ないよねー??」
あ、お陰じゃないらしい。じゃあなんで不自由なく見えるのだろうか?何か気づいてない効果がなにかにあったのか……?
「よし、みんな大丈夫そうだね!じゃあ行くよ〜。あ、現地人の人は1番後ろでよろしくお願いしますー!」
全然大丈夫じゃ無いはずの俺だが、下手に喋ることも出来ないので大人しくあきねについて行く。
思わず寒いと錯覚してしまうような、吹き抜けた構造で歩いていると傍を通り抜ける風の音が聞こえてくる。
少し不気味だな。雑踏と風音以外に何も聞こえないような静けさの裏に、なにかが隠されているような。
ざっざっざっと、俺たちの歩く音が反響する。1パーティー……約5人につき1番号振り分けられていたので、1グループ50人ぐらいの大所帯だ。
こんなに多いと逆に迷宮が混雑してしまわないかと心配する。
───が、それはとんでもなく杞憂であった。
「みんなー、そろそろ警戒……っ!!」
パァン!!!
そんな盛大な音をたて、目の前を歩いていたプレイヤーが弾け飛ぶ。弾け飛んだ後に残っていたのは、いわゆる矢ような役割であろう何か。
ただそれを矢と呼ぶには、あまりにも大きかった。どちらかと言えば「杭」が良い表現だろうか。
最初のデスポーンを境に警戒態勢に移る皆。それでも徐々に超速で飛来してくる杭をうけ、弾け飛ぶプレイヤーが何人か出始める。恐らくの飛来元である天井を見てみると───
───先程の数発は小手調べであったと言わんばかりの、100を超えるであろう数の発射口がこちらを向いていた。その口から見えるのは装填されている杭の先端。
「───ッ走ってください!!このまま抜けます!!!」
緊迫。あきねの言葉を聞き、一斉に先へ走り出すプレイヤー──総勢40人ほど。
一瞬、雑踏と呼吸音だけが響く時間を経て…………発射音。
つんざくような風切り音を鳴らす杭が背後、というより上空から多数飛来する。
多くのプレイヤーを狙うそれだが、もちろん俺にも来るわけで。全方位の上空から、何故か他のプレイヤーに向かうよりも遥かに多い数が迫ってきていた。
1本目。右斜め後方の約20°で地表を削るように飛来するそれを『跳躍Lv5』で上に飛び避ける。
ほぼ同タイミングで右斜め前水平方向から迫る2本目を体を空中で捻り回避。
スレスレで横を通り過ぎるそれを流し見てヒヤリとするが、ずっとそうしている暇は無い。
避けたその際に2本目を足場として蹴り、前方へ躍り出る。刹那の後、俺がいた空間は正面と左右後方から飛んできた3、4、5本目に潰される。
衝突したそれらの破片が後ろから飛んできたのを掴み、スキルを発動せずに投擲。
何故かは分からないが、上等な威力を発揮したそれは、左斜め上から来た6本目に当たり逸れる。
破片に当たり軌道がズレた6本目は、追加で飛来した2本を巻き込んで横へ吹っ飛ぶ。
少し杭が途切れた隙に地面に着地。そして直ぐにバク転により9、10本目を避ける。
「──あっぶね!!」
足を貫かんと真上から飛来する11本目を空中で屈むことで避ける。まさに間一髪で避けたそれを、そのまま流れで足場として流用。水平方向に勢いよく飛び出す。
空中を突き進みながらインベントリを操作し、終深喰を手元に出し───
───正面に投げる。
徐々に重力に従って落ちた俺は、受け身をとり直ぐに走り出す。
気づいた時にはもう周りにはプレイヤーは居らず、皆既に脱落したか安全圏に達したかのどちらかのようだ。
安全圏まであと少し、ということだろう。
そんなところまで来たが迷宮は俺を通す気はさらさら無いようで。
トドメだと言わんばかりに全方位から俺を目掛けて杭が発射されるのが見える。しかも2段階──第2波まで待機しているという豪華具合だ。
それらを切り抜ければひとまず安全……なのだが相当ムズい。普通は不可能だろう。
「──俺以外なら、な」
第1波の飛来に合わせて跳躍。飛んできた杭は俺の足を掠りそのまま地面に衝突する。超速で同じ地点に刺さった杭の衝撃波によって体が浮き体勢を崩す。
そうして空中で動けなくなった俺に飛んでくる第2陣。
どうするのかと言うと────
「───おらァ!!」
第1波の衝撃波を上手く使い空中で前転し……さっき投げた終深喰の柄に踵落としを決める!!
綺麗に正面の杭に刺さりこんだ終深喰は、杭を2つに割り俺が通る道を拓いた。
裂け目を狙い綺麗に体を通り抜けさせて、そのまま走り出す。
『跳躍Lv5』の効果は既に切れ、あとできるのは精一杯走ることのみだが───
───キィィン!!
安全圏に逃れることが出来たプレイヤーのうちの一人が杖らしき物を構えているのが見える。
俺の背後に展開された障壁が、最後に飛来した杭を阻んでくれたようだ。
転がり込むように道をぬけ、杭の当たらない横へ避ける。
「はぁはぁ、あっぶねぇ〜……守ってくれてありがとうございます。」
ゲーム内なのに冷や汗をかいたような気分になる。だいぶキワキワだったが……初っ端からこれって大丈夫か?
「いえいえ〜、それにしても凄いですね!めちゃくちゃ凄いじゃないですか!現地人の方の中でも強いんでしょうか?」
俺を守ってくれた感じのいい男性がそう返答する。息を整えながら周りを見ると、50人近くいたプレイヤーがもう既に10人ちょいしか残っていないことに気づく。
「まぁ強い方でしょう」
と、誤魔化しを徹底する────のだが。
「凄いんですねぇ〜〜!!!オナマエ、お聞きしてもよろしいですかぁ〜?NPCさん?」
にこぉ、と悪趣味な笑みを浮かべる女が1人。
やべっ
魔術師クノンは見えている、何回読んでも飽きない。めちゃくちゃ面白い。また読み始めたら止まらなくなったので更新遅れました。
僕のせいではありません。




