#28 邂逅……体育会系メスガキ編
今日の日間、1位から落ちてたので気合を入れて更新します。
是非是非ブクマと下の星をお願いします!
止まっていた人の波が再びゆっくりと動き出す。
どうやらその迷宮への入場が始まったようだ。一区にも中央にひらけた場所がマップ上にあったが、勝手に広場だと思っていた。まさかダンジョンだったとは……。
どの区にも中央には広場が存在していると思って居たが、そうとは限らなくなってきたな。 少なくとも二区はそうだったから他もそうかと思ったら違うのね。
平面的な情報しか映し出してくれないこのマップは、この複雑な世界ではあまり頼りにならないかもしれない。そんなことを考えながらも俺はイケおじとのコミュニケーションを重ねていく。
良心的───というより常識的な雰囲気を感じるプレイヤーとのコンタクトはありがたいし、ここまでの経験からすると貴重かもしれないのでできるだけ話しておきたい。
───今までが酷すぎただけかもしれない…。というかまだ大した数プレイアーと関わってないわ。おのれアイリスとその取り巻きどもめ。
「それにしても、よくここまでの人数が集まりましたね……昨日はこれほど混雑していませんでしたし、1日でこの規模の人が集まったということでしょうか?とても驚きましたよ。」
よっぽどの大御所が開催しているのかな?そうじゃないとここまで集まらないだろうし。
「確かに急に増えると戸惑うよな。というか君は最近ここへ?一応今までも何度か大規模レイドが敢行されていたんだが……今のは目新しいものを見る反応だろう?」
ぬ、意外と鋭いなこのおじさん。あんま気にしてなかった微妙なニュアンスを汲み取られた。
どう答えるのが良いだろうか、NPCとしての設定が固まっていないうちにプレイヤーと接触したのは早計だったかな?と、答えようの無いことを聞かれて少し悩んでしまう。
だが無いものはどうしようもないし、ずっと悩んでいては不審なNPC認定されてしまう。
こうなったらやることはただ一つ、生命創造だ。とりあえず即興で一人のNPCの設定とストーリーを創造してしまおう。名前は─────────
「そう言えば自己紹介がまだでしたね、僕は『ネオ』と言います。ほかの街で騎士団で働いていて、一時休暇でここに。お名前をお聞きしても?」
いや安直ゥ!!!はっ!しまった、名前をNEOからとってしまった!これじゃまるで重要NPC的な雰囲気になってしまう……。騎士団の一時休暇は割と良いストーリーなのに。
「俺は『グレン』だ。一応トッププレイヤーをやっている。」
おっとぉ!?トッププレイヤーと関わりたくないって考えた先からコレ?!??
なんか俺エンカ率バグってね?トッププレイヤー邂逅具合エグいんすけど。もうお腹いっぱいなんだが!?。
「へぇ、凄いんですね。」
とさも驚きながらも平然としている感じで返すが、今俺の頭はこいつからどう離れるかということに集中している。トッププレイヤーとは関わってもいい事はないのに……。
考えながら待っていると、だんだん人の波が消え、ついに俺たちが入る番になる。果たして開けた場所にあったのは、黒い穴であった。
憲兵らしき人がその穴を包囲し、そのうちの一人が「サモナーは1度使役獣を戻してからお通り下さい!」と周囲に呼びかけている。モンスターは入ることが出来ないらしい。
1人の憲兵が近づいてきて、
「どうぞお入り下さい。」
とこちらに呼びかける。グレンはその言葉を聞き迷宮に入ろう足を進めるが、一向に動き出さない俺を振り返り足を止める。
そうだ、ここで抜けてしまおう!だって俺NPCだし、プレイヤー主催のレイドに参加するなんておかしいもんな!よし。
と、名案というか名言い訳を閃いた俺は────
「あ、僕はここで「まぁまぁ、後ろが詰まってるから一旦入ろうか」ってちょっとおおお!??!?」
逃げようとしたことを察知されたのだろうか、
名言い訳にて見事逃れようとしたところを圧倒的STRに捕えられる。ジタバタしてどうにか逃れようとするも首根っこを強く掴まれた俺はあまりにも無力───。
くっそ、こいつ俺様系わがままイケおじかよ!いやなんだよそれ!!合わなそうな属性を同時に積むな過多だわクソが!!!
ぶんぶんぶんぶん、と腕を振り回し暴れてみるが…………
低STRな俺の抵抗も虚しく、黒の穴を通り抜けて繋がっていた階段を引きづり下ろされる。
「あー、すまんすまん。そんな恨めしそうな目すんなよ。だって興味があったからここまでついてきたんだろ?それに騎士団なんだから強いはずだし主催に掛け合ってきてやるよ。」
余計なお世話だと口に出そうになるが、気になっていたのも事実。ここまで連れてこられてしまったものは仕方ない……のか?いや、恨めしいわ。
「はぁ……なんでそんな強引なんですか?紳士的なオジサマかと思ったのに……。」
「おじ……まぁなんというか、勘だな。お前と居ると面白いことが起きる気がするんだよ。」
はぁ?まぁた奇っ怪な……。
「なんですかそれ……。」
トッププレイヤーはみんな思考回路がおかしいのかもしれない。
不平不満ありありな顔で引きずられていると、階段がおわり開けた場所に出る。
そこには先程はいって入ったのであろうプレイヤー諸君が勢揃いしていた。中央奥には、まるで校長がスピーチする時に登るような高台が設置されている。
「ここにいろよ、逃げないでくれ。」
そう言って、主催の方──恐らく高台にいるのであろう──へ歩いていくグレンおじ。
逃げようかとも思ったが、1度腹を決めてしまったので仕方ない。
周囲を見渡してみると、だいたい3人か4人、少ないところは2人で多いところは6人くらいが固まってグループを形成している。というよりグループで来ているのだろう。
1人でぽつりと立っている俺は少し場から浮いてしまっている。
『あーあー、マイクテストマイクテスト。』
ぼっちになって早々に、高台にの上の人がマイク(?)で話し始める。
このレイドの主催なのだろうか?司会役か?まぁ聞いていれば分かるだろう。
『よし、聞こえてそうだね!えー、どうもランカーの皆さん。本日はご集まりいただきありがとうございます。トップギルド及びトッププレイヤー主催、【バンカー大迷宮】の攻略レイドへようこそ……』
ふむ。ここのダンジョンの名前は【バンカー大迷宮】と言うらしい。ランカーとやらとかトッププレイヤーがこの規模で集まる大迷宮というのだから、相当広くてムズいんだろうか?
『じゃあ開会の言葉を……ってこんな堅苦しいの嫌だよね!ってことでさっさと攻略始めまーす!いくつかのパーティで固まって動いてもらうけど、急遽現地人の方が参加されているのでそのグループはくれぐれもよろしくお願いしますね。』
おっと、俺の事カナ?NPCは死んでも復活しないらしく、俺がいる班は気をつけて動けということらしい。本当はプレイヤーなのに、庇わなくちゃいけないって可哀想な奴らだな。
プークスクスと、他人事のように嘲笑っていると、壇上の主催者によってグループ分けが始まる。
『えーっと、攻略ルートが4つあるからそれに準拠して4グループに分けるね!グループに1人は主催者──1桁ランカーの誰かをつけるので、その人の指示に従って下さい。あくまでもレイドなので……ね!』
しんぐる?何それ。とりあえず強い何かなのだろう。リーダーを張るのだし。
『えー、第1陣の君たち……1番から10番のパーティは、第1位『煌光の剣』の【アレス】くんのとこ。11番から20番のパーティは第9位『我利我利亡者』の【カネ】くん。21から30は、ソロの【グレン】の所で──』
トッププレイヤーって言ってたけど、まさかそんなに上だったんか。ランキングがどんなのかよく分かってないけど、すごくないことは無いだろう。
『──そして残りと現地人の方が私、『あきねガチ恋勢のお前ら♡』総裁、第7位【あきねch】でーす!』
─────────……………………は?あきね主催マジ?
記念すべき30話です。
追記、迷宮の名前を少し変更しました。




