#26 嘘から出たマコトが、受け継いだ夢への情熱と仇への憎悪を燃やす薪となった。
いやぁ、ポケモン楽しいですね〜
プレイしてる内に色んなポケモンが増えてきたんですけど、僕のディグダはその中でも凄い優秀なんですよ!ええ、とても助かりました。
え、彼の名前は何かって?「ふいうち」君ですよ^^
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「昨日知った天井だ……」
ついさっき起床したばかりなので、睡眠を終え再び起床するということに既視感を感じながらもベットから出る。
昨日、権力で寝場所を確保すると勇んで寝場所へ連れて行ってくれた所長だが、果たしてそこは所長の自室らしき場所だった。
「私のベットで寝ろ」と言うので、所長は何処で寝るのかと尋ねたところ、『マリー・ユーリシア』───所長の幼馴染でありこの街の騎士団団長───の所で寝るということで。
それは権力ではなくコネというのだが、指摘せずにそっとしておいた。
「おはようございます所長。部屋貸してくれてありがとうございます。」
「お、起きたか。長時間睡眠だな!元気そうでなにより!」
所長の自室から出て、広めの書斎的な場所───昨日井戸から落ちたところに行くと、机の上で書類仕事?をしている所長が目に入り軽い会釈と挨拶をする。
ミモザちゃんは居ないようだ。
ハッハッハ、と豪快に笑いながら書類仕事の手を止めこちらに反応し、立ち上がって向かい合える椅子に座った所長。
反対側に座れと催促するような視線を感じたので、大人しく向かい合う。
「昨日は適当に流してしまったが、正式に契約をしよう。」
そういえばQSEに所属するための手続き的なものをしていなかったな、と思い出す。
「契約の内容を要約すると、我々の組織の目標達成に尽力してもらうかわりに、金銭や資材、権力的に支援するという内容のものだ。詳しくはこの資料を見てくれ。」
そう言って間の低い机に置かれた資料を手に取る。たくさんの紙にびっしりと書いてある契約内容のその量を認識し、うげっと思わずゲンナリする。
多すぎてとても読む気にはなれないな……まぁ、そんなに不利なことも無かろう。
ゲームの同意規約もみんな読まずにポチッだし。多分ね。
「契約期間は?」
「好きな時に終わってくれて構わない。未来ある若者をずっと縛っておくのは良くないからな。」
おぉ、思っていたより良心的な契約なのだろうか?変なタイミングで抜けられたら困るだろうに。俺は困らないからいいのだが。
「なるほど。では組織の目標というのは?活動方針とはなにかニュアンスの違いがあると思うんですけど。」
目標、というからには漠然な方針ではなく段取りのようなものになっているはずだ。
「ああ、そのことについてだが。活動方針において、第1と第2は十分に達成出来ている。というより内容の完全理解が容易だから然程気にしなくてもいいのだ。」
なるほど。第1方針は犯罪率を抑え、もし犯罪が起きた場合には早急かつ暗々のうちに取り押さえ騎士団に引き渡す。第2方針は密かに動き情報処理をする、という明確な達成条件がある。
だが────
「だが第3方針、外の神を殺すというものについてはまだ見当も付いていない。そもそも外に対する手掛かりすら完全では無い状況でな。」
つまり全容が見えない方針が第3方針であり、分からないものは徐々に、目標を立て少しづつ問題解決に向かう必要があるということだろう。
「完全では無いないというと、大体の情報はあるんですか?」
「ああ。そもそも前提として、この島…アーク第1島は守護檻と呼ばれる透明の壁に覆われている。その壁には鍵穴の役割を果たす機構が3つあり、この島にはそれに対応する鍵が3つ点在している、筈だ。」
「ほう。」
ほほうなるほど。そういう系ね、クエストクリアやらモンスター討伐やらなんやらで鍵が貰えるんだろ?ありがちなシステムだが嫌いじゃあない。
「それで鍵は何処に?取りに行けば良いんでしょう?」
まず外への道を開くのが第1目標かな?
「分からん!」
あっそうですか。まあ何となくそんな気はしてたけど。
なんというか、この人わりとポンコツっぽい。
完全では無いって言い方なら完全に近いくらいのニュアンスじゃないのかと思うじゃん。
まさかほぼゼロとは思わんのよ。
「じゃあ最初の目標は、鍵についての情報を得るとこからですか?」
「うむ、物分りが良くてよろしいな!」
そんなに嬉しくないお言葉を頂き、どうしようかと頭を悩ませる。全く手がかりのない情報を調べろとは、割と鬼畜な契約内容じゃないか……?
というかそもそも、外の神とやらが実害を及ぼさないのなら別にどうでもいいと思うのだが。そこまで固執する理由は何なのだろうか?
「わざわざ神を殺す必要あるんですか?別に悪影響がなければ放って置いてもいいと思うんですけど。」
別に俺が第3方針に乗り気じゃないって訳じゃない。外を探すのも攻略の一環だし、行き詰まっているらしい攻略の糸口になるだろう。何より楽しそうだ。
だがそれは置いといて純粋に気になるのだ。何がそれほど彼女を駆り立てているのかが。
何事にも動機は大切だし、その質によって向き合い方や姿勢も変わる。言うなれば、ガチ度が知りたいのだ。
そんなに本気じゃないなら自分の攻略を優先して、この島を色々見て回るついでくらいの感覚で鍵探しをする。
だが本気でやろうと思って、切望しているなら、俺はそれに応えてあげたい。
俺の言葉をきき、真剣な目でこちらを見る彼女。言葉が無くても伝わってくる真摯な気持ちが彼女の中に存在していた。
「私の憧れだから、かな。随分昔のことだからあまり覚えていないのだが、好きだった本があってね。『アンドリュー探検記』という名前だったかな?」
アンドリュー……ね。
聞いた事のある名前だな。
「今の姿からは想像できないだろうが昔の私はとてもとても臆病だったんだ。当時はよく読んで元気づけられたよ。だからこそ、未知に対しての夢と希望が私にはある。そのためならなんだってできるくらい、な。悪魔とだって契約してやるさ。」
……なるほどね。
「貴方の気持ちはよく分かりました。いいですよ、契約しましょう。」
「そうか!ありがとう、おかげで約束が果たせそうだ!」
……約束?
「じゃあここにサインしてくれ。そうしたら正式に契約が発動する。」
まぁいいか。
渡されたペンで契約書にサインする。書き終え、ペンを置いた途端に契約書から魔法陣が浮き上がり光って空中に消えた。契約が成立したことを示すトリガーだろうか?
〘派生シナリオ【欺瞞】から特殊シナリオ【未知を求めて】が発生しました〙
〘特殊シナリオ【未知を求めて】を開始します〙
発生条件はよく分からないが、新しいシナリオも発生したし、これで契約が成り立ったのだろう。椅子から立ち上がった所長が手を差し出してくるのを握り返し握手する。
「期待しているぞ!」
笑いながらそう言う所長。
「はい。」
称号【神への叛逆】も持っている冒涜者なのでぜひぜひご期待下さいな。
そう心の中で勇み、地上へ戻ろうとするがあることを思い出しその足を止める。
「あ、そうだ。早速であれですが、資源の支援をお願いします。」
そういえば俺、追われてたんだよな。
「おう!何が欲しいんだ?」
「ほかのプレイヤーに名前が表示されなくなる何かを下さい。」
果たしてこれで伝わったのだろうか?でもこう形容するしかないもんな……NPCにプレイヤーってどういうふうに伝わるんだ?
「いいぜ!ちょっと待ってろ……」
どうやら問題なく伝わったらしい。というか、そんなアイテム有るんだな。望み薄かなと思ってたけど。
心当たりがあったようで、部屋から出ていった所長を待つこと数分。
「あったぞ!」
何やらブレスレットらしきものを手に持ち戻ってきた所長。
〘アイテム【電波妨害腕輪】を獲得しました〙
それを受け取るとアイテム獲得通知が流れる。アクセサリー枠を1つ使い装備してみたが、効果は自分では実感できないな。
だが大丈夫なのだろう。
よし、これで心配事もなくなったし戻りますかね!
俺が落ちて来た穴の真下に戻り、壁に設置されたボタンを押す。
ポチッ
「所長、行ってきます。」
「おう、頼むぞ。」
そして言葉を交わし終えたその瞬間……俺は真上に跳ね上げられ、落ちてきた穴を逆行して昇り始めた。
◇
ユウが跳ね上げられたのを見送ると、緊張が抜け思わず脱力し床にへたり込む。
鋭い感覚の持ち主である彼女は、彼の中に巣食う何かに勘づいていた。彼女の恩人を喰い殺したものと同種のものであることも。
彼女の大切を奪ったそれの存在は、トラウマと恐怖、そして怒りを呼び起こすにはとても十分で。
私の中の敵意が気づかれていなかっただろうか、と少し不安になる。マリーの話からすると、彼は本当に自分のことを人間──プレイヤーとして認識しているらしい。実際そのような立ち振る舞いであった。
真実がどうであれ、私は決めたのだ。恩人の夢を叶え、約束を果たすためには悪魔とだって化け物とだって契約すると。
そしてもしも彼の正体が恩人を殺したあのバケモノなら、私がこの手で──
「………がんばれ、わたし」
弱気で震えた声で、1人残された彼女はそう呟いた。畏れる自分を励ますように──。
みんなの前では強気な美人さんが一人の時はよわよわになるってなんかいいよね!!個人の趣味です。




